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【DeLLphi-301】肺癌はどんどん新たな免疫治療が承認されています

2024年12月、日本で タルラタマブ が小細胞肺癌(SCLC)の治療薬として承認されました。タルラタマブは二重特異性T細胞誘導(BiTE)作用を持つ抗体製剤であり、これまでの肺癌治療薬とは全く異なる作用機序を持つ免疫療法です。治療選択肢が非常に限られている小細胞肺癌において、今後中心的な治療薬としての役割が期待されています。

本記事では、その作用機序と臨床試験のエビデンスについて解説します。

ちなみに呼吸器内科医はみんな「タルラ」と呼んでます。

二重特異性T細胞誘導(BiTE)とは?

BiTE(Bispecific T-cell Engager Immunotherapy)とは、患者自身のT細胞をがん細胞に結合させることで抗がん作用を発揮する免疫療法です。タルラタマブは、小細胞肺癌に高発現する DLL3(delta-like ligand 3) とT細胞の CD3 に同時に結合し、リンクを形成してT細胞によるがん細胞の溶解を引き起こします。

DLL3は正常細胞の表面にはほとんど発現しない一方、小細胞肺癌の約85〜95%において高発現しています。そのため、DLL3が治療のターゲットとなるのです。

小細胞肺癌の標準治療(2025年現在)

現在、小細胞肺癌の extensive-stage(進展型) に対する一次治療では、カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ または デュルバルマブ を用いたプラチナベースの治療が標準的です。しかし、治療後すぐに腫瘍が再発・進行するケースが多いのが課題です。

二次治療以降の選択肢は限られており、過去20年間でほとんど進展がありません。今回承認されたタルラタマブは、一次治療後に増悪した患者を対象にした 二次治療 として使用可能です。

DeLLphi-301試験 (NEJM 2023)

今回の承認に至ったpivotal trialが、DeLLphi-301試験です。

Part 3(34症例)は投与後モニター期間短縮した安全性確認

解析方法

今回のメイン解析は、用量選択の中間解析で決定されたタルラタマブ10 mg群 (n=100) の奏効率です。過去の文献からヒストリカルコントロールとして奏効率を15%と仮定し、今回の奏効率の97.5%信頼下限が15%を上回ることを検証するため、検出力92%となる100例を目標症例数としました。つまり、片側検定におけるαエラーは2.5%に設定されています。本文では、用量選択のため中間解析を予定しているため、αエラーを2.5%とした理由が説明されています。このように、中間解析が1回のみの場合には、Bonferroni補正に基づいて単純にαエラーを2で割る方法がよく使われるみたいです。

結果

安全性(10 mg群)
主な有害事象

  • サイトカイン放出症候群(CRS): 51%

  • 食欲減退: 29%

  • 発熱: 35%

  • 便秘: 27%

  • 貧血: 26%


重篤な有害事象(グレード3以上)

  • 全体のグレード3以上の有害事象: 59%

  • 治療関連のグレード3以上の有害事象: 26%


有害事象による治療変更

  • 投与中断、減量、または両方: 13%

  • 治療中止: 3%


致死的な有害事象

  • 1名(1%) が呼吸不全により死亡。この事象は治療に関連すると評価されました。


まとめ
3次治療以降でOS 14.3か月は驚異的ですね。初回治療のCASPIAN試験のOSが12.9か月ですからね。気になる副作用ですが、サイトカイン放出症候群が特徴的です。半分くらいで起きますがほとんどがgrade 1-2ですので、比較的安全に使用できそうです。


その他の進行中の試験

DeLLphi-303:
Phase 1b, 初回治療 プラチナ+エトポシド+PD-L1後、維持治療として
タルラタマブ+アテゾリズマブ or デュバルマブ 

DeLLphi-304: 
Phase 3, 初回治療 プラチナベース治療後増悪
タルラタマブ単剤 vs 標準治療(ルルビネクテジン or トポテカン or アムルビシン)

DeLLphi-305:
Phase 3, 初回治療としてプラチナ+エトポシド+デュルバルマブ後
タルタラマブ+デュルバルマブ vs デュルバルマブ単剤

DeLLphi-306:
Phase 3, LD-SCLC化学放射線療法後、維持治療として
タルタラマブ vs プラセボ


まとめ

タルラタマブは、二次治療以降の選択肢が乏しい小細胞肺癌に対して、新たな治療の扉を開く可能性を秘めた画期的な薬剤です。今後の臨床試験結果も大いに注目です。

2025/1/25


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米国で奮闘する医者の日常
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