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note師ぼす子より「書くこと」を仕事にしている人へ

はじめに、「note師」ってなんだと思われたかと思う。
私も分からん。
私はライター業などをやっているわけでもなく、「note」ってブログなのか?ということすらよく分かっていない。

ただ、私のnoteを読んでくれた方が、「最近よく読んでるnote師」と紹介してくれているのを見かけ、ご本人の了承を得て使わせていただくことにした。蟲師みたいで気に入ったのだ。蟲師読んだことないのに。

とりあえず、現在はライターでもないし、ブロガーでもない、ということだけお分かりいただけたらと思う。

あくまで、「現在は」だ。
昔は「WEBライター」を名乗り、色んな記事を書いた。
おかげで、今でも若干「ライター」という単語を見るだけで胸がムカムカしてくる。
その辺の話は自己紹介の結構下の方に書いてあるので、暇があったら御覧いただきたい。

さて、個人的な後悔は横に置いて、本題に入りたい。

ライターなりブロガーなりエッセイストなり、文章を書くお仕事をしている人の中には、自分の立ち位置を明確にして、そこを軸に書いている人も多い。

一口に「美容系ライター」といっても、デパコス中心の人とプチプラ中心の人、イエベさん向けとか色々いる。
「スポーツライター」さんが、「野球に関するコラム書きました」と言いつつ阪神を褒め称えるだけの記事を書いた場合、他球団のファンは「時間を無駄にした」と感じるだろう。

仕事としてやっていくなら、立ち位置を明確にした方が「お得意さん」はつきやすい。
こちらが「提供するもの」を明示してれば、買う買わない・読む読まないの判断がしやすいし、何より共感を得やすい。
「私もその新作買うか悩んでた!」
「俺もあの試合の采配は謎だったんだよ」
と、前のめりで話を聞いてくれる。

しかし、だ。
特にWEBライターは「アクセス数」が命なので、読む人を最初から限定してしまうタイトルや内容を避けることも少なくない。

「2024年秋『絶対保湿肌』をキープするスキンケア10選」
「2024年最新版『圧倒的タスクマネジメント力』を上げるツールTOP10」

とかにする。
「アラサー混合肌さん向け、MAX3000円までのスキンケア」みたいなタイトルの方が分かりやすく親切なのだが、アクセス数は前者タイプが圧倒的に勝つ。

幅広く呼び込みしておいて、一部の人にだけ適する内容にする。
タイトルの付け方はGoogleのアルゴリズムに従って、検索に引っ掛かりやすいようにする(だからみんな似たり寄ったりなタイトルと文章になる)。

戦法としては間違ってないが、個人的には過去の嫌な記憶と重なって吐き気がしてくる。

結果として、余計な情報を与えることで悩みを深くさせてしまったり、勘違いを生む書き方をしたせいで読者が誤解し、間違った判断へと誘導してしまう恐れがある。

決してディスるのが目的ではないと、前置きさせてほしいのだが、
「20代女性が喜ぶ誕生日プレゼントランキング」とか
「在宅で月20万以上稼げるおすすめの副業10選」とか
そんな記事を読んで参考にする人の何割が、「最終的には自己判断だ」と冷静に情報収集できるだろうか。
この世でたった一人の好きな女性を「20代女性」でひとくくりにして「そうか、こういうのが喜ばれるのか」と思い、最もらしいこと書いてある文章の下の「ネットショップはこちら!」みたいなボタンを押してしまう。
こうして、メルカリには4℃のアクセサリーが溢れかえるのだ。

確かに、何も調べないでクリスマスに「ピラニアの歯」とか渡してくる人よりは、自分の思い込みや価値観だけで判断せず「一般的意見」を確認しようとしただけその読者男性は誠意があるように思う。マジ困るからね、ピラニアの歯。

でもせっかく「一般的意見」を探しに来てくれた人に対し、さも「これが20代女性の総意です!」のように断言し、「副業やるならこれやらないなんて絶対勿体ない!」とかなり強めのプッシュをするライターは多い。
思い込みで判断しないでおこうとした人に、新たな思い込みを植え付けてしまって終わりの記事、あなたもどこかで見かけたことがないだろうか。

もちろん、あなたがそんな書き手だとは思わない。
だが、ライターとしての仕事を求める内に、気が付いたら…あれ…?みたいになってしまう人も少なくないのだ。

ライターの稼ぎは、正直そんなに高くない。最初の内なんてべらぼうに安いか、べらぼうな数を量産させられる。時給換算したらこれいくらだ…と泣きたくなる案件ばかりだ。

そんな中で高単価な案件が出ていれば、もう尻尾も振るし、服従のポーズもする。お手でもおかわりでもなんでも言ってくださいませの精神で仕事を貰いに行く。

高単価な案件は、つまりはその記事を作り上げることで「お金が入ってくるルート」が完成しているということだ。
その「ルート」がどんなものかは、運営している人によって実に多岐に渡る。
ただハッキリしているのは、ライター側にその「ルート」に口出しする権限などないということだ。
ライターは、「この入口から入って来た人」を「この出口へ誘導させよ」という指示に従うしかない。

「美容のことなど何もわからんゲート」から入ってきた人を、「このエステへ誘導せよ」
「WEBに詳しくないのにパソコンで副業したいと思ってるカモ」を「この怪しげな情報商材へ誘導せよ」
「10代の頃の夢を捨てきれない自称漫画家・小説家志望」に「まずこの『絶対売れる作家になる方法』をダウンロードさせよ」

そう指示されていたら、従うしかない。だって書かないと生活が出来ないから。
「家賃まであと1万足りないねん!」って時に、高単価案件が現れたら。
気が付けば「こんなモン、鵜呑みにする方が悪いんや」と開き直るかしなくなる。

どうか。どうか、昔の私のようにだけはならないでほしい。
「ルート」を作ったのは運営側でも、実際に誘導したのは自分だ。
「犯行計画」を作ったのは別の人でも、実行犯は自分だ。

その罪は、いつか必ず自分に返ってきて、そう簡単には消えない。
ネット社会化がばく進している今、どんなにもうネットを見たくないと思っていても完全に離れるのは難しい。
気晴らしにYouTubeを見ても、自分と似たようなことをしているYouTuberがわんさか出てくる。
自分の顔や声を出している分、文章だけのライターより説得力がありそうに見えて、余計にエグいことになっている。

どうか、そんな書き手にだけはならないでほしい。

古くから道端でバナナを叩き売りしている人達は「啖呵売」と言われ、一つの芸だとさえ見られていた。
彼らは、始めは品物を隠して客を呼び集めるなんてことはしない。
(「何が出てくるんだ?」とワクワクさせるのは、恐らくだが大道芸の分野だろう)
しかし、バナナの叩き売りは、最初から堂々と、どっからどう見てもただのバナナを並べている。
「つまんない物を見せつけて、さらにつまんない話を聞かせるなら、野次の一つでも飛ばしてやろう」と思って聞いてる客を、「やるじゃないか、そう上手くやられちまったらお手上げだ」と思わせてバナナを買ってもらう。
元はひと房100円ぐらいだと分かっていても、
「あい、毎度ありぃ!お代はしめて500両!」と言われりゃ500円出す。
客はバナナなんて欲しくなかったかもしれない。
まあ、あれば食べるだろうけど、買う予定はなかった。
それでも500円出すのは、その売り手の話術なりなんなりに、500円の価値を感じたからだ。

粋だ。売る方も買う方も粋で格好いい。

ライターも、元手はほぼゼロ円のものを売る。
そこにどんな価値や魅力を感じてお金を出してもらえるか。
それは正直お客さん次第だ。
ただ、あなたが気持ちを込めて書いた文章は、少なくともあなたを間違った道へは導かない。
そして、あなたが「あなたの思う真っ直ぐな道」に沿って文章を書いている限り、読んでくれている人も、間違った道へ導くことはない。

どうか、「読んでくれる人」から目を背けるような書き手にはならないで。
その目でしっかりと読者を見回して、
「さぁさぁ皆さん、お立会いィ!ここにあるのは、どっからどう見てもただの駄文。しかぁし、本当にただの駄文ならアタシもこんなとこで声を荒げたりしねぇ」
と明朗に、気持ちのいい声で書き始めてほしい。

最初は誰も足を止めてくれないし、1円にもならないだろう。
満足な結果が得られるまで10年とかかかるかもしれない。
でも、不本意なものを書いて、心を病んで10年過ごすよりはマシではなかろうか。

もしこれを読んで、あなたもバナナの叩き売りを始めたら、ぜひ教えてほしい。
(最初に足を止める客が私でいいのならだが)

あなたの気持ちのいい声が、どこかから響いて来るのを心から願っている。


おっと、兄さん姐さん、ここまで聞いてって、はいサイナラはつれねぇじゃねぇの。何?バナナはいらない?これからお出かけ?
よっしゃ、それならそこんとこにあるハァトボタンってのを一つ、ポンッとしてっておくれ。

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五所川原ぼす子
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