出撃したよ!残念四天王!
山ちゃんが3連勝した。第5回Abemaトーナメントでのこと。
あんなに浮かれた顔の人を見たことがない。
チーム自体は3-5で負けた。
それまでのあらすじは、世代最強として将来を嘱望されていた山ちゃんが、40歳になりました。彼の人の現在地は最強たりえず今もって永遠の若手棋士といった様相。そんな山ちゃんが、似た境遇の仲間二人を集めました。目標は「メンバー各人が1勝すること」。「それじゃチームは負けちゃうよ」と集めた仲間二人からツッコミが入りました、というところ。
本トーナメントはリーダー+ドラフト指名2人でチームを組み、3対3で行う団体戦。ガチで勝ちに行くにはリーダーがドラフトで強い棋士を上から順に選んでいくのが正解。しかしリーダー山ちゃんが組んだチームは、自分に似た「期待の程には勝てていない」でも「決して弱くはない」、残念四天王の集結というもので、好事家は色めき立ち、界隈は大いに沸いたのだった。
残念四天王という言葉自体は、ついこの前、ちょっと触れずらい一身上の理由で引退したハッシーという棋士が提唱したものだ。自身と山ちゃんに、あと2人、あっくん八段とまっつん八段を加えて、四天王。期待された割には結果が出せていない残念な人が4人いると、将棋解説の場で披露された。まあ、いわゆるネタでありますな。ちょっとブラックな。
今回チームとなった、ハッシーを除く残念四天王の集結は、隙あらば自虐という山ちゃんにしかできない芸当であり、かつ、ハッシーの引退はちょっと触りづらいところがある繊細な話題なので、山ちゃんの踏み込みの深さが際だつ。残念を理由に招集された2人、あっくん八段とまっつん八段も、よく怒らなかったものだ。もっともこの2人も、山ちゃんがチーム名を「残念3兄弟にしよう」と言ったところ(頭おかしい)、「それはやめてくれ」と答えたようだ。もっともなことだと思う。ハッシー元気かなあ。
そんな残念3兄弟(実際のチーム名は「厄払い」)の予選初戦の結果が、山ちゃん3連勝。
あっくんが0勝3敗。
まっつんが0勝2敗。
というもの。
チームはトータル3-5で敗戦。
「ね?1勝するの難しいでしょ?」
山ちゃんのそんな声が聞こえてきそうである。メンバー各人の1勝をチーム目標に設定した山ちゃんだった。そもそも山ちゃん自身が、このトーナメントで、1勝を上げるまでに6連敗を喫している。山ちゃんは第1回に優勝候補として参加して4連敗。第2回はお休みで第3回も2連敗スタート、これで6連敗。次に1勝を上げてからは巻き返して、当トーナメント開幕前までに8勝10敗と戦えている数字に戻したのだが、今回予選の3連勝スタートは、それは、もう、望外だろう。それは、もう、本当に、うれしかろう。ていうか2連勝の勝利者インタビューの時点で仕上がっていた。あんな浮かれた顔の人を見たことがない。
3対3の団体戦のレギュレーションは、最大9局5本先取で、1人3局まで出場可能というもの。山ちゃんは第7局目で3勝目を上げた。出番はこれでおしまい。あっくん八段とまっつん八段は共に0勝2敗で、山ちゃんの3勝目は星取りのトータルを2-4から3-4に押し戻したという勝利だ。とはいえチームは引き続き負けの許されないのカド番。山ちゃんは次の第8局目に、尻込みしているであろうあっくんとまっつん(共に未勝利)の心中をおもんばかって、ホクホク顔で悪いことを言った。
「かなりのプレッシャーだと思うんで楽しみですね。次どっちが(第8局目に)いくって言いだすか、それが楽しみでしょうがないです」
はしゃぎすぎー、これ後から言ったことを後悔するやつー、と思ったけど、気持ちは大変よくわかる。3連勝、よかったね。山ちゃん。