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【休日の一冊】水の神 ドゴン族の神話的世界/マルセル・グリオール

水の神 ドゴン族の神話的世界』著者:マルセル・グリオール

書籍紹介

『水の神』は、フランスの民族学者マルセル・グリオールが、西アフリカのドゴン族の神話と宇宙観を詳細に記録した重要な民族学研究書です。

ドゴン族は、マリ共和国のバンディアガラの断崖地帯に住む少数民族であり、独特の宇宙論や神話を継承し続けていることで知られています。本書では、彼らが信仰する「水の神」ノンモ(Nommo)を中心とした神話体系を解明し、ドゴン族の口承文化に根ざした宇宙の起源、生命の循環、天体の運行に関する思想を紐解いています。

特に驚くべき点は、ドゴン族の宇宙論が、近代科学による天文学の知識と驚くほど一致していることです。彼らは、肉眼では確認できない「シリウスB」という恒星の存在を知っており、この事実が民族学・考古学・オカルト研究の分野で長年の議論を巻き起こしました。

本書は、単なる民俗学の研究書にとどまらず、神話・宇宙論・宗教・人類の起源に関する壮大な考察を含む、知的探求の書でもあります。

要約

本書は、ドゴン族の神話を通じて、彼らがどのように世界を理解し、宇宙と人間の関係を考えているのかを解明します。

その中心にあるのが、「水の神」ノンモ(Nommo) です。ノンモは、ドゴン族の創造神話において重要な存在であり、生命の起源、知識の伝達者、そして宇宙の秩序を司る神とされています。

本書の主なテーマは以下の通りです。
1. ドゴン族の宇宙論と神話の構造
2. ノンモと水の神話が象徴する生命の起源
3. ドゴン族が持つ驚異的な天文学的知識(シリウスBの存在)
4. 神話と科学の交差点—宇宙論の普遍性
5. ドゴン族の社会構造と儀式、宗教観

これらのテーマを通じて、人類が持つ「知の伝達」の本質とは何か? 宇宙とのつながりはどこにあるのか? という深遠な問いが浮かび上がります。

ポイント

1. ドゴン族の宇宙論と神話の構造
• ドゴン族は、宇宙が「生命を持つ存在」として生まれたと考えている。
• 宇宙の創造は、原初の神アマ(Amma)によって行われ、そこからノンモが誕生した。
• ノンモは、最初に「水」として生まれ、生命の源となる。
• この宇宙観は、多くの神話(例:シュメール神話、エジプト神話)の「原初の水」と類似しており、世界各地の神話と共通する普遍的な要素が見られる。

2. ノンモと水の神話が象徴する生命の起源
• ノンモは、「水の存在として地球に降り立ち、世界を創造し、生命をもたらした」とされる。
• 彼らの信仰では、ノンモは「神の使者」として、天から知識を持ってきた存在でもある。
• これは、古代の宇宙人説や異星文明との関連性を指摘する人々にも注目されている。

3. ドゴン族の驚異的な天文学的知識(シリウスBの存在)
• ドゴン族は、シリウス(ソグ・トロ)を最も重要な星とし、その伴星である「シリウスB(ソグ・ポロ)」の存在を知っていた
• シリウスBは、科学的には20世紀になって初めて確認されたが、ドゴン族は古くからその存在を語り継いでいた。
• 彼らは、シリウスBが「非常に重い星」であること、楕円軌道を描くことまで知っていたとされる。
• この知識がどのように伝えられたのかについては、科学的・神話的な議論が続いている。

4. 神話と科学の交差点—宇宙論の普遍性
• ドゴン族の神話は、科学と一致する部分が多いことから、「神話とは、失われた科学の記録なのではないか?」 という議論を生んでいる。
• 例えば、
• 宇宙の誕生 → ビッグバン理論との類似
• ノンモの降臨 → 古代宇宙飛行士説(異星人の訪問)との関連性
• 生命の起源を「水」とする考え → 生物進化の科学的事実と一致
• こうした要素が、神話と科学の境界を曖昧にし、知識の伝承の本質を問う議論へとつながっている。

5. ドゴン族の社会構造と儀式、宗教観
• ドゴン族は、宇宙観と密接に結びついた社会制度を持っている。
• 彼らの儀式や祭りは、天体の運行に基づいて決定される。
• 例として、「シギ祭(60年に1度行われる儀式)」は、シリウスの軌道周期と関係している。
• これらの信仰や儀式が、彼らの社会秩序や道徳観を形成する要素となっている。

まとめ

『水の神』は、西アフリカのドゴン族の神話と宇宙論を通じて、人類の知識の伝承、神話と科学の関係、生命の起源を探る画期的な民族学書です。

本書の主要なポイントは以下の通り:
1. ドゴン族の神話には、宇宙の創造と生命の起源に関する独自の視点がある。
2. 水の神ノンモは、生命と知識の象徴であり、宇宙の秩序を司る存在として崇拝されている。
3. ドゴン族の天文学的知識(シリウスBの存在など)は、科学的に説明が難しく、神話と科学の交差点として議論されている。
4. 彼らの社会構造や宗教儀式は、宇宙の秩序と密接に結びついている。

本書は、民族学、神話学、宇宙論に興味がある人にとって、人類の知のルーツを探る手がかりとなる刺激的な一冊です。

「神話は単なる物語なのか、それとも失われた知識の断片なのか?」
本書は、その問いを読者に投げかけます。

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