#921 漫画論71|クニミツの政
前回、政治漫画の「加治隆介の議」を紹介しましたが、今回も政治漫画特集という感じで、本日は週刊少年マガジンで連載されていた「クニミツの政」を紹介したいと思います。
クニミツの政とは?
元々「サイコメトラーEIJI」のサイレント・ボマー編に出てきた蕎麦屋の息子・武藤国光が、幼なじみの爆破魔のサイレント・ボマーの犯行を止めるべく、国会議事堂で演説したのを契機に政治の世界に目覚めるというストーリーです。
準主役のトオルの父親が政治家の牧原大臣だったので、そのカバン持ち見習い補佐みたいな感じでサイドストーリーで活躍(キャサリン編は名作)しまくり、その勢いでスピンオフの主役にまでのし上がったんですね。
連載化に伴い、舞台を変えて東京近郊の「新千葉ヶ埼市」という架空の都市(小田原市がイメージらしい)で、牧原大臣に「来る市長選に出ようとする坂上竜馬先生の所で修行してこい」という命を受け、市長選挙に挑む坂上先生の第二秘書として奮闘するストーリーです。
国光は中学中退で学も無く、常識もマナーも無いんですが正義感は強く、「ニッポンを変える」というポリシーで修行し、徐々にマナーや政治について学んでいき、その発想力や行動力、説得力、そして天性の人を惹きつける魅力などを評価され、徐々に坂上先生の力になっていき、市長選のライバルの不破さんからは下記の様に評されます。
未だに日本史上最高の総理大臣との呼び声も高い、田中角栄を彷彿とさせる逸材であると評価されるんですね。凄い事です。
ちなみに言うまでもなく日本史上最低の総理大臣は「宇野宗助」「鳩山由紀夫」「菅直人」のいずれかですが、最近このBIG3にハンパない勢いで迫りつつある第4の男が・・・
クニミツの政の魅力
1. 政治を身近に体験できる
「政治漫画」って結構ハードルが高く感じてしまうのですが、
分かりやすいキャラクター設定に加えて、まずは「高校の生徒会長の選挙」から始まる辺りで、非常に親しみやすく入ることができます。
マガジンの黄金時代を築いたキバヤシさんが原作なだけあって、この辺は流石ですね。
この漫画をきっかけに政治に興味を持った人は多いかなと思っています。
2. 世の中の仕組みを学ぶことができる
基本的には政治漫画なんですが、有権者の「声」を叶えるために、色々な市井の人達の話を聞いたりするんです。
時としてトラブルに巻き込まれたりもするんですが、かなり実生活でも役立つ多くの知識を学ぶことができますね。
宗教問題、教育問題、農業問題、医療問題、そして政治家の汚職など・・・かなり勉強になります。
公職選挙法についても学べるので、今回の兵庫県知事選の前にも各候補者の皆さんに読んでおいて欲しかったですし、今いる政治家も全員読んだ方がいいかもしれませんね笑
3. エンタメに昇華できている
そんな小難しい内容でありながら、しっかりとエンタメとして楽しめる内容になっているのが流石です。
個人的にはサイコメトラーEIJIの方が好きではありますが、この漫画も相当面白いと思っておりますし、以前に少年マガジンの漫画BEST20を紹介した時には紹介したい漫画が多かったが故に、サイコメトラーEIJIと「併せ技一本」的な感じで圏外にしましたが、もちろん単独でもBEST5に入るくらい好きですね。
言うまでもなく「脳みそプルン」とか「しばいたれタカ」より上です笑
クニミツの政 好きなキャラクターBEST10
10位 宇治村
宇治村は現役の国会議員(衆議院議員)なんですけど、元々は新千葉ヶ埼市の市長でした。坂上竜馬の父の「坂上竜太郎」の第一秘書として活躍し、竜太郎先生が無くなった後に市長になったのですが、どんどんダメ市長になってしまい、最近でいう相生市長とか岸和田市長みたいな感じで、とにかくダメ市長になってしまいました。
その後は国政に進出し、子飼いの五木田を公認の市長にして、もっと新千葉ヶ埼がダメになったという感じで、とにかく諸悪の根源だったりします。
最終的には真人間になるんですが、作品を盛り上げる良いヒールでしたね。
9位 坂上明日香
坂上竜馬先生の娘であり、高校2年生にしては幼いロリ高校生ですが、非常に芯がしっかりしているネーちゃんです。
国光が迷走したり、暴走したり、悩んだりした時に、しっかりとストッパーになれたり、道を示したりできる貴重な存在ですね。
耳年増という設定が和ませたりしますね笑
8位 桃奴
桃奴ちゃんは夜は料亭で働き、その後は暴走族のレディースの頭として暴走し、昼間は仕出し弁当屋で働き、1児の娘を育てるというとにかく忙しいシングルマザーです。
仕事で忙しく子供を見る暇が無いので、暴走族の後輩が子供の面倒を見てくれているが故に、夜の蝶になるしかないという分かるような、分からないような感じなのですが・・・笑
そんな環境下でも娘は非常に真っ直ぐに育ち、最終的にハッピーエンドになったのは嬉しかったですね。
7位 猿渡第一秘書
猿渡さんは前作EIJIの「みっちゃん」を彷彿とさせる作中のコメディリリーフですね。
問題を起こしても自分で解決できる国光と違い、問題を起こして坂上陣営に迷惑をかけてしまうようなどうしょうもない存在で、伊地知にも、コーメイにも、小学生の晋作にすらもバカにされていたりするんですが、それでも真面目一直線で坂上先生をリスペクトしており、愛すべきキャラクターですね。
こういうキャラクターがいてチームが締まっている感じが非常にあります。
6位 不破俊一
国光が支える坂上先生と市長選を争う、本作のラスボス的な存在ですね。
元々は少し嫌な奴だったんですが、ポリシーと芯を持っている政治家で、宇治村~五木田ラインにいるんですが「奇麗ごとだけでは何も実現できない」という形で、必要悪として付き合っている辺りが秀逸です。
かなり能力の高い政治家で、坂上先生との市長選挙はかなりハイレベルだった感じですね。
5位 佐和真澄
本作のヒロインです。
EIJI同様、主人公のパートナーは5~6歳上のキャリアウーマンのチャンネーにするのがキバヤシ流ですね。
毎朝新聞の記者で、連載当初は都落ちと思ってやる気がない記者だったんですが、ジャーナリストとして腐敗した新千葉ヶ埼でスクープを連発し、どんどんレベルアップしていくチャンネーです。
「女」の部分を利用され、いい感じに不破に利用されたりもするダメな所もありますが、それでも大義を大事にする良いジャーナリストだったりします。世の中のジャーナリストも爪の垢でも煎じて飲んで欲しいですが…
国光との関係性もいい感じですね。
4位 藤代静
新千葉ヶ埼でブイブイ言わせるヤクザの若頭で、組長の息子(二代目)です。
最初はとにかく悪い奴だったんですが、国光とガチでタイマンしてボコボコにされて、そこからは少し改心して「怖いけど話が分かるヤクザ」になります。
最終的に桃奴と一緒になるんですが、そのプロセスとかが非常に良かったですね。良い展開でした。
3位 吾妻光明
高校生ながら天才・選挙参謀です。
諸葛孔明のごとく「コーメイ」と呼ばれておりますが、とにかく鬼のように頭脳明晰であり、経験・ノウハウも持っており、記憶力も優れており、更には目的達成の為なら悪事も辞さない感じで、とにかく強い存在です。
坂上事務所はコーメイがいなかったら全く機能しなかったでしょう笑
そしてどれだけ選挙に勝たせても、「やったりました!」的なnoteも絶対に書かないでしょうね笑
2位 坂上竜馬
そして坂上先生ですね。
気が弱かったり、お金が無かったり、家族からもちょっとバカにされていたりもするんですが・・・それでも信念を持ち、筋の通った政治家です。
前回の市長選挙では五木田に敗れてしまい、捲土重来を目指している中で牧原先生の紹介で、国光と出会い、早々に国光の心を掴み、市長を目指す男ですね。
とにかく発言の一つ一つが含蓄があり、非常に良い市長候補ですね。
相生市長や岸和田市長(略)
1位 武藤国光
そして本作の主人公・国光ですね。
作中でもどんどん成長していく、とにかく熱い男です。
EIJIに出ていた時はもっと怖い顔だったんですが、だんだん表情が柔らかくなっていくのも良かったですね。
いつか、この国光の続編も見たい限りです。
おまけ
他にも望月先輩の挨拶とか、朽木秘書のシーンとか紹介できなかった名場面はたくさんあるので、是非皆さんチェックしてみてください。
そんなクニミツの政は実写化もしているんですね。
佐和記者が伊東美咲、坂上先生が大杉連、不破が佐々木蔵之介と割と原作に忠実なキャスティングであり、クニミツのキャスティングも当時にしてみればそんな悪くなかったのですが・・・
諸般の事情で再放送は無理でしょうね笑
そんな感じですが、次回は政治漫画シリーズ最後にして、僕が人生で最も好きな漫画を紹介しましょう。