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真実の眼2(快傑サッソー)
東洋人のいかにも怪しげな連中に囲まれながら、李麗春が2人に話し出した。
「真実の眼は、あれは、この人たちのものなの」
「まてよ唐突に。しかもこんな場所に似つかわしくないスタイルの方々に囲まれて、何を言い出すんだ」
ホウがいった。
「俺たちの仕事は終わったのだ。まさか、それをまた盗み出せというのか」
ホウが椅子から立ち上がり、連中に向かって拳を鳴らし始めた。
「タイミングが遅かったわ」
「本当にね」
サッソーがいった。
「ここにいる人たちは南アジアにある孤島、ザブ島の人たち。あの真実の眼はザブ島の神の像の片目なの」
「ざぶとん?」
サッソーがとぼけた。
「人口数百人程度の狭い島よ。独特の宗教を信じているの。その神の像の片目がいつの間にかなくなっていたの。それで私の方へ伝手を通して依頼がきたの。どこへ消えたのかを調べてほしいということと、取り返してほしいということ」
「報酬は」
サッソーが聞いた。
「金よ。金が出るの。もし取り返してくれれば、あなた方にも報酬を与えるわ」
「100万ドルかな」
ホウがいった。
「OKよ」
李麗春があっさり答えた。ひょっとするとそれ以上の報酬を彼女は約束されているのかもしれなかった。それを聞いてホウは連中のリーダーと思われる1人と握手した。
翌朝、彼らの部屋で。
CIAから真実の眼を盗み出すのは容易ではないだろう。彼らはそれがどこにあるのか秘匿することに長けている。
「それにしても片目だけ、誰が持ち出したのかね」
「全くわからん。そんな辺鄙な島に、そんなお宝が隠れているなんてことも、どうやってCIAやアラブのセレブが知っていたのかも不思議だ」
どうにもわからないことばかりであった。そして昨夜、李麗春が最後に言った言葉が気になった。
「早く見つけて元に戻さないと祟りがあるっていってるわ」
ホウは結構意外に迷信深い。どんな呪いがあるというのだろう。
「とりあえず、CIAに入っている仲間には連絡を取ってあるからじきに返事がくるはずだとはおもうが」
サッソーがいった。
「アラブのほうにも仲間に調査するよう頼んではいる。わかるかどうかはどうだろうねえ」
サッソーは手早く手を打っていた。彼らの仲間はフリー同士、結束が固い。必要な情報は危険を冒してでも探ってくれるだろう。CIAやMI6,モサド、各国スパイ組織にも2重スパイとして幾人も潜んでいた。
そこへ早速CIAに送り込んだ男が、彼らの部屋に訪れた。スーツを着た普通のサラリーマン風の男である。年の頃なら40前後。
「全く行方がわからんよ。どうもCIAの手から離れて秘密の研究所みたいなところへ移動してしまっているらしい。それがどこかは調査中だが、知ってる奴はごく僅かだろうな」
「何の研究に使われるのさ」
ホウが聞いた。
「俺は全くわからんよ。ただ首や指にはめる目当てでないことは確かだろうな」
「なるほど、そりゃあそうだ」
とホウはいって、ケケケと笑った。
情報をもたらした男はそこまでいうと足早に部屋を出ていった。なるべく同じところに長居は無用であろう。
今度は李麗春が部屋にやってきた。昨夜とは違った出で立ちで、サファリルックだった。
「よくここがわかったな」
サッソーが笑いながらいった。
「私を誰だと思っているの」
ホウが今度はクスクスッと笑った。
「どうやら真実の眼の行方がわかったわ」
「えっ、えらく早いね。ガセネタじゃあないだろうね」
サッソーがいった。
「私は私でルートを持っているのよ。あなた方より少しは優秀なだけでね」
「それが間違いなければな」
ホウが反論した。
「エリア79。そこで何らかの軍事用の研究がなされているの。それにどうやら真実の眼が使われているようだわ」
「ねえ、初歩的な質問なんだけど」
ホウがいった。
「真実の眼って、どんな宝石なんだい。見たけど、これまで見てきたどの宝石とも違うみたいなんだよな」
「私も詳しくはわからないけれども、だから今アメリカが調べているところなんでしょうけど。多分、地球外鉱物だろうという予想よ」
「隕石ってことかな」
サッソーが聞いた。
「ん-、多分そうね。それがどんな物質なのかはわからないわ」
「えっ、俺たち被曝してないよね?」
ホウが聞いた。
「そんなのわからないわ」
「とりあえず、アメリカさんが調べてくれているんだろう。それを待ってから奪いにいってもいいんじゃないかな」
「そんなの駄目よ。約束違反になるわ。早く元の場所に戻さないと何が起こるかわからないわよ」
「どうせ迷信だろ」
サッソーがいったが、ホウは麗春の意見に賛成だ。
「これって相当やばいかもしんないよ」
「わかった、エリア79って場所は限定されているんだろう」
「もちろんよ」
「じゃあ早速下調べに行こうじゃありませんか、なあ先生」
先生といわれてホウは、ただ1回頷いた。
「私もいくわ。3人でいきましょう」 <つづく>