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(2979)ソシラ物流リートの分析

さてさて、今度はソシラ物流を分析していきたいと思います。
とはいえ、スポンサーが住友商事ということで、もう終わってもいいと思いますが・・・(笑)
まずは全体的な指標を見ていきましょう。

17物件  1425億円 平均築年数6.6年 物件平均NO4.7% LTV42.4% 平均金利0.6%

ということで、指標だけ見るとかなり健全な財務運営で、新築に比較的近い物件を組み入れている感じです。
不動産投資家の中で、「物件には資産価値と収益性があって、両方あればもちろんいいんだけど、普通はどちらか一方を重視して取得していく」みたいな解説をしている方がいて、聞いていて納得しました。
資産価値というのは、小林アニキがよく言う「10年後に同じ価値を担保できる物件」ということです。
貨幣価値が一定と仮定しますが、今1億円で買って、10年後に1億円で売れる物件を買えば、あとは運営中の利益が少なくても(利回りが低くても)、損失になることはないですよね?
これが資産価値ということで、資産価値が高いのは都心部の物件になります。
もちろん、それだけ値段が高いですが、その値段が維持されるなら全く問題ない、資産価値が下落しなければよし、というものです。
一方で収益性というのは、地方のボロ戸建て再生案件のように、「利回りは高いけど、(人口減少などで)売りたいときに売りたい値段で売れるのか・・・」物件ということです。(ちょっと極端に言っていますが)

もちろん、資産性のある都心部の物件で、なおかつ高い賃料で収益性も確保できるなら一番理想的ですが、そのような物件はそうそうあるわけがなく、結局は「資産価値」と「収益性」をどうバランスしていくか、というのが投資家の仕事になります。
株式投資でも、成長株と配当株で分けて投資しています。
BTIは配当株、リートも当然ながら分配金を目当てに投資しています。
一方で、最近投資し始めたマニーは、成長性や業績の安定性を求めて投資しています。

さて、今回のソシラ物流ですが、どちらかというと資産性を重視しているような感じがします。
ROAは2.4%、ROEは4.5%と、リートの中でもけっこう低い方です。
しかし、その分築浅の先進物流施設に投資しており、借入比率も抑えてあるので、資産性と安全性を重視している感じでしょうか。
で、ソシラ物流の特徴としては、新築に近い物件を組み入れて、減価償却費を取って超過分配の原資にする、という感じのようです。

とりあえず、実際に見てみると、減価償却費が一期あたりでおおよそ7.7億円で、それに対して資本的支出が400万~2500万円程度と、圧倒的な低コスト経営をしているようです。
直近の超過分配金がひと口当たり333円で、これは5期でほぼ変わりません。口数が72万7500口なので、全体で2.42億円程度の超過分配金になります。
おおよそ減価償却の3分の1程度の超過分配になります。やや多い印象ですが、新築の競争力高い物件を住友商事からしっかり組み入れできているなら、十分安全な範囲だとも、今のところは思えます。

ここでリスクとして考えられることは、「まず極小の資本的支出で、これからの長期的な競争力を維持できるのか?」というところですね。
物流施設なので、一回入ったテナントがすぐに出て行くこともそうそうないとは思いますが、先進的物流施設と言っても、10年たてば先進的と言えるのかどうか、怪しくなってくると思います。
ソシラというのは、物流施設のブランド名らしいですが、それだけの先進性を担保できているのか・・・
とりあえずそこが懸念点の一個目でしょうか。

超過分配金ですが、これを続けていくと、その分資産が減っていくことになります。
そのまま放置していると、資産は減るのに借金はそのまま残るので、LTVが上昇していくことになります。
そのためには、超過分配金×LTV分の借金返済をする必要があります。
それか、超過分配して残った手元資金で、何か物件を購入することで、増資を抑えて物件購入でき、希薄化ではなく濃厚化(逆のパターン、なんて言うんですかね・・・)できるので、どちらかで対応すると思います。
ちなみに、営業利益自体は増えているものの、肝心の分配金はほぼ変動がありません。
原因はやはりリートの構造上の問題である増資による投資口数の増加。
これによって、なかなか増えていかない分配金・・・
しかし、リート自身も手元資金が毎期5億円程度増えていることをアピールしており、当然この手元資金の有効活用の道を模索していることでしょう。
(ちなみに、3年後に手元資金50億円になるので、それで何か物件買いたいような雰囲気が、運用報告書から読み取れます)
この辺りは、住友商事という強力なスポンサーの開発した強力な物流施設を購入し、強みを素直に伸ばしていって欲しいものです。
希薄化を抑えて物件取得できれば、ようやく分配金の上昇にも期待できます。

最後に、インフレ対策です。
5年以下の間に契約更新する割合が40%以上あり、さらにインフレ対応する条項を盛り込んだりするなど、対策は考えているようです。
結局はこういうことは相対の契約もあるので、どこまで対応できるか全部把握できるわけではないですが、リートの側が気にしていることは伝わっているので、何とかしてくれるでしょう(笑)
ただ、やはり長期契約になっているので、短期間の急激なインフレには対応しきれないでしょう。
日本でそこまでのインフレリスクがあるとは思えないですが、通常のインフレ率程度であれば、遅れはあるものの、ある程度追従していけると思います。

さて、総合してみると、「新築か築浅で、先進的物流施設を購入して保有し続けることで、利益をじっくり出していく」リートということでしょうか。
頻繁に売買するわけでもなく、CPEXもそこまで費やさず、良くも悪くも動きの少ない安定したリートだと思います。
個人的には、好きなリートになります。
リートに求めるのは、華々しい収益を上げることではなく、安定した家賃収入を長期間保持してくれることです。
もちろん、これは個人的な要件なので、人によって違うかもしれませんが、ぶっちゃけリートって安定して分配金もらうために投資するものであって、あまり株価の変動を気にしすぎない方がいいと思います。
愚直に分配金再投資戦略を発動していくべき投資対象でしょう。
(まあ、ホテルリートだけは売り買いしていますが、あれはどちらかと言うとホテル株に近いものだと考えています。賃料の変動も大きいですし・・・)
これからも、同じような戦略で、安定した分配金を送り出してくれることを期待しています。

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