目に見えないものの価値をどう評価するか~「Jクラブスポンサーマッチングプロジェクト」の目指す形~
こんにちは。いやこんばんはですかね?Y.S.C.C.の試合もないのに更新するのをそろそろキモがられる頃かと思いますが、まあそう言わずに。
まだまだコロナ禍でJリーグも苦しい状況が続いており、Jリーグのクラブ関係者のコロナ感染や観客のガイドライン違反や解釈に対する相違などもあり、再開こそしたもののなかなか思うようにいかない現状に関係者の方々もやきもきしていることでしょう。心中お察しします。
何よりも観客数の制限によるフラストレーションはサポーターだけではなく、クラブにも大きくのしかかっているのではないかと思います。特に興行収入の観点でいえば、この状況下でも損失を最小限に抑えることができるクラブは、普段から観客数の少ないクラブくらいでしょう。
さて、今出てきたのは「興行収入」の話だけですが、それ以外にもJリーグのクラブにとっては大きな収入源がありますね。
スポンサーからの収入です。
昨今の時世により、Jリーグのクラブ以上に苦しんでいるのがスポンサーの企業ではないでしょうか。あらゆる業種の企業があれど、このコロナ禍による大打撃を免れることができた会社はそう多くはありません。撤退やスポンサー料の減額など具体的な動きを見せ始めた会社も多いようです。
しかしそれでもスポンサー収入がなければ資金がショートし、破産に追い込まれるクラブが続出する可能性は十分にあり得ます。
そこで今回、デュアルキャリア、HALF TIME、そしてマネーフォワードの3社が共同で、『Jクラブ スポンサーマッチングプロジェクト』という企画が立ち上げました。
さて、企画について触れる前に、まずはこの企画を共同で運営している3社について少し触れてみましょうか。
デュアルキャリア
デジタルマネージメント事業を展開している会社で、2019年設立。本社は渋谷スクランブルスクエア内。社長は元ガンバ大阪の嵜本晋輔氏、アンバサダーには元川崎フロンターレの井川祐輔氏。
「プレイヤーだけがアスリートではない」というモットーの元、YouTubeやライブ配信アプリ・SNSを通じて、アスリートやスポーツに携わってきた人が「プレイヤー」という枠を超えた魅力や個性を伝えることをサポートする業務を展開しています。
実は「アスリート」のファンや支援者とのイベント運営、スポンサー紹介にも対応しており、さらには法律や会計関係も専門家のバックアップ体制もしっかり持ってるという実に珍しい会社。
HALF TIME
デジタルマネージメント事業を展開している会社で、2000年創業。本社は南青山。代表取締役は磯田裕介氏。
スポーツビジネスのプラットフォームサービスを提供することで、「スポーツを通して世界中の組織と個人に新たな価値を生み出し、『生きがい』のあふれる社会を実現する」をモットーに、「HALF TIMEマガジン」によるメディア事業、スポーツ組織のフロント人材の紹介や採用から一般企業のスポーツビジネス関連職の採用の代行、PR・ブランディング・SNSの支援、スポーツ組織と一般企業のスポンサーマッチングやスポーツコンテンツの活用の支援を行なっている会社。
かなり手広く様々な分野に進出してますが、スポーツ組織の支援やスポーツに関する発信がこの会社の業務内容です。
マネーフォワード
インターネットサービスの開発を行なっている会社で、2012年設立。東京・芝浦の本社のほか、全国に7つの支社と11のグループ会社を持つ一大企業。社長CEOは辻庸介氏。
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をモットーに、事業者向けにバックオフィスのクラウドサービスなどを提供することで、「MISSION(社会への使命)」「VISION(Missionを達成するために目指すべき未来)」「VALUE(社会に約束する行動指針)」の3本柱を満たすサービスの提供を行なっている会社。
金銭に関する多岐に渡る顧客支援サービスを展開していますが、金銭の「見える化」やクラウドの活用などを中心としており、さらにはビジネスにおけるオフィス業務の支援なども行なっています。
共通点。3社とも本社がガチの一等地。
いや、そういう話じゃなくて(笑)
この3社の共通点と、そしてそこから今回の『Jクラブ スポンサーマッチングプロジェクト』の主目的や内容をなんとなく理解された方も多いのではないでしょうか。
「参画クラブの魅力や価値を伝えながら、新たなスポンサー企業のJリーグ参画を支援し、参画クラブの資金ショートを防ぎながら、同時に未来に向けた長期的な支援方法を産み出す」ことです。
これは「アスリートの魅力を最大限に発信する企業」「スポーツ業務における人材発掘やPR・ブランディングを行なう企業」「組織の資金管理を支援する企業」、この3つがタッグを組んだからこそ実現する企画だと言えます。
早い話、今回参画するクラブにとっては「新たなスポンサーの獲得」や「資金調達」、スポンサーに名乗りを挙げる企業には「プロスポーツ(Jリーグ)業界への参画」と「メディア露出や宣伝効果の向上」という、「Win-Winの関係」が成り立つシステムなわけです。
今回の参画クラブは以下の27クラブ。
【J1】14クラブ
北海道コンサドーレ札幌
ベガルタ仙台
鹿島アントラーズ
FC東京
川崎フロンターレ
横浜F・マリノス
横浜FC
湘南ベルマーレ
清水エスパルス
ガンバ大阪
セレッソ大阪
ヴィッセル神戸
サガン鳥栖
大分トリニータ
【J2】7クラブ
モンテディオ山形
ザスパクサツ群馬
東京ヴェルディ
FC町田ゼルビア
ファジアーノ岡山
アビスパ福岡
FC琉球
【J3】6クラブ
福島ユナイテッドFC
Y.S.C.C.
SC相模原
AC長野パルセイロ
FC岐阜
ロアッソ熊本
Y.S.C.C.のみならずゼルビアも参画しているのが実に興味深いですね!
こうやって見ると、「どうしてこのクラブが参画してるの?」「どうしてあのクラブが参画してないの?」というクラブが多いんじゃないですかね。特にJ2やJ3のクラブがあまり参加していないことは気になるのではないかと思います。
その辺はクラブ各々の様々な事情や背景があるんだと思いますが、「どうしてこのクラブが参画してるの?」という点については、そのクラブが企業努力を怠っていないということを示せるからという理由があるのではないかと思います。企業として新規のスポンサーを獲得し、資金調達だけでなく宣伝効果も増加させることにより、資金面の充実とクラブのPRという企業としての勤めを果たすことにも繋がるからです。
「どうしてあのクラブが参画してないの?」については、そうですね、割と皆さんの意見を聞いてみたいところです。推測でもなんでもいいんで聞いてみたいですね。
ちなみにこのマッチング、いくらかかると思いますか?
なんと無料なんです!
驚きますよね。運営する会社側には何のメリットがあるのかと思う方も多いでしょう。
このプロジェクト、実は収益を目的としたものではないんです。そして、3社においてこのプロジェクトを通じた売上の計上は一切予定していないとのこと。
純粋にJリーグのため、クラブのため、そして参画する企業のための企画という点にはいちJサポとして感謝の念を禁じえません。
以下は、3社の代表による会談「プロジェクト指導の舞台裏」の記事です。これを読むとどんな背景でどんな考えがあってこの企画が立ち上げられたかがお分かりになると思います。
さて、肝心の企画の詳細についてです。
日程は以下のようになっています。
・スポンサー検討企業の公募(8月11日(火)~8月23日(日))
Jクラブのスポンサー参画を検討する企業が、特設Webサイト(後述)から申し込む。
・マッチング(8月24日(月)~8月28日(金))
公募内容を取りまとめ、各クラブとのマッチングを実施。双方のマッチングが成立した場合に商談へ進む。
・商談開始(8月31日(月)以降)
Jクラブから企業へ連絡し、商談スタート。
ちなみに企業については、事業規模に関わらず申込が可能となっています。
これが前述の企業が申し込みを行なう特設WEBサイトです。
ちなみに企業の応募フォームはこんな感じ。
ちなみにここで入力して送信することもできちゃいますので、是非是非ご活用いただければ。
色々記入する事項は多いように見えますが、実はそこまで大した量ではありません。このフォームに入力し、マッチングを希望することでエントリーは終了します。
あとはマッチングの段階でクラブ側と条件が合えば商談スタートという流れです。
この企画において、前述の対談の中にもあるように、「目に見えないものの価値をどう評価するか・してもらうか」にも注目すべきです。
サッカーって、選手は勿論人間ですから有形ですし、クラブは会社として有形です。例えば移籍においても「選手」という有形の目に見える、そして触れることができる実在の存在に対して移籍金が発生するわけですよね。
しかし、「サッカーの試合」は無形です。目に見えるとはいえ、触ることができるものではありません。それに対して「観戦チケット料金」を各クラブが課しているわけですが、食料品や映画鑑賞と一緒で、「一度消費したら後に残る有形物がない」ものですよね。
考えてみてください。外食をします。まあこの時世ではUber Eatsやテイクアウト、デリバリーサービスでしょうかね。それで店員の接客が悪かった、見た目が悪かった、味が悪かったとなると、あなたはまたその店を利用しようと思うでしょうか?その店に対して高評価のレビューを書くでしょうか?
同じことです。サッカーの魅力を知ってもらうにはやはり試合を観て満足してもらうしかないんです。
じゃあ何を観て満足するのか?何を観ればまた足を運んでもらうようになるのか?何を観ればお金を出してもらえるようになるのか?という話になるんですが、これは人それぞれ、スポンサーそれぞれの考えがあると思います。
勝つところが見たい。
内容が面白い。
注目する選手がいる。
あくまで一例になりますが、これらの理由に対してお金を出してもらうわけですよね。観戦料しかりスポンサー料しかり。ですが、どういう理由であれ、「今そこにあるサッカーを面白いと思えること」がなければ何も始まらないでしょう。
まさにここが重要です。そしてこれこそ、「目に見えないものの価値をどう評価するか・してもらうか」という課題の解決の糸口、最初の入り口だと思います。
そして、SNSの発展により、「いかにクラブが興味を持たれているか」が明確にわかるようになりました。これも大きな一因です。
発信力が低く、かつ大して興味を持たれていないクラブに対し、じゃあ投資をしようという企業や人が現れると思いますか?
これはクラブだけの問題ではなく、いかにサポーターも積極的にSNSなどでクラブのアピールをしていくか、関心を持っていることを示すかが極めて重要ではないかと思います。
積極的に発信し、積極的にハッシュタグを使ってアピールする。そして出来れば自分のクラブのスポンサーについても、クラブ名と一緒に発信していくと猶更効果は高いと思います。
以下、Jサポツイッタラーの間では有名人でもある今日のむいむいさんの「クラブ名とスポンサー名のツイートの効果」についてのツイートです。
お分かりいただけたでしょうか?
今回いったいどれくらいの企業が応募してくるかは未知数ですが、この企画がこの1回で終わるのではなく、継続的に行われるようなものになると更に効果は上がるのではないかと感じます。そしてこの企画を機に、各々のクラブがコロナ禍により、ライトな観客層からより一層金銭を掛ける価値があるかを厳しくみられるであろう中で、この課題に対してどう向き合うのかも注目したいですね。
そして何よりも、この企画に対してどう企業側が出てくるのかも、「目に見えないものの価値をどう評価するか・してもらうか」の1つのポイントになると思っています。どれだけの企業が今のJリーグに、クラブに価値を感じているかが見えることになりますし、それによって今後のJリーグの発展に向けた課題も浮かび上がってくるのではないかと思います。
この企画の最終結果がどのような形で発表されるのかは分かりませんが、参画する全てのクラブと企業に機会と結果が訪れることを強く、切に願っています。
※今回ツイートを転用させていただいた、今日のむいむいさんもnoteを書かれています。以下、代表的で伝説的な記事を宣伝させていただきますので、是非読んでいただきたく思います。