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(8966)平和不動産リートの分析

・物件取得額:2377億円(ほぼオフィスとレジが半々、6割が東京都内)
・物件数128件で最大物件価格は73億円
・物件含み益、22.6%程度
・平均築年数:約23.3年
・LTV約47%、平均調達金利0.85%
・現在の分配金は24年5月末で3340円、11月末は3440円予定(長期的には右肩上がりの傾向)
・2024年10月25日時点で株価12万1900円、現時点で5.56%の利回り
・スポンサーは平和不動産

以下「平和リート」でお送りします。
さて、またしてもリート価格が下落しており、一体何回下落するんだよ、という感じですが・・・
ここのリートもけっこういいと思うリートの一つなので、取り上げたいと思います。


きれいに右肩上がりの分配金、美しいと思いませんか?

きれいな右肩上がりで、投資家に着実な利益をもたらしてくれたことがよくわかります。
まあ、もうこれだけで終わってもいいのですが(笑)、しばらくは分析をしたいと思います。
いくつかあるのですが、まずはセイムボートについてみていきたいと思います。
ここは三重構造のセイムボートとしています。
・平和不動産12.9%
・資産運用会社である平和不動産アセットマネジメント0・3%
・役職員による保有
けっこうセイムボートの出資が多く、いわゆる「リートはゴミ箱」と言われるようなゴミ箱運用はまず考えられないと思います。
役員や運用会社も保有しており、投資家になる以上の投資家目線はないと思うので、この点でもいい制度だと思います。

さて、ここのリートは優秀なのは大体分かったとして、懸念点はどこにあるのか・・・?
それは「売却益を分配している」という点です。


売却益はけっこう出すけど、分配金はそこまで増えてない・・・


さらに長期のグラフも置いておきます

この通り、3400円程度の分配金のうち、700円以上が売却益になる予定です。
当然ながら、売却益も投資法人の実力であり、これだけ安定して出せるなら申し分ないと思います。
しかし、リーマンショックのような金融危機時には、不動産市況も冷え込むだろうし、当然売却も思い通りいかなくなることもあると思います。
リートを買う目的の一つとして、「不況時にも不動産収入は安定している」という点があると思いますが、希望する価格で売れなくなれば、当然上記グラフの売却益相当は出せなくなる可能性は高いでしょう。
ここが、平和リートの最大の懸念点だと感じています。

ここで一つ朗報なのは、二枚目のグラフにある内部留保という点です。
50億円あります。
仮に不況が来て売却できなくなっても、一株当たり700円の内部留保を取り崩しなら、株数が大体120万株くらいなので、8.4億円程度になります。
おおよそ6期程度、売却益がなくても700円ほどの分配金を出せるので、これに巡行DPU2650円くらいと見込んで3350円くらいを3年間出せそうです。
3年すれば景気も回復・・・しているか微妙ではありますが、おおよそ底は脱しているのではないでしょうか。
こればかりは実際になってみないと分かりませんが・・・

あとは、巡行DPUを上げられないか、という点です。



毎度おなじみの減価償却費だよ!

ここは超過分配はしませんが、その代わり資本的支出とバリューアップ工事を重視するようです。
こういうのは嫌いではありません。
不動産投資の会社は、やはり不動産を開発してこそです。しかも平均築年数は23年です。
20年を超えれば、施設や設備も古くなっているので、当然置き換える必要があります。そういう意味でも、しっかりとリフォームに資金を投じて、バリューアップして欲しいものです。
バリューアップ投資、というのが気になりますが・・・
普通はバリューアップのためにリフォームやらの資本的支出をするのであって、いちいち分かりきったことを言わなくていいと思いますが・・・
まあ、現状維持ではなく、明確な意図をもって最新設備にバリューアップする、ということなんでしょう。
日本では新築信仰が根強いですが、これからは不動産は余ってくる時代だと思うので、こういう古い不動産資産の活用は有効だと思います。

次は巡行DPUを見ていきたいと思います。


オフィスの賃料ギャップ


オフィスのフリーレント

オフィスでは、周囲と比べて賃料が低い状態で貸していることになります。
しっかりバリューアップして貸し出せば、賃料ギャップは埋まると思うので、期待できそうです。
一方でフリーレントは4か月と、これが多いのか少ないのか分かりませんが、素人目にはけっこう長くね?という感じはします。
それでも空室よりはマシだし、売る時に高く売れるなら、それもありかな、という気がします。

平和リートの賃料改定一覧。予定も含む

大本営発表ですが、とりあえず賃料改定の一覧表があったので。
増額だけ発表している可能性が高いので、これが実体ではないでしょうが、賃料増額幅もけっこう大きく、期待できる可能性は高いとみています。
オフィス市況全体を見ても、目先はひとまず底打ちしている感じはあり、このまま賃料増額が決まっていけば、いずれはDPUの上昇にもつながっていくと思います。
とはいえ、それで実際にどこまでDPUが増額されるのか・・・
恐らく100円上がったらいい方じゃないのかな・・・?
2650円→2750円くらいです。
賃料ギャップの7%を全部埋めたとしても、2650円→2830円程度です。
ちなみに、これはオフィス賃料なので、住居はまた別だろうし、住居でそこまで家賃値上げできるものなのか・・・?
ちなみに住居の賃料ギャップはこちらです。


住居の賃料ギャップ

3.3%程度ですね・・・
半分が住居ということで、加重平均して平和リート全体で5.45%の賃料ギャップ、ということになります。
しかし、オフィスにはフリーレント期間が4か月あるので、実際にはここまで体感では増えないと思いますが、とりあえず5%の賃料アップは、不動産市場を見てもあると考えられます。
5%というすると、2650円→2780円程度になります。
う~ん・・・という感じです。
利上げや物価高もあり、この程度の増額が打ち消される可能性も・・・
それ以上のバリューを生み出せるのか、というと、それはもう分かりません・・・
とりあえず、2800円くらいの巡行DPUにできるかどうか、というところだと思います。
もちろん、手許現金が豊富なので、何か一つくらい物件を加えてもいいと思いますが、どう判断するかはその場の市況もあり、どうなるか現時点で予想はできないでしょう。もちろん、物件買ったら、内部留保の取り崩しで分配金を維持する手段がなくなりますから・・・
とはいえ、結局はリートの売却益って、「太く短くか、細く長くか」を選択するだけでは?という気もします。

役員コメントも載っていたので、見てみましょう。


このコメントの中で、投資家として特に注目したいのが、24年6月の増資についてのコメントです。
ディスカウント増資であることを理解しつつ、それでもプレミアムな物件を仕入れて、投資家価値の向上はできたのではないか、という趣旨の発言です。
本来良くないディスカウント増資ですが、ちゃんとそこを意識してそれ以上の価値を生み出せるなら、投資家としては自社株買いでなくても確かにいいと思います。
そもそも、リートは株式会社と違って、公募増資が前提のシステムなので、そこまで自社株買いって大事かな?という気もしています。
もちろん、その時の株価次第ですが、だいたい自社株買いって底値で買いに行けずに、だいぶ株価上がってから買いに行くパターンが多く、自社株買いも上手下手はあります。平和リートが自社株買いが上手か下手かはわからないですが、不動産の運営ならわかっていると思うので、自分の強い分野で頑張るのがいいんじゃないでしょうか。
とにかく、ここで分かることは、リートの運営の人も、投資口価格を見て、経営方針を決定しているということです。


特に真ん中少ししたくらいのコメントでインフレについて言及

もう一人の役員の人は、今流行りの「インフレと金利上昇」について述べており、投資家の不安を払しょくできると確信しているようです。
確信が現実になって欲しいものですが・・・

・まとめ
平和リートの最大の懸念点は「売却益が大きく、これを持続していけるのか?」という点にあると思います。
現状は、売却益が大きく影響しており、これを巡行DPUで埋め合わせできるのか、という点については、けっこうな逆風の中で、という感じになりそうです。
売却益にしても、ずっと続けていくと当然枯渇していくわけで、次の物件を仕入れて売却益を育てていくことができるのかどうか、という点が大切です。
今後の市況もあるので何とも言えないですが、現状は含み益はそこまで減少しておらず、ちゃんと売った分くらいは新しく含み益を育成できているとみていいと思います。
(とはいえ、新しい物件のNOI利回りを見るとそこまで高くなく、やはり今は買いに行くのは慎重になる時期ではないかな、という気もしますが・・・)
仮に不況が来ても、3年くらいは現状に近い分配金を維持することは、よほどのことがない限りは可能ではないか、とみています。
その間に、新たな含み益物件を育てていくなり、何らかの手段はあると思います。
実績については申し分ないので、分配金をもらいながら待とうと思います。
また、投資家の方では、ポートフォリオを自由に組み上げることができます。
つまり、売却益の多い平和リートにリスクを感じるなら、売却をなるべくしないリート、つまり以前述べたイオンリートのようなリートと組み合わせることで、売却に関するリスクに関しても調整可能ではないかと思います。
まあ、イオンリートは商業だから、そもそも取り扱っている内容違うじゃん、というのはありますが・・・
オフィスや住居は、けっこう売買できる資産なので、売却益も悪くないと思いますが、そのあたりをどう見るかで平和リートの評価も分かれそうだと思いました。

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