配当は悪なのか・・・?
最近、ツイッターでまた「配当は悪」みたいなツイートを見かけたので、本当に配当は悪なのか、考えていきたいと思います。
まず、ツイートの内容を大まかに言うと、
「企業の利益分配には
1.配当
2.自社株買い
3.事業への再投資
この3つがあり、一番いいのは3であり、次いで2、配当は最悪の分配方法である」
おおまかに言うとこんな感じです。
本当に配当は最悪なのか、考察していきたいと思います。
・とはいえ、結論はいつものやつ・・・
結局は「各企業やその時の情勢による」としか言いようがないのではないでしょうか。
それを見極めるのが投資家の仕事であり、投資家の役割ですから。
以上!
・とはいえ、それで終わるのもなんなんで、一応考えてみます
いや、それで終わったら何とでも言えるじゃん、となってしまうので、一つずつちゃんと考えていきたいと思います。
まず一つ目に指摘しておくのは、「3つの利益分配方法」はどれか一つだけとっている企業ってまれで、大抵は2つ以上実行しています。
配当性向は常にどの企業でも100%なのでしょうか?
大抵は30%~50%くらいで、当然残りの利益は事業に再投資されます。
では、それだけ再投資しているなら、事業成長でもっと株価の上昇がもたらされるのでしょうか?
そんなことないことは、大抵の株主はとっくに体感していますよね(笑)
なぜそんなに事業に再投資しているのに、株価が伸びないのか・・・
答えは簡単で、「無駄な再投資になっているから」ということです。
例えば、借金の返済に充てるとしましょう。
今の日本の金利は、上がったといっても1%くらいの金利で借りることができると思います。
1%の資本コストで資金が手に入るのに、それを利用しないで返済しちゃうと、かなり非効率な資本構成になるでしょう。さらに金利分は費用として節税効果もあるので、そう考えると借金の返済も一概にいいとは言い切れず、その場その場の適切な資本構成があるはずです。
そのようなことを一切考慮せずに「無借金なら会社は潰れない」として借金を返済することに充てるくらいなら、配当金として出してしまえばいいと思いますが・・・
レバレッジ一つとっても、単純に「AだからB」と言い切れず、状況に応じて変えていかねばならないものです。
脇道にそれましたが、事業への再投資するといっても、例えば工場機械の摩耗や置き換えなどに使われるなら、それは投資というより「必要な出費」であり、「企業の収益力を維持するために必要な出費」と言えます。
最近は大石産業の記事で「大石産業が本当に出せる配当性向はどれくらいか?」ということを考察しましたが、通常は競争環境にいるわけで、それなりの事業投資をしても、その投資が他社に勝てないと意味がないです。
そんな簡単に「投資したから勝てる」というのは、株式投資している投資家の方であって、企業の方は常に他社に勝つために競争環境の中で投資しています。
事業に投資したから、配当より効率的かどうか、かなり詳細に分析を繰り返さないと答えは出ないと思います。
もちろん、そんな厳しい競争環境で配当として社外に資金流出してしまうと、さらに厳しくなるのではないか?という意見も当然です。しかし、本当に効率的に事業費再投資されているのかどうかは、かなり怪しいと思います。
最近だとセブンイレブンの海外事業がありますが、国内の利益率20%の事業から生じた利益を3%以下の利益率の海外コンビニ事業に投下しているのは、正直どうかと思いますが・・・
投資家としては配当で還元してもらって、もらった配当でそれこそ海外の小売企業の株でも買ったほうがいいかもしれないし、それこそ他の高配当株でも買ったほうがいいかもしれません。
あとはM&Aもありますが、これも失敗事例はたくさんあり、マイクロソフトですら失敗したM&Aがあります。
結局、事業への再投資が利益を確実に生み出すという保証はないのですから、それなら確実にもらえる配当と比べてどうなのか、と言われると、「状況や会社による」としか言えないでしょう。
・それでは自社株買いはどうなのか?
バフェット大好き自社株買いです。
配当には税金がかかるため、自社株買いで還元するのが最も効率的、と言われると、確かにそう思います。
それは「企業価値より低い株価で自社株買いした時」のみの話であり、高値つかみすると配当より効率が落ちるのは、投資家自身も体感していることと思います。
ここでは「自社の価値」というあやふやなものを、しっかりと算定できること、経営陣と株主が近しいこと、などが必要でしょう。
企業価値なんて、一流の投資家でも計算が難しく、DCF法、キャップレート、マルチプル、EPVなど色んな算定方法があり、成長企業ならさらに難しいことになります。(まあ、成長企業なら事業に再投資でいいですけど・・・)
よくあることとして、自社株買いしたものの、株価が下がりまくって半額に・・・というのも見たことがあります。
結局は経営陣も人間なので、投資の時には株価が上がってるときに買って、下がってるときには買いません(笑)
じゃあ配当でくれよ・・・ということになってしまいます。
・結論の再確認
結局は「企業と置かれた状況に応じて、最適な還元方法は変化する」ので、最適な還元方法ができているのかどうか、想定と確認しつつ、投資を継続していく、といういつもの結論になります。それ以外あるわけないんですよね・・・
ここでは「配当を出せばいい」ということを言いたいわけではなく、あくまで状況によるのだから、配当企業でもいい企業なら買えばいいし、無配の企業でも業績に期待できるなら買ってもいい、ということです。
そして、大抵の企業は配当しつつ残った資金で再投資や自社株買いをしています。とりあえず全部やっとけば、どれかの還元方法が間違っていたとしても、そこまで大きなダメージにはなりません。インデックス還元法ですね。
というか、投資なんてもっと単純に考えればいいと思いますが・・・
配当投資がそんなに効率悪いなら、高配当株投資なんて誰もやってないはずですが、現実では配当株に投資してリターンを上げている人はたくさんいます。
成長株でもリターンを出している人はいます。
結局は「価値より安い価格で買う」といういつものやつですね。