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練習だけで身に付く強さは試されていない強さ(格闘技を始めるかもしれない息子に伝えたいこと30)

「お前の完璧は まだ 試されとらん 完璧や」
「勝負の 修羅場を くぐっとらん 生まれたての 完璧さや」

さだやす圭の大人気相撲漫画『ああ播磨灘』第292話「身ぶるいする」で主人公播磨灘勲が横綱太刀風との稽古で刹那相撲を完成させた天才大関紫電海勝巳との相撲中に言ったセリフだ。

練習で強くても試合で強いわけじゃない。

練習だけで身に付く強さは試されていない強さ

 勝敗の差

僕は、今まで高校時代の伝統派空手の組手に始まり、ボクシングのスパーリング大会、巌流島トライアウト1(以下、トライアウト1)、巌流島トライアウト2(以下トライアウト2)、沖縄拳法空手道防具付組手全国大会と格闘技の試合に出場してきた。
その中でも、トライアウト1・2に関しては「絶対に勝つ」という強い思いで、事前に試合に勝つための練習を念入りにしてのぞんだ。
結果、トライアウト1は、ファーストコンタクトで高山ドンフライ状態になった末、途中で戦法を押出しに変えた相手選手に対応できず、押出しで負けた。
トライアウト2では、ファーストコンタクトでパンチをもらったが、その後前に出てプレッシャーをかけ続け、押し出しで勝った。

相手選手が違うので純粋に比較できないが、トライアウト1とトライアウト2の勝敗の差は、トライアウト1の試合を通じて、強さを試したか試してないかだ。

 相手を倒そうと本気と本気でぶつかり合ったとき
未知の反応が起きる

トライアウト1に向けての練習とトライアウト2に向けての練習で、メニューは変えず、パンチと押し出し、タックル対策、寝技対策をメインにした。
ただ、トライアウト1でお互いに相手を倒そうと本気と本気でぶつかり合ったときをイメージしながら練習に取り組んだ。

試合は、お互いに相手を倒そうと本気と本気でぶつかり合う。
本気と本気でぶつかり合う経験は、練習ではできない。
だから、試合で本気と本気でぶつかり合ったとき、練習では起こらなかった未知の反応が自分に起きる。
未知の反応を制御できないと、頭が真っ白になり、冷静な判断ができなくなる。
当然、冷静な判断ができなくなると試合に負ける。

 未知の反応を制御し、発揮できる強さが
試合に勝つための強さ

お互いに相手を倒そうと本気と本気でぶつかり合ったときに起こる未知の反応を制御し、発揮できる強さが試合に勝つための強さ、つまり試された強さだ。

ファーストコンタクトの一撃で勝負が決まればいいが、試合の大半がそうはならない。本気と本気でぶつかり合った後、例えばパンチが交錯した後、どう動くか?で勝負は決まる。
試合に勝つには、他人と本気で殴り合う、日常と大きくかけ離れた非日常の重いプレッシャーの下、未知の反応を制御し、冷静な判断をする強さが必要になる。

練習はして当然だが、練習だけで身に付く強さは試されていない強さだ。
お互いに相手を倒そうと本気と本気でぶつかり合ったときに役立つかどうかは、試合で試してみないと判らない。

 ガチスパーはオススメしない

ガチスパーなら試合に勝つための試された強さに近い強さが身に付くかもしれない。
しかし、ガチスパーと試合は違う、きつめにやるとしても試合と同じように本気でKOするまでは、しないはずだ。もしも、違うならリスクリターンが見合っていない。
脳は消耗品だから、ガチスパーをやればやるほど打たれ弱くなる。しかも、手加減しない分、怪我のリスクも高い。
試合に勝つための強さに近い強さを身に付けるリターンには見合っていないリスクだ。

 安全に本気と本気でぶつかり合う状況を
どれだけ再現できるか

安全に本気と本気でぶつかり合う状況をどれだけ再現できるか?試行錯誤が、試された強さを身に付けるための練習に必要だ。

  冒頭の『ああ播磨灘』の続き

刹那相撲を完成させ完璧な強さを身に付けたかと思われた天才大関紫電海の「押しのなさ」に気付いた播磨灘勲。

「確かに 技は 完璧や」
「だが 相撲の 根本を 忘れとる」
「押しや 身体全体で 押し付ける 圧力や」
・・・
「押しの ない 相撲が」
「なんに 弱いか 知っとるか」
「それは」
「吊りじゃー」

押しのない相撲の「吊りに弱さ」を突いて強引な吊り落とし3回で天才大関紫電海を破った。

参考


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