猫特別捜査隊(ショートショート)
(前回動物園の続き)
猫特別捜査隊は、特別の任務がない場合は警察のPR活動に勤しむことになった。
2本足で立って歌を歌う猫、にゃーにゃーしかいわないが、それが、ちゃんと音階にはまっているところが、さすが元人間である。10人組のグループ特別猫歌唱隊略してSCSC(special cats singing corps)としてデビューした。商品グッズも売れに売れ、サイン代わりの肉球スタンプはみんなの宝物になった。警察の催しだけでなく、TV活動もするようになり、芸能プロダクションと契約をした。
世界にも噂が広がり、SCSCのYOUTUBEは世界での視聴数1位になった。彼らはスターになったのである。
だがスターになったとはいえ、普通の猫と比べれば贅沢な食事にありつけるだけであり、メスの猫をあてがわれるわけでもなく、もしそうなったとしても、興味は湧くとは思えない。
カネは入るが、そのほとんどは家族の元に支払われた。それだけでも幾らか気は楽ではあった。やはり心配なのは残した家族の事である。もう人間に戻れないのなら、せめてこういう形でもカネを送るのが家族への想いというものだろう。
「某ソフトバンクの犬は家に家族と一緒に住んでいるぞ」
「そうだな、我々も家に帰ってもいいんじゃないか」
以上猫語。
こっくりさん方式で上司にそれを訴えたが、うやむやにされた。もはやこれだけの有名人、いや有名な猫になってしまえば、家に帰るのは危険といえた。説得され、10匹は諦めた。
そんな折、彼らに任務がおとずれた。
「誘拐犯人が凶器を持って、女子高校生を拉致監禁しているとの情報、猫特別捜査隊は、家の中の狭い入口からでも何とかして入り、犯人から凶器を奪え。それと同時に機動隊が突進する」
「にゃー」
10名の隊員は家の中にスルスルっと入って、犯人に攻撃を仕掛けようとした。狙いは凶器だ。凶器ってしか聞いてないけど、銃じゃねーか。猫はもはや騎虎之勢、いや騎猫之勢で犯人の銃を持っている右手に集中した。
ズドンズドンズドン、ズドンズドンズドン、カチャカチャ。リボルバーの弾を全弾撃ち尽くした瞬間、機動隊が犯人を取り押さえた。
猫のうち被弾したものはいなかった。
猫たちはますます英雄となり、全国を駆け巡るスターになった。
そんなある夜、猫の神様が彼らの元へ現れた。
「お前たちを人間に戻してあげよう」
神様はそういった。
「にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー」
みんなは大喜び。
翌朝、10名が目を覚ますと、何ということだろうか、裸の男が10名、寝転んでいるではないか。人間に戻ったのである。ただし体だけ。顔と尻尾は猫のままだった。これでは化け物じゃないか。10名は複雑な心境で泣いている者もいたが、とりあえず言葉が喋れるようになった。
半年後、彼らはCATSのミュージカルの舞台にいた。