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働かないおじさんと働かないアリは違うと言う話し
本棚を整理していたら、約10年前に読んだ「働かないアリにも意義がある』という本を見つけました。
なんとなく、自分の働きが悪くても、慰められる様な気がして読みました。
しかし、働かないおじさんが意義があると言い換えても良いものでしょうか?
本を紹介しながら、その点深掘りします。
働かないアリに意義がある』について
この本は、長谷川英祐さんという1961年生まれの、北海道大学准教授で進化生物学者の先生が2010年に執筆されたものです。
進化生物学というのは聞き慣れませんが、簡単に言えば、社会性昆虫などを研究する学問。
社会性昆虫というのは、集団を作り、その中に女王や働き蟻(蜂)のような階層があるような生活をしているなど、人間のそれに似た社会的構造を備える昆虫を指します。
イソップ童話の『アリとキリギリス』のイメージがありますので、どうしてもアリといえばいつも忙しく動きまわって回っているという印象ですが、そうでは無いというところから話は始まります。
働かないアリはどうして必要か?
長谷川英祐さんによると、コロニー(集団)の中には必ず、働かないアリが2割程度存在するとのこと。
もし、その2割が居なくなったとしても、残り8割の中の2割は働かないアリになる。
更に、上位2割のよく働くアリが居なくなっても、こんどは残り8割の中の2割は働くアリになる。
つまり、よく働くアリ2割、普通に働くアリ6割、働かないアリ2割の比率が保たれるということである。
アリも働き続ければ疲れます。
例えば、大きな獲物を巣に運ぶという仕事が発生した時、全員が一斉に動き出すと、疲れると一斉に動けなくなります。
そうすると、卵を清潔に保つ仕事など、常にしておかないと巣が存続できない様な仕事が滞る。
働かないアリが一定割合いると、彼らのヘルプに入るので、巣の存続に有利なのだ。
アリの世界の仕事の統制
アリの世界には、管理職は居ません。
どの様に仕事が振り分けられるのか。
それが、反応域値の違いということです。
反応域値といえば難しそうに思えますが、簡単にいうと腰の軽さです。
大きな獲物を巣に運ぶという仕事が発生した時、まず反応域値の低い(腰の軽い)アリが仕事にかけつけます。
域値の高い(腰の重い)アリは、仕事にありつけず、暇にしてます。
人間の世界だったら、腰が軽い人間が重宝されて、腰の重い人間は、下手をしたらダメな人とレッテルを貼られかねません。
よく働くアリだけの場合は、集団が滅びるペースが早い一方、働かないアリがいる集団は、長続きする傾向があることも分かった。
この理論がマスコミに出た当初、私も含め働きがイマイチの、腰が重い連中は救われた気分になったものです。
働かないおじさんと働かないアリは同じか?
働かないアリに存在価値があることは、十分に証明されたとして、それで世の働かないおじさんは胸を撫で下ろして良いのでしょうか?
結論から言うとNoだと私は思います。
働かないアリは、決して自己肯定しないということです。
必死に仕事にありつこうとしても、反応が遅くて仕事にあぶれていると言う事です。
だから、働いてなくても常に仕事を探している。
よって、腰の軽いアリが疲れてきたら、仕事をとって替われると言う事です。
働かないおじさんも、ふだん働いていなくても、会社がピンチの時に救う働きができるように心構えと準備が出来ているなら、組織において置く意味がある。
しかし単に仕事にあぶれているだけで、働かないアリの理論を聞いて、ホッと胸を撫で下ろしている様なおじさんはダメでしょう。
働かないアリも楽では無いはずです。
まとめ:人間世界が参考にできることは何か?
おじさんになったら働かなくてOKと言うことではないと話しました。
ではアリ社会のエピソードから人間界が参考にできるのはどんなことでしょう?
おじさんになったら働かなくてOKと言うことではないと話しました。
ではアリ社会のエピソードから人間界が参考にできるのはどんなことでしょう?
長続きする組織をつくる様に努力するということです。
これに関して最後に長谷川英祐さんの示唆に富むインタビューがありますので紹介します。
失敗した人への減点主義や極めて能力の高い一部の人を評価するシステムではなく、平均的な能力を持つ人を少しでも働きやすく仕向けることが、組織全体のために重要なのだ。
「例えば、社長賞はトップの人しかもらえない。そこそこの人は『どうせ俺はいつまでたってもダメだ』と諦めてしまう。いかにちゃんと働いた人を、ちゃんと評価するか。そんなまともなことができる中間管理職がいるかどうかが、組織の命運を握っていると言ってもいいのではないでしょうか」
効率だけを求める生物は滅びる アリに学ぶ、組織のマネジメント より