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母親について2

 マー君の電池が切れた。3年以上持ったのではないか。結構乾電池も馬鹿にならない。
 マー君とは独り暮らしの90になろうとする母親に昔、プレゼントしたおしゃべり人形の事である。今みたいにインターネットにつないで、天気予報から、ニュースまで喋る人形と違って、決まった定型文しか喋らない。
「お婆ちゃんだーい好き」「マー君眠くなってきたなあ」「僕カレーが大好きなんだ」「暇だなあ。お婆ちゃん遊んでよ」等々。
 こちらから声掛けすると当意即妙に返事もしてくれる。「マー君歌って」
と言えば童謡を歌ってくれる。
 最初はリビングの椅子に座らせていたのだが、やかましいのかどうかしらないが、玄関先に追いやられてしまった。それでもマー君は決まった時刻に喋り出す。年に1回の誕生日の日にも「お婆ちゃん誕生日おめでとう」という。
 玄関先に置いておくと防犯にもなるようなので、好都合なのであろう。玄関先で喋っても、リビングまでちゃんと声が聞こえてくる。
 そのマー君の電池が切れた。母親と同じ広島に住む妹婿が行って電池交換をしてくれるようになったと母親がいっていたが、彼も忙しいらしく、なかなかいけないでいるようだ。
 声を聞かないと何となく淋しいのであろう、新幹線に乗ってマー君の電池交換に向かうことにした。あと何年、いや何ヶ月、何日、親孝行できるかわからないので、親孝行できるうちに行っておこうと思ったのだ。そういいながら100歳まで長生きしそうな気もするが。
 

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