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「お金は君を見ている」(キム・スンホ)を読んだ感想

久々に、書評でもしてみようと思います。
というか、あまり書評、してなかったですね・・・
なぜこの本なのか、ということですが、もうそれは「タイトルが本屋の本棚から見ていたから」ですね(笑)
見ているのでついつい買っちゃいましたが、思ったよりも質実剛健で堅実な思想と投資について語っている本です。
人がお金を評価するのではなく、お金の方が人間を評価している、というソビエト的倒置法をほうふつとさせますが、中身はお笑いなど一切なしの、バリバリ硬派な資産と人生について語っている本です。

全体的な中身ですが、いわゆる「富裕層のマインドセット本」の類になると思います。
これも色んな本がありますが、特に読むに値する本は何冊かあると思います。
以前の記事の本田静六の本など・・・

こういった「マインド本」も、良書が何冊かあるので、また紹介していきたいと思いますが、今回の「お金は君を見ている」も相当な良書であると感じました。

まず第1点目として、「定期収入の大切さ」をあげている点です。
これは労働収入も定期的な収入として、非常に尊重しています。
本書では「生活費を資産からの収入で賄えるようになった時が、君の本当の独立記念日だ」という文があります。
サラリーマンの出世競争は厳しく、それなら起業した方がいい、とも述べています。
それでも、労働者や労働に対しては尊重されていて、非常に好感が持てます。
まあ、「資本家が奴隷を大切にする」精神とも言えますが・・・
著者の方も、若いころに苦労しながら、今では世界的企業の経営者になったようです。なんでも、外食レストランの経営で、韓国ではけっこう流行っていて、経済ニュースでも紹介されていました。
(ちなみに、少し離れた場所ですが、この人のチェーン店が開業していましたね。店の中で入って食べてもいいし、持って帰ってもいい、というような感じの店です)
さて、著者は色んな表現で「定期的収入の大切さ」を説明してくれています。
まずは「10億円の遺産を受け継いだが、一切損失を出さずにインフレに負けないで運用した分だけ使っていい」というどう考えても無理ゲー案件を例に出しています。
正直、かなり極端な例だと思いますが、それだけインフレに負けずに低リスクで運用することは難しいということであり、本書に通底しているテーマの一つである「早く金持ちになりたければ、早く金持ちになろうとするな」ということも言いたいのでしょう。
結局、この例だと韓国の定期預金に預けて、この時のインフレ率が0.4%程度だったので、月額で23万円程度の運用益が得られました。
要するに、「月収23万円は、100億円の資産を持っているのと同じである!」と力説されています。
ちょっと無理矢理な擁護ですが、これはこれで一つの思考実験として面白いと思います。
それだけ「定期的な収入」というのを、著者は重視しています。
「定期的な収入は樫の木のように堅く、家を建てることもできる」
そして「一時に多く稼いでも、それは綿菓子のように消えていく」と続きます。
そう、「死んだ人間の口に肉を放り込んでも生き返ることはない」のです。
農業でもそうで、年間1000ミリの雨が降るとして、それが3日で全部降ってしまうと、何も栽培できないでしょう。
しかし毎週定期的に20ミリの雨が降るなら、そこでは豊かな実りがもたらされるはずです。

話が少しそれますが、そこからPERの話につながっていきます。
要するに、毎年同じ収益が定期的にもたらされるなら、PERが高くても許容されます。
これを投資に当てはめてみると、最近記事にもしているリート投資にも通じるものがあると思います。
リートの利益は安定していて、それがPERにしたら株に対してかなり割高になっています。
それでも定期的な収入というのは強い・・・
そう、リート投資家がなぜか毎月分配を狙ってしまうのも、やはりこういうところがあるんでしょう。
この不確実な世界で、少しでも確実性のあるものを探そうとするのは、人間のリスク回避したいという本能なのかもしれません。

本書の話に戻りますが、自分がお金を儲ける前に、まずは他人のお金を尊重しているのか?という話が出てきます。
こういうところは、普段の金融投資だと見落としがちです。
株価だけみていると、株券の向こうに実体のある企業や労働者がいる、ということを見落としがちになります。
著者はコストコの株を持っているようで、コストコに行く時は必ずはぐれているカートをしまうそうです。
スーパーを経営している時もあったようで、その時にカートの破損だけでもけっこうな費用になったので、少しでもそういうことを防ぐために、カートが散らかっていたらしまって、丁寧に扱う。
馬鹿にしがちですが、こういうところからすでに「お金は・・・君を・・・見ている・・・っ!!!」(ジョジョ風労働者)は始まっているということですね。

あとは、韓国でも「お金は汚い」という価値観がけっこう広がっているらしく、そういう価値観が根底から間違っていることを最初から言っています。
まあ、この辺りは当たり前というか、そういう思想の時点でお金持ちにはなれないでしょう。
この人のいいところは、お金だけではないけど、そもそもお金がなければ家族もバラバラになってしまうのだから、「愛よりも金の方が重い」と言い切っているところです。
著者は貧乏も金持ちも経験しているので、真実味があります。
ロバート・キヨサキ氏も同じようなことを言っています。
金持ちのいうことは、おおよそ似たようなところがあり、その意味でもマインド本はこれ含めて数冊読めば十分だと思います。

お金というのはただ単に数字なので、どうしてもその中身を問わなくなりますが、この本では常にお金の中身や質にこだわって、「どのようにすればお金の質を上げられるのか」ということを問うていきます。
今回はここまでにしたいと思います。
かなりいい本なので、タイトルのソ連的倒置法に惑わされずに、一回購入されることをお勧めします。
本書の書評の続きは、またやろうと思います。

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