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接客業

 33年間、接客業をやってきて、よかったこともあれば、悪かったこともある。悪かったことの方が多いように思う。詐欺や万引きや強盗や、シャブ中、アル中の客なんかを相手にしたこともある。シャブ中の女なんて、店に入ってくるなり、人に追われているので助けてほしいと懇願され、こっちも焦って、警察を呼んだのだが、警官は冷静な口調で「ああシャブ中ですね」の一言で、パトカーに乗せられ去って行った。
 救急車を何度も呼んだこともある。従業員が仕事中に急死したこともある。だいぶ前に記事で書いているはずだったが、探しても見つからないので、書いてないのかもしれない。
 15年くらい前の話だ。僕が休みの日である。丁度今頃の季節だ。冷たい雨が降っていた。店から急に社内用の携帯に電話が掛かってきた。
「Uさんがトイレで倒れて、心肺停止状態なんですけど」Uさんとは僕より1つ年上のフルタイム勤務の女性である。
 心肺停止状態とは要するに死んでいると変わらないではないか。はじめ耳を疑った。半信半疑のまま急いで病院へむかいながら、本部の上司にも連絡をした。病院では既に死亡が確定され、僕は店に向かった。多くの警察がうろついていた。こんなことってあるのだろうか。どうやら喘息の薬が効かずに、1日2回か3回までなのを過分に摂取したものらしい。
 通夜には多くの社員が来てくれた。葬式にも多くの参列者があった。葬式が終ると、近くの戸ノ上神社にお参りに行った。丁度その時クレームも2件抱えていて、精神的にもまいっていた。最終的には神頼みである。
 そんな訳で、僕は2度と接客業はやりたくないな、と思っている。というよりはもう働きたくない。いい歳だし、うつだし、もういいだろう。
 


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