度し難い
民放キー局5局が2020年の秋以降、TV番組を放送と同時にネットで配信するという「同時配信」を開始するという。今、その準備が進められているそうだ。原因には、若者のTV離れがあるという。これまた、どっかで聞いたことのあるような理由である。
若者のTV離れというが、その理由そのものは幾らかでも考えてくれているのか。それが僕には皆目わからないのだが、実際どうなのであろうか。TV局側は、そのことについて、自らで少しは考えているのだろうか。
そんなこといってる僕だって、もちろん理由なんてわからない。ただ、TV局が若者のTV離れだと言っているその中身は、若者のTV離れは若者の内に原因がある、とでも思っていそうな感じがある。例えば、スマホの普及とかなんとか、或いはインターネット等を若者がエンタメとして消費するから、TVは必要性がなくなった云々、のように。
別にそれが原因ではないなんてことは言わない。それも原因の一つであることは、間違いないであろう。だからといって、それが若者のTV離れの原因の全てだ、何て態度を取られては、たまったものではない。
結論はこうだ。あんたらにも原因があるんじゃないんですかネ。それだけである。あんたらTV業界が、それこそ若者のニーズというやつに、答えられてないだけの話なんじゃないですか。じゃあ、そのニーズというやつを教えてください。それは無理です。そんなもの、僕らだってわからないんだから。でも、インターネット配信含め、我々が突如として何かに熱せられることはある。TVにだってそれはあるはずなんだから、それをTV局自身で無碍にすることはないであろう。
TV局が考えてることがよくわからないのは、実はそこである。若者のTV離れだと喚きながら、結局作ってる番組はここ数十年変わってないじゃないか。僕は若干20歳で、まさにTV局が考えるところの「若者」であろう。一応、毎日TVは見ている世代である。目が肥えているわけでもなし、四六時中見ているわけでもないから、勝手なことは言えない。でも、僕が子供の頃のTV番組と、今見ているTV番組の形式はほとんど変わっていないのである。
まず変えるべきは、そこではないのか。若者のTV離れを云々するよりも、自分たちの物作りの姿勢に向き合ったほうが、よっぽど得るものは多いはずである。それに、TV局の内側にだって、「若者」はいるであろう。そこらへんに意見を仰ぐとかも、一つの方策ではないのか。もしかしたら、そこから新たなTVの世界も拝めるかもしれない。
もちろんそれにはコストがかかる。僕が言ったようなことを多分してないのは、何よりコストがかかるからであろう。その点、同じような番組を作っているうちは、同じような方法論で、同じぐらいの予算があればいいわけだから、ある意味楽である。ただ、その中には新しい「何か」が生まれる余地は、多分ない。
だから、結局TV自身を変えるしかないであろう。若者は変わりゆく存在だが、TVの都合の良いように変わってくれるわけではない。ならTV自身を変えて、いろいろ試行錯誤していくしかない。それは茨の道だが、TVの天下をもう一度取りたいと思うなら、それくらいの道は覚悟すべきである。
今回のネット同時配信も、その試行錯誤の一部なのかもしれない。ただ僕は、それが本質的にTVを変えるとか、若者のTV離れに歯止めをかけるとかは、全く思っていない。中身は変わらないんだから、別に見る気もない。個人的なことを言えば、他のネット配信者を見ている方がよっぽど楽しい。ニュースなら、アプリ新聞その他で、事足りている。
言うまでもないが、ネット配信にはネット配信の世界があり、TV番組にはTV番組の世界がある。面白さも、その世界によって変わる。それを考えないで、ネット配信にTV番組をそのままぶち込んでも全く相手にされないような気がする。そんなこと、素人が考えてもわかりそうなものだが。
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