動物園(ショートショート)
キリンが首つり自殺をした。動物園のなかでは大騒ぎとなったが、外にはこの件は漏らさないように箝口令がしかれた。
次の日、カバが溺死した。これも動物園の中では大騒ぎとなり、絶対何か異変の前触れだという者さえ現れた。
また次の日、白鳥が飛び降り自殺をした。これ以上は黙っていられないと動物園の関係者が警察に届け出た。
動物園の園長と園の社長が警察に呼ばれた。
「動物のすることですから、訳の分からないことも起こりえます」
「3日も続けてですか」
「たまたまでしょう」
「それにしても、この3匹は、売買証明書がありませんね。どこで買ったのです」
「それは・・・」
「不法なルートで購入したものなら問題ですね」
そこまで追及されて、動物園関係者も観念したのか、買い取った先を教えた。
それは日本の田舎の片隅。人っ子一人いないような場所で、森のようになっていた。そしてフェンスのでかいので囲いがなされ、一種の監獄のようなものを思わせた。
捜査令状を持って行きパトカー5台、警察官10名で訪ねると、返事がない。「留守だろうか」1人がいった。その時。レーザービームが彼らに向かって発射され、みるみるうちに警察官は全員猫になった。警官なら犬になるところのイメージであろうが、ともかく猫になった。
そこへ悪だくみの動物売買業者が現れた。
「諸君みたかね。この動物変換装置を。これで、インターネットで自殺志願者を募って、動物にして、各動物園にこっそり安い価格で売っていたのだ」
「にゃーにゃーにゃー」
「しかしこの機械も欠点があり、人間にしか効かないんだ。だからこっそり今日も今から自殺志願者の若者に会いに行くところなんだよ」
「にゃーにゃーにゃー」
「では我々はここで失礼するよ」
猫数匹は車にしがみつき、悪徳業者にしがみつきながら抵抗を試みたが、ズドンと1発拳銃を悪徳業者が空に向かって撃ったので、猫たちも抵抗が収まってしまった。もとはといえば、自分たちが持ってきた拳銃である。それを奪われたのだ。
しかしその時である。頭のいい猫数匹が、悪徳業者が使った装置に到達して、それを、奴にめがけて発射したのだ。
「ゲッ」
悪徳業者はあっという間にネズミになってしまった。最悪である。猫の中にネズミが一匹。みんなが一斉に奴を取り押さえた。
「にゃーにゃーにゃー」
本部に無線で知らせても、スマホでアクションをまじえながら説明しても、なかなかわかってもらえない。むしろ猫が踊っている画像を見て、「可愛い」などという声が聞こえる始末であった。
それでも事の異状さはわかってくれたようで「何か大変なことになっているの違いない」と応援を出してくれた。
こうして事件は解決したが、問題は猫たちを人間に戻す方法だった。
「こいつは無理だろうねえ」
権威ある動物博士はいった。犯人のネズミにもこっくりさん方式で何か方法はないか聞いた。「ソ・ン・ナ・モ・ノ・ハ・ナ・イ」が答えであった。
こうして猫10匹による特別捜査隊が結成された。
(続く)