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【Y.S.C.C.】若桜に教えられた「チャレンジ」と「積極性」~J3 第9節 vs セレッソ大阪U-23 (2020.08.08)~

 はいはいはいはい。

 さて、レビューに先立ち、まずは先週のnote以降、Twitter上でいろいろとお騒がせしてすいませんでした。うるさくてうるさくて震えていた方もいらっしゃると思いますので、お詫び申し上げます。

 そしてもう一点。

 セレッソ、アンダーにも普通にいい選手多い。あの若い集団でどうしてJリーグの舞台で物怖じせず堂々と戦えるのか、そもそもなんでトップにいるべき選手がアンダーにゴロゴロいるのか、本当に恐ろしい。

 清武も柿谷もブルーノ・メンデスも西川もいなくて安心していた自分が恥ずかしいです。アンダーでもこんなにいいチームだったとは。

 さて、レビューに入りますかね。

※編集の都合上、以下セレッソ大阪U-23を「セレッソ大阪」と表記します。またトップチームに言及する際には「トップチーム」または「トップ」と表記します。

【明治安田生命J3リーグ 第9節 セレッソ大阪U-23 vs Y.S.C.C.】
セレッソ大阪 0 - 0 Y.S.C.C.
得点経過
なし


スターティングメンバ―(Y.S.C.C.のみ)
GK 16 佐川 亮介
DF 9 大泉 和也
DF 3 宗近 慧
DF 26 植村 友哉
DF 25 西山 峻太
MF 4 土館 賢人
MF 7 宮尾 孝一
MF 6 佐藤 祐太
MF 10 柳 雄太郎
FW 18 音泉 翔眞
FW 11 宮本 拓弥

SUB
GK 31 谷 俊勲
DF 17 吉野 裕太郎
DF 22 尾身 俊哉
MF 19 和田 幹大
MF 8 吉田 明生
FW 15 ピーダーセン 世穏
FW 28 オニエ オゴチュクウ

選手交代(Y.S.C.C.のみ)
HT
MF 10 柳 雄太郎MF 8 吉田 明生
HT
DF 26 植村 友哉MF 19 和田 幹大
66分
DF 25 西山 峻太FW 28 オニエ オゴチュクウ
66分
DF 9 大泉 和也DF 22 尾身 俊哉
74分
FW 18 音泉 翔眞FW 15 ピーダーセン 世穏

 今度は和也がDFですか。そうですか、なんかもうここまでくると楽しくなってくるな。前節からの変更は船橋に代えて音泉が入っているくらいですが、配置をちょっといじってます。そして負傷離脱中の大内に代わって佐川が引き続き2試合連続でゴールマウスを守ります。大内くん大丈夫かな。それにしても毎試合毎試合こうやって面白い仕掛けをしてくるのはもう慣れましたけど、今日はDFが4枚だから4バックか?なんて淡い期待をしちゃいましたね。

 しかしまあそんなはずもなく、スタートのフォーメーションはいつも通りに3-4-2-1。そうですよね。というかそろそろ去年みたいに選手がバンバン入れ替わって、試合中にフォーメーションを何度も変える20面相サッカーを本格的に見せてほしい。今シーズンは臨機応変に変化させてるというよりも、試合中に中途半端にバタバタとフォーメーションをいじってるだけの試合が目立ってますしね。
 並びは、右から大泉-宗近-植村の3バックに、中盤が音泉-土館-宮尾-西山。シャドーに柳と佐藤が入り、1トップは宮本。最終ラインにFW入れるの好きだなシュタルフさん。対するセレッソは4-4-2で、当然ながら全体的に若い選手が多くて勢いや爆発力もあるし、テクニックもあっていつトップチームに召喚されてもおかしくない選手が結構いますよね。というかなんか気づいたら監督代わってて驚きましたよ。何でですかね?成績とかって求められてるようには感じないんで、驚きです。ところで両サイドが高校生なんですけど、しかも岡澤って高2だよね?

 しかも一番驚きなのは、この試合の主審がプロフェッショナルレフェリーの松尾一。J1で吹いてる人が何でJ3で!?という驚きもありましたが、松尾さんもシーズン再開後初の主審業務で不慣れな部分もあるだろうし、何よりもいつものJ3の試合とはジャッジの基準が違うだろうなという予感もしました。

 さて試合が始まってみると、あれ?意外にもロングボール合戦。とりあえず前線の選手めがけて蹴っ飛ばしてる。

 もっと繋いでボールを保持して序盤は様子を窺うかと思ってましたが、そんな気配もなくひたすら前線に放り込んでチャンスを積極的に作り出そうとしていきます。特にセレッソ、ロングボールで両サイドにいいボールを展開し、高校生2人を積極的に走らせてチャンスを創りにかかってきます。若いっていいね。

 本気で若者のフルスロットルのエンジンを見せつけられたシーンが6分。中盤で奪われてそのままペナルティーエリアに持っていかれてシュートまで完結されましたが、これは佐川がナイスセーブで阻止します。

 触発されるようにして数十秒後、今度はやや低めのクロスに祐太が果敢にダイビングヘッドで合わせる!も、これはGKアン・ジュンスにキャッチされます。んー、それでも早い時間帯でいい形は1つ作れたからOKでしょう。

 ここから一気に局面の展開が速い攻防戦がスタートしました。自陣に入られたら敵陣に入り返し、撃たれたら撃ち返す。まさにこれの繰り返しで、Y.S.C.C.もセレッソも互いに相手のペナルティーエリア付近まで一気にボールを進める展開が続きます。

 それにしても守備はしっかり出足良くプレスに行くY.S.C.C.と、全体的にかなり若いセレッソ、局面ごとにどちらもハードなぶつかり合いを見せ、速い展開の中でも両者の強い気持ちと強靭なフィジカルバトルを繰り広げていますが、やや判定に納得がいかない部分もあるんでしょう。笛が鳴って試合が止まるたび、どちらの選手もやや不満げな表情を見せたり、松尾さんに抗議するシーンが散見されるようになってきました。正直、いつものJ3の基準に慣れきっていると、こうして主戦場のカテゴリーが異なる主審が当たった時に感覚が狂うんですよね。互いにその点では難しさともどかしさを感じながらプレーしていたのは間違いありません。

 そして一番驚いたのは、セレッソの両サイドの高校生2人、怖気づくことなく堂々とドリブルしてくるんですよね。Jリーグの舞台でこんなに脅威になる高校生がいるなんて。縦への突破なんか割と振り切られていたし、ペナルティーエリアへのカットインの仕掛けも普通に上手かった。最近の高校生ってこんなに技術がJリーグで通用する選手が簡単に出てくるんですね。J3とはいえプロの舞台で通用してるんだから普通に化け物だと思いますよ。こっちからすればただの悪夢でしかなかったですね。

 で、よく観てると分かったと思うんですけど、この前半で頻繁にフォーメーションが変わってるんですよね。キタ!これこそシュタルフサッカーの真骨頂!昨シーズンはこの試合中にポジションが頻繁に入れ替わったり、フォーメーションを臨機応変に変えるサッカーによって2桁勝利を挙げることができたんですが、今シーズンも戻ってまいりましたこの代名詞。相手からすれば迷惑極まりないでしょう、これだけ頻繁にマッチアップする相手が変われば、当然対面のマーカーも困惑するでしょうし、監督もそのたびに対策を練らなくてはならなくなりますしね。

 42分には佐藤の強烈なシュートがゴール左側に逸れていき、その直後にはセレッソの松本のミドルシュートが枠の右側に外れます。前半の終盤にピンチとチャンスを両方一気に迎えたこの試合は、3分のアディショナルタイムを経て前半終了のホイッスル。

 後半に向けて修正しないといけないのは、とにかく易々とドリブルされ、ペナルティーエリアにカットインされて引っかき回されている両サイド。とにかく音泉と峻太が付いていききれない状態を何度か作られているので、そこを改善しないことには相手の攻撃を封じ切りないでしょう。

 しかしそれにしてもセレッソのトップチームの層の分厚さと、そもそもアンダーのチーム内での競争の激しさ、そして幅広さを感じますね。普通にJ1でも通用しそうな選手がJ3のアンダーでレギュラー争いをし、そのライバルが高校生やルーキーの選手という光景、成績に関係なくてもチーム内の競争力が上がるのも頷けます。

 さて後半、ハーフタイムで2枚替えを敢行し、植村と柳を下げて和田と明生。正直柳はちょっといつもみたいな単独での仕掛けがあまり見られなかったんで、ここでアクセントをつけるためにも明生を入れるのは効果のあるカードだったと思います。

 後半、最初にチャンスを創り出したのはY.S.C.C.。祐太がバランスを崩しながらもペナルティーエリアにいいスルーパスを送ります。これは結局合わなかったものの、とにかく後半の早い時間帯に先手を取ってゲームを支配しようというチーム全体で共有された姿勢は見えました。

 まあ確かに後半も序盤からセレッソにはチャンスを創られるんですけど、前半よりはサイドの対応も徐々に慣れ始め、クロスが入ってもなぜかこの日最終ラインに入っている和也がクリアする場面もあり、どうして今までこんなに失点してたのかが世界7不思議レベルで謎ですよね。え?8試合で18失点してるって?意味わかんないでしょ。

 しかもこの日の和也、カウンターの場面で最終ラインから一気に左サイドを駆け上がり、拓弥のコーナーキック獲得につながるパスを供給する場面もありました。あ、和也これ新境地を開拓したっぽいぞ?

 前述の場面のように、チャンスシーンになったらフィニッシュで終わらせようという意識は前々節の福島戦くらいから見受けられるようになったんですけど、この試合では特にミドルシュートやエリア内での積極性を見せ続けていました。ただ残念なことに、最後の場面の精度があまりにも欠けすぎていたように思います。

 シュートまで持ち込む前に雑なプレーでみすみす相手のボールにしてしまったり、パスがズレたり、シュートが枠に飛ばなかったり・・・本当にもったいない。あれだけエリアに入れても、GKを脅かせたシーンはいくつあったんでしょうね。

 一番の決定機は、抜け出した明生のシュートが左ポストを直撃し、そのこぼれ球にフリーの拓弥が反応してシュートを撃ったもののブロックされ、そのこぼれ球に反応したシュートもまたブロックされてクリアされたシーンがありましたね。あのシーンは決めておかなければならない重要なシーンだったでしょうし、あれが決めきれない時点でこの試合の勝利などあり得なかったんでしょう。

 攻撃の手数を増やすために、峻太を下げてオニエを投入してからも、なかなか彼の持ち味である爆発的なドリブルを繰り出せなかったのは、ある種の誤算だったとは思います。オニエがドリブルするスペース、まあスペースというよりは直線状のラインですかね、それを常にセレッソの選手が遮って潰す、そして突破しても中へのコースを塞いでカットインをさせてもらえないことで、いつものような自由なプレーができていませんでした。オニエの特徴を分かったうえであの封じ方を考え、実際に実行するレベルの高さよ。

 いや、正直言うけどセレッソU-23のことを割と舐めてたかもしんないです。セレサポさんには申し訳ないですけど、「寄せ集めの即席チームだしなぁ」とか思ってたのほんとに人生6番目くらいの恥だと思ってます。はい。どこが寄せ集めなんだよこれ、寄せ集めどころかチームとしても個としても完璧に機能してるうえに勢いもあるとか怖すぎるだろ。

 終盤には和也を下げて尾身、音泉を下げてピーダーセンを立て続けに投入しましたが、正直尾身を入れた時点でシュタルフ監督の頭の中に勝ち点1を「最低限守りに行く」という発想があったんだと思いますが、これはこの試合に関して言えば実に正しかったと言えます。

 双方とも敵陣に入ることができ、最終局面まで持っていくことができる展開になっていましたが、それでもセレッソのほうがフィニッシュで終わらせるシーンが増えていたので、「いかにセレッソの攻撃をフィニッシュまで持ち込ませずに潰すか」で考えれば本職の尾身を投入して安定させることが先決だったと言えます。もっと言えばミドルでもペナルティーエリア内からでもシュートを撃たれる、そしてペナルティーエリアに一気に侵入される回数も増えてきていたので、下手すれば勝ち点1さえ失ってもおかしくない状況に持っていかれてたのも事実です。

 そのうえで82分には音泉を下げてピーダーセンを入れることで、「最低限の結果を守りながらも、タイプの異なるFWを投入し、攻撃にアクセントをつけて勝ち点3を狙いに行く」姿勢を出したのはよかったと思います。ある意味ピッチ上への明確なメッセージにもなったと思いますし。

 もっとも、結局は中盤での激しいぶつかり合い、潰し合いをしたあと、最終版は完全にセレッソに攻め立てられ、Y.S.C.C.側には攻撃に転じる余裕がそこまであったようには見えなかったので、ピーダーセンにとってはやや消化不良だったとは思いますが、采配自体にはなるほどなと感心させられました。

 ラストワンプレーでは思いっきり裏に抜け出されて決定機になり、佐川との1vs1になった場面もありましたが、本気で失点を覚悟した瞬間に佐川がファインセーブで阻止してくれて何とか勝ち点1を得ることはできました。

 正直、セレッソが想像をはるかに上回る強さだったことはもとより、積極的にチャレンジしてくるし、シュートを撃つことに何の躊躇もなかったことが想定外でした。これは監督交代の成果なのかもしれないですけど、とにかく西川潤がいないからそこまで強くないなんてことは一切なく、むしろ西川が競争から外れる(あくまで現状ではトップチームの一員として認められたという前提で話してますが)ことによってさらに競争を煽り、高校生の起用とウェリング・ピアスのベンチスタートによって誰にでもチャンスがある状態を示していることで、選手のモチベーションやチャレンジ精神、危機感を掻き立ててるんだろうなと感じました。もっと言えば西川がいないことで、チーム全体としてのレベルが1つ上がってるような気はします。

 ただはっきり言って競争力や監督のモチベーション管理に関しては、Y.S.C.C.も引けを取らない、いやJ3屈指ではないかと思ってますし、それが去年の12勝につながる最大の成果だったと確信してます。今日の試合中のシュタルフ監督にしても、セレッソの選手かと思うくらい活発に動き、声を上げ、鼓舞するだけでなく的確な指示も出していましたし、そういった面では決してどこのクラブにも負けない監督だと思います。

 90分間を通して自分の送り出した、あるいは適宜送り出すメンバーに対して忠実なフォローをする、選手たちのチャレンジやトライを褒める、試合中でもハーフタイムでも修正点を的確に指摘して修正する、その点ではシュタルフ悠紀リヒャルトの名がJリーグ屈指であることは間違いありません。

 さて、試合自体はスコアレスドロー。色々な見方があると思います。

 開幕戦以来のクリーンシートを褒めるべきでしょうか。それとも秋田戦から続けて2試合無得点に終わったことを嘆くべきでしょうか。

 決めるところで決めきれなかったことを憂うべきでしょうか。それとも最後までギリギリで死守しきった守備を讃えるべきでしょうか。

 可変のフォーメーションの「20面相サッカー」が本来の姿を取り戻したことに喜ぶべきでしょうか。それとも高校生や20歳に満たない選手たちに好き勝手やられたことを泣くべきでしょうか。

 いろんな考え方はあると思いますし、ポジティブな面もネガティブな面も大いにあったと思いますが、僕個人としては、正直、勝ち点3を獲りに行って1しか獲れなかった、2を失ったと言いたい試合ではありますが、それでも開幕戦以来のクリーンシートで終われたことは十分に評価できるとは思います。でも、だからそれで満足できるかって言われたら全くできない。無理。

 こういう試合で勝ち点を1から3にしていかないと、結局今までとやってることは変わらないですし、「去年のシーズン12勝を超える」という目標はまず達成できないと思います。

 苦しい展開でも粘り切れるのは好材料ですが、決めるべきところを決められないのは大きな課題です。開幕戦でもそうでしたし、秋田戦後にも言いましたが、「あと一歩」のその先へ踏み出すためにはまだまだ課題のほうが圧倒的に多いです。

 そして、「あと一歩」のその先に行くための答えは、ヤンマーのピッチに季節外れに咲き誇った若い桜の戦士たちが示してくれたと思います。

 次戦はホームでガンバ大阪U-23を迎えます。今日と同じわけにはいきません。相手は何といってもあの森下仁志監督率いる「チーム」ですから。

 セレッソは強かった。間違いないです。しかし、ガンバはその上を行く完成度とタレントを揃えています。去年パナスタで彼らに受けた仕打ちを思い出しましょう。去年の借りを倍にして返す、倍返しの精神で挑まなければ勝算はありません。

 少しずつ、いや劇的に守備が立て直されている成果は出ています。あとはこれに攻撃陣のやるべきことがしっかり成し遂げられれば、出遅れも一気に巻き返せるだけの、そして去年を大きく上回るような、そんなチームになると確信しています。

 前半戦も半分が終わりました。9試合で2勝2分5敗。11得点18失点。さて、ここからどう打開して少なくともあと11勝するのかが楽しみです。


Thank you for your support! 是非このnoteを楽しんでいただけると嬉しいです、