だれかのマーチ。
アンパンマンのマーチという曲がある。つくづく不思議なタイトルである。マーチは行進曲である。アンパンマンはいつも飛んでいく。行進はしないし、なんか曲のテンポも行進曲っぽくない。
でもWikipediaを見て身震いしてしまった。
マーチ(March) 英語での意味 ・行軍 ・パレード ・行進曲 ・3月
行軍…「部隊が次の目的地に向かって機動すること」。
常に歌詞の意味というのは本人にしか分からないものであるが、この歌は戦争で神風特攻隊として散っていったやなせたかしさんの弟をモチーフにした歌だとも言われていて、たしかに随所にそう思わせるフレーズが散りばめられている。マーチとは「行軍」の意味だったのか…。まぁこれもね、推測の域を出ませんが。
僕はこの歌を何回かライブで歌わせてもらっている。「アンパンマン」の部分を贔屓のライブハウスの名前にしたりして。
そしてこの歌を練習する度にすごい歌だなぁと思う。まず、「そうだ」から始まる。何を発見したのか。「生きるよろこび」。生きている、そのこと自体が「よろこび」で、「うれしい」のだ。これはおそらく同じやなせたかしさんの曲「手のひらを太陽に」にも通じている。生きている、そのこと自体が素晴らしいことなんだ。それは人間だけじゃない。ミミズだってオケラだってそう。みんなが生きてること、それが「うれしい」。
最近発見したのは3番のサビの重さ。
「そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえ どんな敵があいてでも」
1番はこうだ。
「そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえ 胸の傷がいたんでも」
そして2番。
「そうだ おそれないで みんなのために 愛と 勇気だけが ともだちだ」
アンパンマンで「敵」といえばバイキンマンである。時々ドキンちゃんでカビルンルンである。この歌の「敵」とはだれのことだろう。
「そうだ おそれないで みんなのために たとえ どんな敵が相手でも」だったら分かりやすい。
しかし
「どんな敵が…」の前に来るのは「生きるよろこび」である。むむっ?
これはあきらかに「生きるよろこびを失わせるさまざまなこと」である。
会社でのあつれき、人間関係の圧力、いじめ、誹謗中傷、無気力感、家族からの暴力、自分はこうでなくてはいけないという束縛、罪悪感…人はそれぞれ悩みを持っていて、時にそれに押し潰されそうになる。そしてどこにも出口が見つけられない時、人は死を選ぶ。
閉塞感漂うこのご時世、じっくりとこの歌の歌詞を眺めてほしい。やなせたかしさんのやさしさが伝わってくるし、ちょっと頑張ってみようという気になれるはず。
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