【きのう何食べた?】2次元でも17年も見てれば親戚レベル
よしながふみ先生の「きのう何食べた?」
ドラマ化も映画化もしたので、タイトルくらいは見聞きしたことがあるのではないだろうか?
詳しくは検索するなりなんなりしていただき、
とにかく23巻が…もう…涙腺崩壊兵器みたいだった…。
この作品は年1〜2ペースで新刊が出ており、今年で丸17年経った。
連載開始時は40代だったシロさん(主人公)が、23巻で還暦を迎えた。
おおよそ新刊が出るペースと、登場人物達が歳を重ねるペースが同じで、おおよそ読者側の加齢ペースとも合っている。(あくまでおおよそ)
17年。
シロさんと、パートナーのケンジに出会った時、私はまだ大学生だった。
今では私も中年の仲間入りで、そりゃシロさんも還暦を迎えるわけなんだよな、としみじみする。ケンジもロン毛気味だったんだよなぁ…。
ペースがちょうど盆暮れに会う親戚のようで、欠かさず年1回は近況を聞かせてもらっていた。
私は2人の近況を聞くのが楽しみで地元に帰るようなもので……。
……分かっている。
これは漫画の話で、この「共に歩いてきた感」は一方的なものだというのは分かっている。
でも、よしながふみ先生は心理描写がとんでもなく上手く、ハッ!とさせるセリフも、グッと引き込む「間」もどちらも使いこなせる。
そんな作家が17年も丹精込めて描いて来た登場人物達は、いわゆる「2次元キャラ」としてくくりたくないくらい「そこにいる」のだ。
銀座ウロウロしてたら、シロさんの職場の看板見つけられる気しかしないし、丸の内線に乗ってたら今日の夕飯メニュー考えてるシロさんに出会える気しかしない。
実はフィクションではなく、実在するゲイカップルのコミックエッセイで、よしなが先生が作画担当をしているだけなのではないかとさえ思えてくる。
もちろんそんなことは無く、フィクションですと明記してあるのだが。
職人さんが17年かけて掘った彫刻が、まるで生命を宿しているかのように見えるのと同じだと言えば少しはご理解いただけるだろうか。
ゆっくり、時の流れとともに読みたい作品なので、もしこれから読み始める方は、半年に1冊ペースぐらいで読んでほしい。
その半年の間に、あなたも家族や友人や恋人や職場の人と揉めたり気不味くなったりすることもあるだろう。
そんな時に、シロさんとケンジ、その周りにいる人達の話を聞くと、また「もう少しこの人のことを大切にしよう」って気持ちを思い出させてくれる。
盆暮れに会って、説教されてるわけじゃないのになんか毎年いつもハッとさせられて、いつまで経っても叔父さんにはかなわないなぁと思わされる。
続きが気になって仕方ないように作られる作品が多い中、1つくらいそんな付き合い方をさせてもらう作品があるのも悪くない。
しかも、だ。
小学生だった子が成人式を迎えるとか、そっちパターンで「親戚感」を覚えることはあっても、逆パターンの作品はなかなかない。
歳上の登場人物がずっと歳上でいてくれる作品のありがたみたるや…。
あなたにも親戚のような感覚を持つ作品はあるだろうか?
是非教えていただけたら嬉しい。
(ネタバレにならないようお話したが、許されるなら全ページに赤ペン先生ばりにここがこうでヤバいとか書いて語り合いたい)
それでは今日はこの辺で。
またねー!