#797 読書論34|生たまご ~ゆでたまごのキン肉マン青春録~(ゆでたまご)
本日は「キン肉マン」の作者として有名な漫画家「ゆでたまご」先生が、これまでの半生を振り返った自伝・「生たまご~ゆでたまごのキン肉マン青春録~」について紹介しましょう。
漫画「キン肉マン」に関しては漫画論の初回に書いていたり、つい先日も「マッスルタッグマッチ」について書きましたが、思い入れはメチャクチャあります。
故に、この書籍を本屋で発見した際は、速攻レジに持ってった記憶がありますね笑
ゆでたまごとは?
ゆでたまご先生は今では珍しいコンビでの漫画家であり、完全に分業スタイルに分かれております。
嶋田先生は昔から漫画が大好きで、小学生の頃にはキン肉マンのプロトタイプを描いたりしていたようですが、そんな嶋田先生が小学4年生の頃、嶋田先生が通う大阪の小学校に、中井先生が転校してきて、2人は出会ったんですね。
そして意気投合した2人は漫画を描き始めて、まんが道でいう足塚茂道のように、バクマンでいう亜城木夢叶のように、学生ながら漫画を描き始めるんですね。
そして2人で色々と作品を描くんですが、何かの賞に応募する際に「キン肉マンで勝負しよう」という考えに至り、応募して入選!そしてそこからデビューに至った感じで、高卒でいきなり漫画家として集英社の専属契約をしたいという感じですね。
生たまご あらすじ
1.生い立ち~高校時代
この辺は上記で紹介した通りなのですが、やはり当時の大阪のアンダーグラウンドな下町とかなんで、やっぱどっちの先生もハードコアな人生送ってるんですね笑
中井先生の父親に至っては本職の方だったようですし…笑
そしてこの辺のエピソードで僕が好きなのは、高校時代に何度か作品を集英社に送っていて、「アデランスの中野さん」でお馴染みの実在する編集者・中野さんが何度か嶋田先生に電話をしてきたらしいんですが、嶋田先生の母親が「オカマから電話がかかってきたでえ!オカマや、オカマ!」と、標準語を話す中野さんを珍獣扱いしていたエピソードです笑
70年代の大阪のアンダーグラウンドの世界の中では、標準語はオカマ扱いされていたんですね笑
2.『キン肉マン』連載開始 ~ 連載打ち切りの危機
連載当初はスーパー・ブラック・ワークスタイルだったようで・・・
週間連載を高卒の若造が持つというのも、かなり過酷な話だと思うんですが、当時はその辺の整備が十分ではなかったのでしょう。
当時の西村編集長は「若年層の読者を取り込める作品になる!」と、かなりキン肉マンを評価していたようで、集英社の一室を作画の中井先生に貸したり、金欠に苦しむ2人の為に「漫画内で森永製菓の宣伝をしたらスポンサー料を払う」という当時にしては画期的な手法で、ゆでたまご先生をサポートしたようです。
で、第1回超人オリンピックで、ロビンマスクやラーメンマンという人気キャラが登場するも、アメリカ遠征でこけて、怪獣滞時をするも上手くいかず・・・打ち切りも噂された中、起死回生で挑んだ第2回超人オリンピックでブレイク!
僕も再放送のアニメでこの辺から見たんですけど、予選第2種目のガソリンプールとか凄く印象に残ってますね。
そして7人の悪魔超人編で完全にブレイクし、「おかえり、テリーマン」の回でついに宿敵のDr.スランプらを抜いて、ジャンプの人気投票1位をGET!
そこから一気にエグいくらい、キン肉マンブームに火が付くんですね。
3.社会的大ブーム到来
悪魔超人編はメチャクチャ面白かったですが、そのあとの黄金のマスク編も、タッグトーナメント編も秀逸でして、王位争奪編もメチャクチャ面白く、アニメ化や映画化、ゲーム化と大ブレイク。
「キン消し」が発売されていたのを先生たちが知らなかったというのもなかなかエグい話でした笑
この時期キン肉マンのほかにも「闘将!拉麺男」というイカれた漫画も連載しており、鬼忙しかったようですがその分稼ぎもエグかったようで、長者番付に先生たちが2人共ランクインしていたようです。
今でいう尾田先生ばりに稼いでいたと推察されます。
そんなモンスター・ビジネスツールのキン肉マンでしたが、当時の少年ジャンプには人気最絶頂の頃に連載を終わらせる「去り際の美学」みたいなものがあったようで、物語的に収まりの良い王位争奪編でキン肉マンの連載は終了したのですが、ここからがこの本は面白いです。
4.苦難のとき
キン肉マンの連載終了後、ゆでたまご先生はヒット作に恵まれず、地獄のような10年間を送ります。
キン肉マンの次に連載された、妖怪退治をテーマとした「幽霊小僧がやってきた」、ロボットギャグマンガの「SCRAP三太夫」、多分日本で唯一のムエタイをテーマにした漫画「蹴撃手マモル」を連載するんですが、打ち切り、打ち切り、打ち切り!!
かなりハードな時代を迎えます。
「幽霊小僧~」は、妖怪というジャンルは広すぎて逆に難しいんでしょう。幽遊白書もベースは人間vs人間ですし、ぬ~べ~もベースは学園ものですし…
そして「蹴撃手マモル」は逆にムエタイというテーマが狭すぎたのでしょうかね?
「SCRAP三太夫」は・・・ノーコメントとします笑
そんな感じで打ち切りが続き、「キン肉マンの貯金」が金銭的にも、信頼的にも打撃を与えて、集英社から提示される年俸(契約金)も大幅ダウンだったようで・・・
2人は集英社から離れる決断をします。
余談ですが、「蹴撃手マモル」が連載された時、ゆでたまご先生と親交がある甲本ヒロトが「マモルをイメージしてテーマソングを作った」と言っていたようで、嶋田先生は感動したと言ってましたが、何の曲ですかね?
連載時期を考えると「BUST WASTE HIP」に収録されている曲と思うんですが、「殺しのライセンス」ですかね?
もしくは「首つり台から」かな?
で、集英社との専属契約が終わったゆでたまご先生は、デラックスボンボンで「トータルファイターカオ」と、ガンガンで「ライオンハート」を、少年エースで「グルマンくん」を連載するも、ヒットとは程遠く・・・
不遇の時代は続きます。
更に、マガジンの編集者から、新人漫画家にするようなメチャクチャナメられた態度を取られたりしたようで・・・
嶋田先生は自殺も考えたらしいですから、そのプレッシャーはハンパなかったんでしょう。
そんな中で、偶然中野さんと出会い、中野さんの知り合いがプレイボーイの担当だったらしく、そこで「プレイボーイでキン肉マンの続編を描きませんか?」と誘われ、状況が一転するんですね。
5. キン肉マンⅡ世で再ブレイク
キン肉マン2世は始まったタイミングを覚えてますし、僕も序盤は買っていたんですが、やはりキン肉マンを熱望するファンは多く、読み切りで掲載されてヒットし、連載開始して更にヒット!
リバイバルブームの火付け役になった気がしますよね。
恐らく終わった作品を再度再開するのは、ファンは喜ぶけど創作者としては複雑なんですよね。
漫画界以外でもバンド界においてもこの現象はあり、「解散した前のバンドの曲を演奏するバンド」「しないバンド」に分かれます。どちらが良いも悪いもないのですが、やはりファンとしては嬉しいんですよね。
そして引き続き「キン肉マン」を頑張っていく、という決意と、相棒への感謝でこの本は終わります。
まとめ
両者の視点で、当時の舞台裏を語ってくれるのは非常に面白いですね。
キン肉マンのファンなら、「肉萬」はもちろん読んでいるでしょうが、この「生たまご」も読んでおかなければならない作品です。
そんな感じで現在連載中の「キン肉マン(37巻以降)」も先日アニメ化もされてますが、やはりアニメも相変わらず面白そうですね。これを見て世代を超えて、当時の僕のような子供がキン肉マンにハマっていくのでしょう。
そんな感じで「超友」であるゆでたまご先生には、引き続き頑張って欲しいものですね!
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