こんなにも付箋だらけになった本は、久しぶりだ
“知っている”と“知らない”とでは大違い。そう思った。
前作【一流の頭脳】で著者を信頼したわたしは、次の著作を待ち望んでいた。そして、新作を読み終えた。
著者のアンデシュ・ハンセンは、スウェーデンの現役精神科医。スウェーデンで今最も注目されているインフルエンサーの1人でもある。
【スマホ脳】は世界的ベストセラーとなり、スウェーデンの教育業界に今まで例を見ないほどの影響力を与えている。この本を読めば、それらの事実に納得がいく。
なぜなら、誰もが1度は抱いたことのある問いに対する答えを、この本が提示しているからだ。それも、科学的エビデンスに基づいて分かりやすく。
あなたは、そう疑問に思ったことはないだろうか?
それともあなたは、なんの危機感も抱かずにスマホを使っているだろうか?
アンデシュ・ハンセンはこの問いに対し、多岐にわたる研究・実験結果、論文のデータをベースとして、人間(特に脳)の進化の見地から数々の事例を示す。その説明は説得力があり、信頼できるものだ。
あなたも1度は聞いたことがあるだろう。
スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツは、自分の子供が14歳になるまでスマホを持たせなかった、という有名な話を。
それはなぜだろう?
絶対的な影響力を持つIT企業のトップたちが、GAFAの立役者の彼らが、なぜ自分の子供たちのスマホの使用には慎重だったのか?
その詳しい答えが、本書にある。
また、こうも書いてあった。
フェイスブックの“いいね”機能の開発者は、その“いいね”機能が人間に与える悪影響を吐露した、と。自社製品への後悔の念をあらわにしている、とも。
つまり、アンデシュ・ハンセンの言葉を借りれば、“シリコンバレーは罪悪感でいっぱい”なのだ。
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ここ数年、わたしは集中力が鈍ってきたと感じている。本を1冊読み終えるのに時間がかかるようになった。読んでいる途中で気が散り、集中力が持たないときがある。
その集中力の鈍化を、わたしは加齢によるものだと思っていた。年齢のせいだけで、集中力が衰えたのだと思っていた。それは、わたしと同世代の人も同じようなことを感じていたからだ。
ところが、そうではないことが本書によって明らかになる。
その原因は、スマホだ。
アンデシュ・ハンセンによれば、ここ数年、人々の気が散漫になり集中力が鈍くなったのは、年齢とは関係ない。子供も若者も大人も、スマホを持たなかった時代と比べて集中力が落ちている。そのことを彼は、数々の科学的エビデンスに照らし合わせて説明する。
スマホが人間に及ぼす悪影響は、それだけではない。もしかすると、あなたも薄々感じているかもしれない。
不眠・うつ病・幸福度の低下・自己肯定感の低下・知能の低下などだ。これらのどれか1つでも、思い当たることはないだろうか?
具体的にどんなメカニズムでスマホが人間に悪影響を及ぼすのかは、本書を読んでもらいたい。
わたしが特に衝撃を受けたのは、“スマホは脳をハッキングするメカニズムになっていて、スマホ依存性は麻薬依存症に匹敵するものである”という記載だ。
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読書の際に、印象に残った文や覚えておきたい箇所に付箋を貼るのだが、この本は付箋だらけになってしまった。こんなにも付箋だらけになった本は、久しぶりだ。
本書は、それほど有益な情報が多かった。ここで印象的なフレーズを紹介したい。
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しかし、アンデシュ・ハンセンはスマホを全否定しているわけではない。
スマホが人間に及ぼす悪影響を説明したうえで、それならば今後どうすべきか、という問いを読者に投げかけている。
考えるべきは、わたしたち読者なのだ。
彼は科学的エビデンスを示し、人が自身に問いかけることの重要性を説く。スマホの危険性を理解する必要性を説く。そして、スマホやデジタルライフからの影響を最小限にしたい人に向けて、アドバイスを提供している。
それらのアドバイスは、どれもちょっとしたこと。明日から永遠にスマホ断ちをしようというような、大袈裟なものではない。日々使うものだから、スマホの危険性を理解したうえで、スマホとの距離感をうまく取ろう、というもの。
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この本に影響を受けたわたしは、自分なりにスマホ(特にSNS)と距離感を取ることに決めた。
SNSは、note・ツイッター・フェイスブック・インスタなどにアカウントを持っているが、ここ2年ほどメインで使っているのはnoteとツイッター。特にnoteが楽しすぎて、noteでの滞在時間が増えた。
しかし、その分読書量は減り、積読ばかりが増えてしまい、それが気がかりだった。noteで文章を書くためにも、読書によるインプットは欠かせない。だから、SNS滞在時間を減らそうと思う。
具体的には、休SNS日を週1回設け、その日はSNS断ちをする。週イチ休肝日のように。その空いた時間を読書に充てたい。
久しぶりに、こんなにも付箋だらけになった本に出会えた。きっと、このタイミングでわたしが読むべき本だったに違いない。
この本との出会いに感謝し、行動に移してみる。それこそが、実になり身になる読書だと思うから。