出産
鈴木誠也選手が日本に帰ってきた。メジャーリーガーには父親リストという名の産休があるらしい。出産を控え日本に帰ってきているとのことだ。母親は元フェアリージャパンの畠山愛理。子供が生まれたらまたアメリカに戻るのだが、日本にはない素晴らしい制度だな、と思う。
もっともアメリカの国土の事情と外国人の多さを考えたら、日本と比較はできない。日本人ならすぐに日本のどこへでも帰れるだろうから。日本に来ている外国人選手も出産のときは多分帰っている。滅多にないことではあるが。
日本人ならどこへでも帰れると書いたが、出産には立ち合いたいところだろう。試合があれば、なかなかそんな訳にもいかない。日本には父親リストなんてない。子供が生まれそうなんで休みたいんですけど、というのを、ちょっと待ってくれ、といいたいところを送り出してやれるかどうか監督の度量次第なのである。
組合があるのだから制度化してやればいいと思うんだけど、既に議題に上がっているのかなあ。詳しいことは知らない。
それから比べると単身赴任でないかぎり、サラリーマンはいい。
やはり子供が生まれる瞬間というものは、忘れられない強烈な思い出である。子供との最初のコンタクトなのである。
私事ながら、夜中に破水したといって、妻に起こされ、入院したら、髪が洗えなくなるとかいって、僕に髪を洗わせて、それから僕の運転する車で病院に向かった。今だから言うけれど酒を飲んでいた。無事病院について、控室で待っていたら、隣の部屋で、病院の先生と患者さんが話すのが聞こえてくる。「堕したいんですけど」「後悔しませんか」なんて会話だった。こっちは今にも生まれそうな時に深刻そうな会話が聞こえてくる。勘弁してよ。
いよいよ分娩室に案内される。家を出てからかなり時間が経っている。僕はドアの向こうで待っている。声だけが聞こえてくる。やがて赤ん坊の「うそようそようそよ」という産声が聞こえてきた。なんじゃそれは、といわれても、そう聞こえたのだからしかたない。看護師さんが部屋から出てきて、僕に何やら渡す。何だろうと思ってみたら、さっきまではいていたパンティだった。それからやっと我が子との対面である。3500gの大きな赤ん坊だった。
哺育室に入れられたウチの赤ん坊は他の赤ん坊と一回り大きく赤ん坊の親分みたいだった。
20数年前の思い出である。今ではすっかり身長も体重も父親を追い抜いて髭も生え、図体ばかりは立派な大人に成長している。
鈴木誠也畠山愛理ご夫妻も元気な赤ちゃんが生まれてくることをお祈りいたします。