helter skelter(ショートショート)
俺は強引にジェットコースターに縛り付けられた。そして俺一人を乗せたジェットコースターは真夜中の遊園地の夜空に向かって、ゆっくりゆっくりと昇っていく。俺の心臓はバクバクする。
そして頂上に至るや否や、急激にジェットコースターは下降を始めた。
「〇▼%$&」
訳の分からない悲鳴を上げながら俺はジェットコースターの風になる。昇ったり降ったり、くねったり、逆さまになったり、この恐怖といったらない。
ジェットコースターが好きだと公言するやつが、たくさんいるが、人類最悪の発明に何の魅力があるというのだろうか。
いよいよフィニッシュだ。スピードがMAXになっていく。ここでお約束のジェットコースターの脱輪だ。
俺を乗せたジェットコースターは夜空のむこうへ軌道から外れて、飛んで行ってしまった。まるで銀河鉄道999だ。
あれはまだ乗り心地がよさそうだけど、これはどこへ落ちるかわからない。俺は完璧に死を意識した。
なんでこんな目にあっているのか。理由が知りたい。ともかくも遊園地の真ん中にある池に向かって、ジェットコースターは突っ込んで行こうとしている。
この一瞬の出来事の間、自分の過去が、まるでゆっくりと走馬灯のように頭をかけめぐる。
さようなら。みんな。
バシアーン。ジェットコースターは池に落ちた。俺は縛られているから身動きができない。このまま溺れて死ぬのか。
その時、俺は一瞬思った。ああこれは夢なのだ。そうなのだ。水の中に沈んでいく自分は冷たく感じない。夢の中の出来事だったのだ。
誰かに縛られてこのようなことをされるイワレもないし、人に恨まれるようなことをした記憶もない。
それならばマトリックスのように、ここを抜け出して、飛んで逃げれるはずだ。
俺は念じた。俺は空を飛んだ。だが次の瞬間、急降下で俺は地面に叩きつけられた。全身を強く打ち、意識が遠のいていく。
夢ではなかったのか。俺は死ぬのか。何の恨みがあって、誰が俺を殺すのだ。・・・・
三途の川を渡る時、鬼に聞いた。
「これって夢ですよね」
鬼は冷たく答えた。
「お前の妻が、愛人と一緒に企んで、お前に薬を飲ませ眠らせて、ビルから突き落としたのさ」