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惑星の危機(ショートショート)
我々と同じように文明を持った星を探すべく任務を与えられ、遥かなるまだ見ぬ星を目指して我々は彷徨い続けていた。しかし途中本国と連絡が途絶えた。誰にも連絡がとれない。それで帰るべく故郷の星に戻った。
そこで見た惨状は言語に絶する景色であった。何が原因なのかはわからない。核戦争が起きたのか、地殻変動による天変地異が起こったのか。誰にも分らない。調べる限り生存者はいない。すさまじい放射能レベルである。きっと全員死んでいるに違いない。故郷である星が滅亡したのである。
我々は諦めて、生活ができるレベルの星を目指して再び飛び立ったのであった。帰るべき星を失った我々にとって絶望に近い旅であった。
数年がたった。
「隊長、あの星は空気もあり、草木も生えて、生活できそうな雰囲気のようですが。降りてみましょうか」
俺はGOサインを出した。降りてみると確かに宇宙服は必要ない。これなら十分移住するのにいい。
あとはこの星の代表者に会って、経緯を話し、この星に住まわせて貰えるように願いする必要があるだろう。
ロケットは都市の方に向けて、飛んだ。都市に近づくと当然ながら星の人々は大騒ぎになった。謎の宇宙船が飛んできたのだ。我々は星の代表者に会って話したい旨を電波を通して伝えた。問題は言葉が通じるかどうかである。翻訳機がうまく作動してくれればいいのだが。
だが翻訳機は必要なかった。彼らの言語は我々の言語と同じであった。これは何を意味するか。おそらくは、ウチの星からはるか過去にここに
漂着して住み着いた者がいたからではなかろうか。あるいはその逆か。この星の人々は見た目も全く同じであった。多少のファッションの違いを除けば。
話はトントン拍子に進んで、我々は研究所の一角に住居をかまえ、彼らの科学技術の手伝いをすることになった。ただこの星の科学技術も相当なもので、むしろ我々よりも進んでいた。
我々の乗ってきたロケットは、かつて彼らが作っていたものの旧型によく似ているといわれた。
ある日、部下のAが、俺に言った。
「隊長、ここは我々よりも進んだ文明を持っているようですが、危険ではないでしょうか」
「どういうことだね」
「この星が我々の星を滅亡させたのではないか、とふと思ったのです」
「証拠は」
「証拠はないですが、あまりにも我々の技術を知りすぎてます。我々よりも進んでいるので、我が星を危険に感じて、我々が宇宙を彷徨っている間に戦争を起こしたとしても不思議ではありません」
「なるほど。ここは我々の星に確かに似すぎているな。しかもこっちのほうが進んでいる。だが我々が彷徨っている最中になぜこの星を今まで見つけることができなかったのだろう」
「彗星のような軌道で回っているのではないですか」
「しかしそれでは恒星の恩恵を十分に得られまい」
「この星の技術なら人口太陽を作るくらいできそうですよ」
「なるほど。だが全ては空想の世界だな」
俺も部下の発言に、もしかしたらそうかもしれん、と思いながらも、もしそうだとしたらどうなのか、どうするべきなのか、結論は出なかった。故郷の星を失くした以上、ここで大人しくしてるしかない。
ところが、驚くべきことに、我々の肉親が現れたのである。我々のことはニュースで放送されていたので、俺の子供は真っ先に国の機関に問い合わせて本人かどうか照合を進めていたらしい。
ただ我が子は俺よりも老けていた。90歳なんだそうだ。俺と別れたのが、18歳の時だったので、72年の年月が経っている。
「するとここは我々が出発した後の72年後の星ということになるのですね」
部下Aがいった。
「そういうことだ」
「では、あの放射能にまみれた星は何だったのでしょう」
不思議なことであった。同じ星が2つあるとは思えない。
「あの破滅した星は、この星の未来の姿なのかもしれません」
「確かに我々は宇宙を彷徨いながら時空を超えていたのかもしれない」
「そしたら早速このことを警告しないといけません」
俺もその通りだと思った。警告を発することで破滅を救うことができるはずである。
早速この星の大臣にその話をすると、大臣は笑って
「その星が我が星だという証拠があるのですか。別の星だったのではないですか。むしろこの星こそが、あなた方の故郷なのです。心配には及びません。核戦争なんて起こりはしません」
と全くうて合う様子もない。何か証拠になるものを持ってくればよかったのだろうが、そんな物ありはしない。
数年が経った。
この星に隕石が堕ちてこようとしている。でかい彗星だ。
「やはりやってきたな。こいつが破滅へ導いた正体だったのだ」
世界中はパニックになった。宇宙船に乗ってこの星から逃げ出そうとするものまで出た始末だ。
彗星は平気で大気圏に突入しようとしていた。核ミサイルを彗星に向けて発射して軌道を変えようと試みたが、その核ミサイルが地上に落ちてきてほうぼう被害にあった。もはや地獄絵図であった。
「やっぱりこの星の未来の姿だったのですね」
部下Aがそういった。我々もロケットに乗り込み、再び彷徨の旅へと舵を切った。
「再びこの星に、今よりもっと昔に、行こう。そしたら今度こそは滅亡を防げるだろう」
俺が言った。
「さて、それはどうですかね。隊長、外を見てごらんなさい」
いわれて外を見てみると、同じロケットが、この星から飛び出していくのが見えた。
「あれは俺たちか」
「多分そうでしょう。道理でトントン拍子に僕らは取り調べをきつく受けることもなく、いい待遇を受けたはずです」
「あっちにも見えるぞ」
「何回も来たのでしょうね。でも結局滅亡は止められなかった」
「まだいるぞ」
俺はだんだん悲しくなっていった。