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悪魔(ショートショート)

 家を出て、角を曲がったところで、野犬に噛まれそうになった。慌てて俺は、犬を蹴り上げると、野犬はキャインキャインといって逃げ出した。それを見ていたマッチョな男がいきなり俺に襲い掛かり、首を絞め始めた。俺は咄嗟に奴の急所を蹴った。奴はその場で蹲り、俺は急いで、その場を離れた。
 いったいどうなっているんだ。だいたい野犬なんて最近見かけないのに、急に出てきやがって。マッチョな男も見た事のない面だったし、警察へいったほうがいいかもしれない。そう思い俺は派出所に向かった。
 派出所では警官が奥の方で3人集まって何かしていた。俺がドアを開けて中に入ると、3人はすぐさま俺に気付き、拳銃の銃口を向けた。奥の方で何かしていたのは拳銃に弾を込めていたのだ。何で今度は警官が俺を襲うのだ。
 俺はダッシュで逃げた。銃弾がその後発射される音が聞こえた。どうやら本気らしい。
 パラパラパラといきなり上空に音がして見上げるとヘリコプターがこっちにむかってくる。その中の1人がライフルをこっちに向けて照準しているのが見えた。俺は、かまわずすぐそばの家の中に飛び込んだ。幸い鍵は掛かっていなかった。
 その家の住民は年老いた婆さんだった。俺は少しほっとした。が、次の瞬間、婆さんは、俺を見つけるなり、驚いて台所へ向かい、包丁を右手に持って襲い掛かってきた。相手は婆さんである。俺は難なく包丁を奪い取ると、それを遠くへ放り投げた。
 そこへさっきの警官3人が家に突入してきた。俺は慌てて窓から逃げた。警官の発射した銃弾は婆さんに命中し、どうやら即死のようであった。
 とうとう被害者が出てしまった。それにしてもなぜに俺が皆から命を狙われなければならないのだろうか。とにかくそんなことを考える余裕はなかった。俺は一旦家に戻り、車に乗って逃げようと考えた。
 だがそれは甘い考えだった。既に俺の家は武器を持った住民や警官で埋め尽くされていた。中にはマシンガンなんか持っている奴、バズーガ砲を構えている奴までいた。そんな武器をいったいどこで調達してきたのだろうか。
 俺は奴らに感づかれる前に逃げ出した。しかし誰かが「いたぞ」と声を上げたので、見つかってしまったようだ。バズーガ砲が飛んできた。手榴弾も俺の足元に転がってきた。
 とうとう最後の手段である。俺は鷹に変身した。そして上空高く舞い上がった。その瞬間、ヘリコプターからのライフルが俺の翼に命中して、俺はそのまま落下した。落下したところは、俺を狙っている多くの連中の輪の中だった。
 俺は再び変身して鼠になって、うまくにげようとしたが、ライフルの傷が酷くてうまく動けない。連中は獲物を捕まえた喜びで大喝采だった。
「悪魔を捕まえたぞ」
 そう誰かがいった瞬間、俺の意識は消えた。

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