学食にて(ショートショート)
「オカルト研究会なんてどうだ」
矢崎が提案した。大学1年生、しかも未成年を酒を飲ませて急性アルコール中毒で救急車を呼んだことにより、サークル活動の停止を余儀なくされた元UFO研究会の3人が大学の学食で話し合っていた。
3人とは矢崎の同級生で3年の石川と、2年生で美人の山根の3人である。他の部員はみんなチリジリになって戻ってこなかった。
「それじゃああんまり変わんないじゃないですか。あたしら学校側から目ぇつけられてるんですよ」
山根がいった。もとはといえば山根が1年生を飲ませ潰したことが原因なのに、全く他人事である。
「もっとソフトな名前にしようよ」
石川が言った。3人の中では彼が一番まともであるかもしれない。
「じゃあ心霊スポット研究会」
「どこがソフトやねん。そういうところからちょっと外れてみようや。ソフトテニス愛好会みたいな感じでさ」
石川が自販機で買ってきたコーヒーを飲みながらいった。
「いや、それでは引退された先輩たちに申し訳が立たん」
「先輩には何ていったの」
山根がため口をきく。
「笑われたよ。元々あまり伝統なんてないサークルだったしな」
「じゃあやっぱり、女子受けするソフトテニスとかがいいだろう」
石川がいった。
「私、反対。そんなかったるいことするのは」
「じゃあ何かいいアイデアあるのかよ」
「きき酒研究会とかどうかしら」
山根がいった。
「冗談ではない。酒でやらかしちまったんだから、余計にらまれるだろう」
石川がいった。
「超常現象研究会でどうだ」
矢崎がいった。全然抜け切れていない。
「結局、お前がしたいことは、そういうオカルトチックなことなんだな」
石川がいった。矢崎は頷く。山根も頷いた。
「そしたら2人で仲良くやったら」
「何だよ、見放すのかよ」
「そもそも新しくサークル作るのに、俺たちが中心になったらまずいだろう。誰か他の人を立ててそれにのっかかる形にしないと。申請却下されるぜ」
「非公認でもいいんじゃない」
山根がいった。
「おーそうしよう。非公認でオカルト研究会をつくろうぜ」
矢崎がいった。
「じゃあ4人で再出発だ」
「4人?3人だろう、誰か来るのか?」
石川が聞く。矢崎と山根が石川の横を指さす。
「いるじゃん。お前の横に」
石川は驚いて、椅子から飛びのいた。誰もいない。こいつらには見えるのか。
「じょ冗談はよせよ」
石川がいった。
「やっぱり、石川先輩にはUFOだのオカルトだの、超常現象だの、なんて無理ですよ」
「そうだな。残念だが。2人で今後のことを相談するか」
そういって2人は立ち上がり、石川に別れを告げて、どこかへ行ってしまった。
結局俺は奴らの邪魔者だっただけじゃあないのだろうか。石川は腑に落ちないような表情で2人を見送った。