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臨床医が知っておきたい「PESTEL分析」:外部環境を見渡すヒント

日々の臨床、教育、研究に追われて、「世の中の変化」まで気が回らないこと、ありませんか?
でも、その外部環境の変化にいち早く気づくことが、患者さんにより良い医療を届けるための大きな鍵になるんです。

そんなときに役立つのが PESTEL分析。外部環境を「政治」「経済」「社会」「技術」「環境」「法的要因」の6つに分けて整理し、リスクやチャンスを見つけるフレームワークです。


PESTEL分析とは?

PESTEL分析は、 外部環境を整理して判断材料を得るためのフレームワーク です。「Political(政治)、Economic(経済)、Social(社会)、Technological(技術)、Environmental(環境)、Legal(法的)」という6つの要因を分析します。特に教育病院では、自分の専門以外の外部環境を考える機会が少ないため、このフレームワークを使うと 見えていなかったリスクやチャンス に気づけます。そして最終的には、より良い患者ケアに繋がるのです。

PESTEL分析の6つの要素と活用法

1. Political(政治的要因):政策は医療にどう影響している?

  • 何を考える?
    政府の医療政策、補助金制度、診療報酬の改定など。

  • どう活用する?

    • 新しい政策(例: 診療報酬の変更)を把握し、診療体制を調整する。

    • 助成金や研究資金を申請する際の材料にする。

  • 例:より社会的ニーズの高い診療・研究に注力。


2. Economic(経済的要因):財務上の制約やチャンスは?

  • 何を考える?
    病院の財務状況や、新しい医療機器や研究予算の費用対効果。

  • どう活用する?

    • 医療機器の導入や新しい治療法に対する投資計画を立てる。

    • 市民向けセミナーやオンライン教育を提供し、病院の専門性や地域への貢献を発信し、地域住民の信頼と支持を得る。

  • 例: 健康教育プログラムやオンラインコンテンツを提供することで、住民の予防医療や健康管理への意識を高める。同時に、こうした活動を通じて病院の認知度を向上させ、新たな患者層を取り込むことで、長期的な収益基盤の強化を図る。


3. Social(社会的要因):社会の動向が患者ケアにどう影響する?

  • 何を考える?
    独居高齢者や外国人患者の増加、SNSなど情報入手手段の変化。

  • どう活用する?

    • 地域のニーズに合わせた診療科の強化や多言語対応を導入する。

    • SNSを活用して、患者さんに予防医療や病院の情報を発信する。

  • 例: 呼吸器疾患予防のミニ動画をSNSで配信し、幅広い世代に健康情報を届ける。


4. Technological(技術的要因):活用できる新しい技術は?

  • 何を考える?
    AI、ロボット手術、遠隔医療などの新技術。

  • どう活用する?

    • 新しい技術を診療や教育に導入し、診療の質を向上させる。

    • 新技術を活用した研究で外部資金を確保する。

  • 例: 遠隔医療を活用し、過疎地域の患者さんに専門医の診療を提供する。


5. Environmental(環境的要因):環境が健康にどう影響している?

  • 何を考える?
    気候変動や環境汚染が健康に与える影響。

  • どう活用する?

    • 環境要因に基づいた予防プログラムを地域住民に提供する。

    • 自然災害時の対応能力を強化する。

  • 例: 加湿器の使い方ガイドを配布する。特に超音波加湿器は適切に清掃・管理しないと、細菌やカビの増殖による健康リスクが懸念される。


6. Legal(法的要因):どんな規制や法的リスクに注意すべき?

  • 何を考える?
    医療規制、患者データのプライバシー、医療訴訟リスク、そして今後進むであろうマイナンバー制度の活用や、ビッグデータを用いた臨床研究の法的課題。

  • どう活用する?

    • 安全な医療情報共有の仕組みを構築。

    • 倫理委員会の承認や匿名化を徹底し、データの安全管理を強化。

  • 例: 個人情報の安全管理を徹底した、AIを活用した個別化医療や予防医療の研究を推進。


SWOT分析との違い

戦略を立てる際に役立つもう一つのフレームワークが SWOT分析 です。SWOT分析は、内部環境(強みと弱み) を含めた全体的な分析を行います。一方で、PESTEL分析は外部環境に特化しており、将来のリスクやチャンスを把握するのに向いています。


PESTELで外部環境を味方に!臨床医が取り残されないために

PESTEL分析を活用することで、外部環境を見据えた戦略を立てることができます。たとえ診療室の中に閉じこもりがちでも、外の変化に目を向けることで、患者さんにとって最善の医療を提供するための道筋が見えてくるはずです。

ぜひ、PESTELを試してみてください!

2025/1/23


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米国で奮闘する医者の日常
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