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ひとりじゃたどり着けない場所へ マグナゲートと∞迷宮 感想文:前編


まえがき:感想を書くにあたって

 2021年1月4日、「ポケモン不思議のダンジョン マグナゲートと∞迷宮」(以下「マグナ」)をクリアした。
 スタートボタンを押してからスタッフロールまで約1ヶ月。あっという間のようにも感じるし、かなり長い間遊んでいたようにも感じる。そして今、エンディングを迎えた興奮冷めやらぬまま感想文を書こうとしている。
 この体験は私にとって非常に思い出深く、また貴重なものになった。その感動を文章という形で残すことで、すでに遊んだことのある人には今一度3DSを手に取りたくなるように、他のポケダンはやったけれどマグナは遊んだことがないという人々には興味を持ってもらうきっかけになればいいと考えている。
 当時の詳しいプレイ中の様子、諸々の悲鳴については、リアルタイムで残したツイートのまとめをご覧いただきたい。

https://min.togetter.com/Qe6Wj1s?page=2


 余談だが、先のまとめにはマグナのメインシナリオに関わる重大なネタバレだけでなく、一部シリーズ他作品のネタバレもある。苦手な方はご注意されたし。

 感想文は、前編(ネタバレほぼなし)と後編(がっつりネタバレ)の2つに分かれる予定だ。
 この記事はネタバレ無しの前編にあたる。とりあえず感想を言いたかったので、ざっくりした概要みたいなことしか書かれていない。前置きはいいからさっさと詳しい話をしてくれという人は、後編が書き上がるまで今しばらくご辛抱いただきたい。


良かったところ

 ・ストーリー
 ・音楽
 ・一部システムの改良・新要素

 ストーリーについて一言で言うならば、安心と信頼のポケダンだった。(強いて言うならやや短めかもしれないというくらいか)パートナーとの絆、町の仲間達との絆、そして味方だけでなく敵となるポケモン達にも信念と矜持がある。ポケモンとニンゲンの信頼とささやかな希望は、約束された破滅を乗り越えることができるのか?そんな感じの話である。
 今作のシナリオは特に、「みんなの物語」であることが強調されている。この辺りについては後編で詳しく書くつもりでいるが、マグナのポケモン社会はどことなく今のニンゲン社会と通ずるものがあるように思える。作中でなんども提示される「不信と不安が蔓延し、諍いは絶えず、自分さえよければいいと誰もが考えている」世界はゲームの中だけのものではない。そんな社会で希望を持って生きることの難しさと尊さみたいなものが、このシナリオの根っこなのだと思う。

 音楽について、特に印象に残っているのは3曲。
 1つ目は「希望のテーマ」。大体パートナーがいいことを言うときに流れている。オープニングにラスボス戦に、様々な場面で顔を出すこのフレーズは、折れかけた心を奮い立たせて前を向かせてくれる。状況がどんなに厳しくても諦めずに前を向く、パートナーの力強い言葉を思い出させてくれる、そんなBGM。
 もう一つは「絶望」。希望のテーマとは対照的に、しんしんと積もる雪のように流れるメロディが虚無感を煽り、いっそ美しいとさえ感じさせる。
 どちらも登場キャラクターの心情に寄り添う名曲である。
 最後はラスボス戦の2曲目。みんなの希望と励ましの声が主人公に力を与える一曲。あの世界に生きる普通のポケモン達の、「希望を持ちたい」という想いが込められているのだと思う。

 一部システムの改良とは、技をLボタンで出せるようになったところ、みんなでアタックができるようになったところ。この仕様は次回作の超ポケダンと初代リメイクである救助隊DXでも引き継がれている。過去作よりも簡単に技が出せるようになった。
 また、技そのものにレベルが設定され、技を使い込むほど強化されていく仕様になっている。レベルが上がって習得した新しい技に入れ替えるか、現在の技構成のままさらに強化するのか…などを考えながら戦略を立てるのは面白かった。
 また、マグナには街づくり要素がある。土地を開拓し素材を集めて、自分好みの楽園が作れるのである。今までになかったタイプのやり込み要素であり、新しいことをやろうという意欲を感じた。私はあまり作り込まないうちに人間の世界へ帰ることになってしまったが、好きな人はハマると思う。仲間にしたポケモンが街にやってくるのも、仲間が増えた実感を持たせてくれて良いと思った。


惜しいと感じたところ

 ・一部システムの変化

 やりにくいと思ったところ、過去作の方が良かったと感じる部分のほとんどはゲーム上のシステムに関する部分である。

 ・主人公・パートナーの候補が少ない
 ・性格診断がない
 ・仲間にできるポケモンが少ない
 ・専用道具廃止
 
 主人公・パートナー候補ポケモンが減った。性格診断がなくなった。これらはなかなか辛い変更点である。過去作ではそれまでに発売された本家ポケモンの御三家+αから主人公とパートナーを選ぶことができたのに。それが今作では5択。性格診断も毎回楽しみにしていた身としては少々残念だった。

 仲間にできるポケモンの減少と専用道具廃止については残念だと思う一方で、仕方ないという気もしている。ハードが変わった直後の作品は安定しないものだと私は思っているし、本家のポケモンの総数が増えたぶんだけ専用道具のデータを用意するのは大変だったんだろうな。

 
で、結局どうだったの?

 以上の良かったところから惜しいところを差し引いても、(少なくとも私にとって)マグナは楽しめた。ポケダンのシナリオが好きな人はプレイして損はないと思う(詳しくは後編で語るつもりだが、私はエモンガとノコッチとビリジオンのトリオが特に好きだ)。あそこには世界があった。普通に頑張れない普通のポケモンたちが生きていた。誰も彼もが根深い心の傷を持っているし、形のない不安や不信を感じながら、諦めと失望を心の隅に抱いて生きている。それでも誰かを心から信じてみたい、この世界もまだ捨てたものじゃない、希望があると信じたい。そんな叫び声をあげる物語だ。面白くないわけがなかった。

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