真実の眼6(快傑サッソー)
3人は観光客のフリをして、ザブ島までやってきた。この島は海が綺麗で、泳ぎに来る観光客がいることはいるが、そこまで観光に力をいれてないので、知る人ぞ知る状態である。
問題の真実の眼の居場所は、あからさまにわかった。というのも、機材を運ぶ兵隊が列をなして、山の中腹目指して運んでいるのが一目瞭然なのである。
「あの先にきっとあるに違いないわ」
「全然秘密じゃあないね」
「存在自体が秘密だからね。各国の諜報部もこの話を聞いて疑心暗鬼だったしね」
「ガセネタと思われてるのかしら」
「いやあことがことだけに調査にはきてるだろうけどね。ごらん、多分いつもより観光客が多いんじゃないかな。普通はどのくらいかわからないけれど」
3人は話しながら平然と山の方へ近づいていった。観光客を装い、先に何があるんだろう、みたいな感じである。
「すいませんが、ここから先は立ち入り禁止です」
兵隊の1人に道を阻まれた。
「何があるんです。この先に」
「アメリカ軍の研究室です」
兵隊は真っ正直に話した。
「へー、ここって、アメリカなんだ」
「最近、アメリカの領土になったという話です。公にはまだなっていませんが」
人懐っこい兵隊だ。ベラベラしゃべってくれる。箝口令はしかれてないようだ。取りに来る奴などいないだろうという姿勢である。
夜になった。3人はそれぞれ忍者服に着替えて、なんと李麗春までもが、ださい忍者服を着こなしていた。
ゲートは丁度、昼間兵隊と話をした場所あたりに設置され、歩哨が2人立っていた。といってもまだ設備は完璧ではないので、山を登っていけば、中腹の基地のそばまで、誰に咎められることなく行くことができた。そこに洞穴があった。作ったのか、もともとあったのかはしらないが、奥に入れば、おそらく運び込まれた機材があるはずなので、相当な広さがあるに違いなかった。洞穴の入り口にも歩哨が2人立っていた。
その2人は催眠ガスで、あっという間に眠らせて、3人は中へ入っていった。
中は暗く照明もなかったが、サッソーには夜目が利いてみることができるのであった。
それを2人が付いていく。
洞穴は思った通り深かった。時間があれば、エリア79のように地下に穴を掘って基地を作るところであったろう。
突然明かりがついた。
「ようこそ。諸君。来ると思って、お待ちしていましたよ」
ドク・クレージーが目の前に立っていた。
「ここは、君たちが思っている通りの秘密研究所だ。もともとはあの神の像が設置されていた神の部屋だったのをお借りしたのだ。何一つ穴を掘ったりはしていない。最初からこれだけのスペ-スがあったのだ」
「真実の眼はどこにある」
「この奥にあるさ。だが近づかない方がいい。危険な目に合う」
「真実の眼をどうするつもりだ」
「今実験の最中なんだ」
「どんな実験をやろうとしているのか」
「極秘だが、君達には知る権利があるかもしれないね。教えてやろう」
ドクの言葉に固唾を飲んだ。
「真実の眼はとても危険だ。戦力としても、また錬金も経済を狂わせる虞がある」
「だから抹殺しなければならない」
「その通りだ。これが仮想敵国、権威主義国家の元に渡れば恐ろしいことになる」
「争奪戦になるだろうな」
「だからまだどこの国も実態を知らぬうちに、これを無力化する。それが我が大統領の意向でもある」
「えっ」
そんなことなら情報を各国の諜報機関に漏らすのではなかった、とサッソーは後悔した。
「他国の諜報機関に情報を漏らしたろう。だが連中はまだ疑心暗鬼だろうからな。もう遅い。すでに無力化のプログラムは始まっている」
「それなら安心だわ。でもそれを確認する責任が私達にはあるはず」
「ああ、最後まで見届けるがいい。ただし本当に見ると、目が潰れるからここで待っているがいい。私もここで操作しているのだ」
ドク・クレージー。サッソーは思い出した。この男だ。かつて死にかけた軍の兵隊たちを改造人間にして、蘇らせ、戦わせたのは。それはまた別の話。
この男、天才なのだろう。どんな理屈かはしらないが、こうして真実の眼、隕石の不思議で危険な性質を無効化するという。そんなことができるのだろう、この男にかかれば。だが何故アメリカ軍に雇われているのだ。この能力ゆえか。
そこへ、侵入者が現れた。他国の諜報部員である。国が入り乱れ、合計6名が中に入ってきた。そして拳銃をかざしてきた。それに対し、アメリカ軍も誰もいなかったわけではない。脇の方から次々と現れ銃撃戦になった。サッソーたちはドクに誘導され安全な場所へ案内された。
諜報部員たちは逃げ散ったようだった。
「どうもすまないことをしたようだ」
サッソーが謝った。
「なあに、ここは兵隊がたくさん隠れているから大丈夫だ。そろそろいいころみたいだ。真実の眼を見にいこう」
3人はドクに促されついていった。 <つづく>