妹婿

　妹婿は学校の先生を定年1年前に退職した。高校の時の同級生である。
　今はたまにアルバイトで教壇に立つことがあるらしいが、基本的には暇を持てあましている。大学生になる娘の通学の送り迎えに1日を捧げているようだ。余程娘が可愛いと見える。猫可愛がりである。
　長男は東京にいて、彼女と同棲している。8月に挙式の予定である。
　妹はスーパーで働き、給料はあまりよくはないのだろうけれども、真面目に勤めている。現役時代は国語の先生であった。教師同士で結婚したのだ。
　だからかどうかは知らないが、頭が堅い。四角四面の世界で生きている。NISAを勧めても、怪しげなことを兄がしているという風にしか見ず、ベーシックインカムを導入すべきだと僕が行ったら「お兄ちゃんが共産主義になった」と言い出す次第である。
　妹婿は同じクラスの友人だったが、交流は少なかった。あまり友達をつくるようなタイプではなかった。
　何の因果か親戚になってしまい、今日に到る。彼も頭でっかちのところがあり、似たもの夫婦である。そのわりにその息子は人当たりが良く、とてもこの2人の子供とは思えない。
　だが実家のある広島に住んでいるので、お袋の世話はよくしてくれている。ありがたいかぎりである。先方の両親は父親は亡くなり、母親は認知症で施設に預かってもらっている。大変なようだ。
　まあそんな訳で、僕は頻繁に実家に帰らなくてもいいので助かっている。