ボクシングヘビー級世界チャンピオンシップ、ぽっちゃりルイスとジョシュアのリマッチについて(格闘技を始めるかもしれない息子に伝えたいこと39)
練習の疲労で体がカチコチ。こんな日は、体を動かす練習を休んで、コーヒー飲みながら格闘技動画巡りを楽しむ。
さらにnoteを書いてアウトプットすれば、いい練習になる。
2019年6月1日、ボクシングヘビー級世界チャンピオンシップでの歴史的アップセット(大番狂わせ)が起こった。ぽっちゃり体型の挑戦者アンディ・ルイスJr.が王者アンソニー・ジョシュアに勝利し、メキシカン初のプロボクシングヘビー級世界チャンピオンになった。おそらく、2019年内にダイレクトリマッチ(再戦)が行われる。
先ず、試合予想を書き、続いて理由を書いていく。〆に好きなルイスの注目すべきパンチを書く。
試合予想は4~6Rに左フックか右オンジイヤー(オーバーハンドライト)でジョシュアのKO負け
試合展開を予想してみる。
1~3R
ジョシュアの下手なアウトボクシングではルイスを止めれず接近戦へ、
ジョシュアがルイス対策にボディブローやアッパー、スマッシュを狙う、
序盤はスタミナが切れていないジョシュアの強打にルイスが苦しむ。
4~6R
試合が進むにつれジョシュアのスタミナが切れ、ハンドスピード、回転数に勝るルイスの左フックや右オンジイヤー(オーバーハンドライト)が当たるようになる。スタミナの切れたジョシュア4~6Rのどこかで一発いいパンチをもらうあはずだ。そして、防御技術に不安のあるジョシュアは、続くフィニッシュへ向けたルイスのラッシュに耐えられずKOされる。
ジョシュアが勝機を見出すとしたら、スタミナのある1~3ラウンドの接近戦でルイスにいかに強打を当てられるかだ。
試合序盤の接近戦がジョシュアにとっての一番のKOチャンスだ。もちろん、接近戦はルイスの方が上手いので大きなリスクを伴っている。
1戦目と変わらない試合展開予想だが、ジョシュアが年内にリマッチするとして短期間でアウトボクシングの技術レベルをルイスに通用するレベルまで上げられるとは考えにくい。KO勝ちを狙うため、接近戦で勝つ練習をしてくるはずだ。
ルイスも身長、リーチで大きく負けるジョシュアに対してアウトボクシングしても明確には勝てないので、1戦目と同じく接近戦でのKO勝ちを狙うだろう。
そうなると、試合序盤の接近戦がこの試合1番の山場だ。
※身長で10㎝、リーチで20㎝もリードしているジョシュアがアウトボクシングに徹しきれば確実に勝てるのでは?と思われるかもしれないが、できない理由を書く。
ジョシュアはアウトボクシングに徹しきれない
ジョシュアはルイスに対して身長で10㎝、リーチで20㎝もリードしている。身近なモノで例えるとA4用紙の長辺、古いモノで例えるとビデオテープの長辺くらいも差がある。
ジョシュアがジャブとストレート、ステップをメインにアウトボクシングに徹しきれれば、ルイスをポイントアウト(判定勝ち)できるはずだ。
しかし、3つの理由からジョシュアはアウトボクシングに徹しきれない。
1.ジョシュアにはKO勝ちが求められている
ボクシングヘビー級トップ戦線は、デオンテイ・ワイルダー、タイソン・フューリーそしてアンソニー・ジョシュアの3人を中心に盛り上がっていた。しかし、格下と考えられていたルイスにKO負けをしたジョシュアは、トップ戦線から大きく一歩後退した。リマッチでルイス相手に判定勝ちしても、王座は取り戻せても、世間の評価は戻らない。世間の評価を取り戻すにはKO勝ちが求められている。
2.ジョシュアはアウトボクシングが下手
ジョシュアはアウトボクシングが下手だ。自分よりリーチの劣る相手に対しても闘う間合いは近い。
アウトボクシングで重要な技術は、「突き放すロング左ジャブを打つ技術」、強引に突っ込まれたときにピボットで体を入れ替えて逃げたり、クリンチで逃げたり、プッシュで押し返すなど「接近戦に付き合わない技術」、いいパンチを入れた後、カウンターをもらわない距離を維持してフィニッシュするための「ロングレンジで強打もしくは連打できる技術」だ。
しかし、ジョシュアのパンチはほぼ全てが腕を伸ばしきらずに打つパンチで長いリーチを活かしきれておらず、威力はあるが顔の位置が相手と近い。これでは、「突き放すロング左ジャブを打つ技術」と「ロングレンジで強打もしくは連打できる技術」はできない。接近戦も中途半端なブロックからフックを狙うだけで、クリンチやピボット、プッシュなど「接近戦に付き合わない技術」は全く無い。
1戦目ではフィニッシュを狙い接近戦を仕掛けたところ、逆にダウンを奪われた。その後、アウトボクシングに徹しきれればポイントアウトできたが、
アウトボクシングが下手なためできなかった。
※いいパンチを入れても、カウンターをもらわないためフィニッシュを狙わない戦略もあるが、KOを求められる試合ではこの選択はできない。
3.ルイスの距離を詰める技術レベル>ジョシュアのアウトボクシングの技術レベル
そもそもボクシングIQはルイスの方が高い。
試合経験については、ルイスがプロ34戦33勝1敗、アマチュア110戦105勝5敗、ジョシュアがプロ23戦22勝1敗、アマチュア43戦40勝3敗とプロとアマを合わせると78戦もの差がある。
年数についても、2人は2019年6月18日時点で29歳と同い年だがボクシングを始めた年齢はルイス6歳、ジョシュア18歳と12年もの差がある。この2つの差がボクシングIQの差につながっている。
1戦目、ルイスは身長とリーチで大きく差のあるジョシュアを攻略するため、マイク・タイソンの動画を何度も見て距離を詰める特訓を積んだ。次戦でもルイスは特訓の成果と高いボクシングIQを活かし、得意の左ジャブ、ボディジャブ、固いガード、上体の振りを駆使して接近戦に持ち込むだろう。その距離を詰める技術レベルは1戦目の時よりも高いはずで、ジョシュアのアウトボクシングの技術レベルでは、防げないだろう。
ルイスジョシュア2で注目するべき場面
試合予想でルイスジョシュア2の1番の山場は序盤の接近戦だと書いた。では、山場の接近戦のどの場面に注目すればいいか?
基本的に接近戦はハンドスピードと回転数に優れるルイスに分がある。特に肩同士がぶつかるような超接近戦ではジョシュアの長いリーチはかえって邪魔になり、ルイスが大きく有利だ。特にルイスのオンジイヤーが怖い。
ジョシュアがチャンスを見出せるのは、超接近戦になる前の接近戦。つまり、お互いのフックやアッパーなどの強打が丁度当たる間合いの接近戦だ。
この間合いの接近戦が注目するべき場面だ。
試合中にこの間合いになるのは以下の3パターンになる。
1.ジョシュアから攻めて距離を作った接近戦
ルイスは気が強いので、攻められたら攻められっぱなしではなく反撃でパンチを振ってくるはずだ。その瞬間がジョシュアにもチャンスのある間合いの接近戦だ。
2.ルイスが距離を詰めて打ったパンチをガードした直後
ルイスが距離を詰めて打ったパンチをガードした直後がジョシュアも勝負できる間合いの接近戦だ。ジョシュアサイドはガードで固まり続けると、すぐに間合いを詰められてしまうので、ガードした直後にフックやアッパーを強振したい。
3.接近戦後の離れ際
ルイスは超接近戦が得意なので、「接近戦~超接近戦~クリンチ~ブレイク」の展開が多いため、機会は少ないだろうが接近戦後の離れ際もルイスにチャンスのある間合いの接近戦になる。しかし、際の攻防はボクシングIQの高いルイスの方が上手いのでリスクも高い。
ルイスサイドは、いかにジョシュアにもチャンスのある中途半端な接近戦の間合いにいる時間を短くして、自分にのみKOチャンスのある超接近戦に持ち込むかが勝負どころだろう。
ルイスの攻めが上手くいってるかどうかは、ジョシュアの上体ののけ反り具合で判る。上体がのけ反るのは、足が上半身の動きについていけないときや、ルイスの攻めの圧力に押し負けて重心が上がってしまっている証拠だ。
観戦時には注目したい。
アンディ・ルイスJr.の注目すべきパンチ
右オンジイヤー(超近距離オーバーハンドライト)
僕が思うルイスのもっとも得意で強いパンチ、超近距離でのオーバーライトハンドで視覚の外、真横からパンチが飛んでくる。耳周辺を打つので三半規管に大きなダメージを与えるため、威力が高い。
しかし、ルイスのトレーニング動画では、特段練習はしていないようだ。
オーバーライトハンド補足説明
オーバーライトハンドは、水泳のバタフライのように大きく右手を外側から回して打つパンチで、人差し指の付け根辺りを当てる。相手に見えにくい斜め上から、真っ直ぐに打つパンチと違うタイミングで当たるため防がれにくい。その代わり、パンチ前に顔面がガラ空きになるのと、振りが大きいためカウンターを狙われやすい。ミドルレンジで右ストレートの代わりに使われることが多い。
PRIDEのイゴール・ボブチャンチン、元UFC現ベラトールのロイ・ネルソン、メキシカン初のプロボクシングヘビー級世界チャンピオンのアンディ・ルイスJr.などが巧い。何故か、ぽっちゃり体型の選手に名手が多い。
左ボディジャブ
ルイスは左ボディジャブが得意だ、普通のジャブと混ぜて上下に打ち分けて相手の意識を散らし、間合いを詰める起点にする。特に「左ジャブ~左ボディジャブ」のコンビネーションは美しいので、注目して見てほしい。
右ボディブロー
通常、右ボディブローは肝臓を叩く左ボディブローに比べて肉体的ダメージを与える効果が低いため、あまり使われない。しかし、パンチ力が高ければ、KOにいたらないまでも効く。すると、相手のガードが左横腹に下がるので、右フックと右アッパーが当りやすくなる。
「右ボディブロー~右アッパーor右フック」はマイク・タイソンがよく使っていたコンビネーションだ。
ルイスも一戦目で右ボディブローを打っていた。オーバーハンドライト、右オンジイヤーの布石になっているはずなので注目して見てほしい。
もう1つの可能性
ルイスサイドが確実な勝利のため、1~6Rは高いディフェンス技術とフットワーク、スタミナを活かし、逆にアウトボクシングをして追いかけさせてジョシュアのスタミナを削る。そして、7~12Rにスタミナが切れたジョシュアを、接近戦で確実に仕留めるゲームプランを選択する可能性も少し考えられる。