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ヘルスケア・メディカル投資法人について考えてみる

今回、ヘルスケア・メディカル投資法人(以下、ヘルスケア・リート)について、分析してみたいと思います。
とはいえ、結果的に購入することはありませんでした。とはいえ、悪いリート銘柄ではなく、それなりに投資妙味もありそうです。
現在は、利回りがほぼ5%程度、というところです。

まず、ポートフォリオの内容ですが、8割は老人ホーム系、残りの2割が病院系です。
個人的には、もっと病院増やせよ、という気持ちはありますが・・・どちらにせよ、社会保険改革で自己負担が見直された場合、かなりのリスクがある資産ばかり、という感じです。
多分、ここのリートの一番のリスクは、そこかもしれません。とはいえ、リートなので、いきなりそのリスクを背負うことはあまりなさそうだ、と感じました。
まず、テナントとの契約内容が、長期かつ一括での貸し付け、いわゆるマスターリース方式なので、空室率が高くても問題ないです。もちろん、あまりに空室だと、オペレーターの借り手が儲からないので、撤退することになりますから、そこは営業努力でどうにかするでしょう。実際に今の空室率を見てみると、テナントごとにけっこうな差がありますが、全体では9割くらい埋まっているので、大丈夫でしょう。ただし、物件によっては60~70%しか埋まってない物件もあるようで、オペレーターの経営努力が求められます。もちろん、長期の固定賃料なので、賃料収入が少なくなるリスクは小さいと思います。
逆に、インフレしても賃料を上げられない可能性があり、こちらが懸念されます。
水道光熱費は全てテナント負担なので、本リートが負担することはないですが、賃料についてはインフレ率に合わせて上昇させるような条約が盛り込まれていると安心ですが・・・
こればかりは実際の契約内容がどうなっているのか、までは調べられなかったので、誰か解明をお願いします(笑)

さて、ヘルスケア・リートの規模ですが、800億円程度と、かなりの小規模なリートとなります。
やはり、運用チームの人数は、資産規模が大きくても、そこまで変わらないと思うので、資産規模を増やしていけば効率化できる余地はあるのではないか、と考えています。
分配金ですが、3225円で、賃料収益から2919円、超過分配金が316円です。
超過分配金に関しては、減価償却費の20%を目標にしています。
超過分配に関しては、個人的にはあまりよく思いませんが、法律上は50%まで認められており、十分安全な範囲での超過分配だと思います。逆に考えると、ヘルスケア・リート自身が「20%までなら超過分配が出せる」と考えている、と言う風にも受け取れます。
長期で一括で貸しているわけですから、賃料収入や支出もほぼ予想ができるのだと思います。なお、半期での資本的支出は1~2億円程度で、あまりリフォームを頻繁にしなくてもいい資産なのでしょう。
なお、土地値は56%程度であり、そこそこです。まあ、これくらいなら大丈夫でしょう。
FFO(会社で言うところの営業キャッシュフローのようなもの。減価償却を考慮せず、純粋に入ってきた利益)は4500円程度なので、さきの分配金3225円に関しては、何の問題なく出せるでしょう。
NOIも5%程度あり、実はリートの中でもそこそこの収益性があります。

スポンサーですが、シップヘルスケアと言う会社で、上場しています。そこそこの規模が大きい会社で、ヘルスケア関連の事業を行っているようです。
リートの株式の三分の一を保有しており、利益相反は起こりにくいか?
スポンサーがそこまで強力とはいいがたいですが、専門的な分野だし、物件単価も少額なので、大規模リートからすると扱いづらい、そんな隙間を突いたリートになっているのではないでしょうか。

・総論

安定性が抜群で、なかなか優良なリートだと思います。
とはいえ、やはり社会保険料改革が最大のリスクなのは変わりないと思います。
逆にそれを逆手にとって、新しい領域や堅牢な物件を取得できれば、ヘルスケア分野で市場を取れるのではないか、と言う気もします。
ただ、それって将来どうなるか分からないし、今から予想もできないことです。
リートに投資する目的は、「安定して分配金を受け取ること」なので、そこに対して安心しきることができず、今回は見送りとなりました。
ただ、うまく資産規模を拡大できれば、運用の効率化などのアップサイドもあるだろうし、悪くないとは思います。
時代の流れにうまく対応できるかどうか、というのが、このリートの今後の一番の課題ではないでしょうか。

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