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#902 漫画論70|加治隆介の議

政治が盛り上がっているこのタイミングで、敢えて政治漫画の代名詞的存在である「加治隆介の議」に関して紹介しましょう。

僕のnoteで謎に一番見られている島耕作シリーズに同じく、弘兼憲史先生が提供する政治漫画で、メチャクチャ面白いです。
島耕作より好きかもしれないですね。


加治隆介の議とは?

主人公の加治隆介は、鹿児島ラ・サール高校を卒業し、東大に入学し、大手商社で働くイケてるサラリーマンで、仕事をバリバリこなしつつ、しっかりと愛人とチョメチョメするという、島耕作に通じるイズムを感じさせる主人公です。

そんな加治隆介の父親は政治家であり、隆介の兄がその後を継ぐ予定だったんですが・・・計画的な犯行で、父と兄は事故にあって他界してしまいます。そこで亡き父の思いを継いで政治の道を志し、そこからは人が変わったように真面目になります。この辺も耕作と通じるものがありますね。
(たまに妻以外とSEXするのですが・・・笑)

物語は90年代前半に実際に日本でもおきた情勢や事件なども反映しております。
カンボジアへのPKO派遣、北朝鮮の拉致、新党ブーム、消費税の増税、海賊事件、更には「憲法改正」「集団的自衛権」「領土問題」など今の日本でも結論が出ていない事項についても議論したり、今読んでも普通に面白いと思います。
衆議院が中選挙区制とか、今の財務省が「大蔵省」で、防衛省が「防衛庁」だったり少し古い情報もありますが、そんな気にならないので、政治に興味がある方は是非読んでみましょう。


加治隆介の魅力

1. 公的貢献という概念

加治隆介はスピーチをする機会が多いですが、その中でよく「公的貢献」という言葉を使います。

色々な人から「なぜ政治家を目指すのか?」と聞かれた際に、激務だし、恨まれたりすることが多いし、その割に給料も見合った額ではない(実入りは多いが、出ていくカネが多すぎる)などで、とにかくオススメできない仕事だけれども、「それでも国民の未来の為に働くこと」に意義があると語り、国会議員は地域を涵養するだけではなく、外交・防衛・教育をしっかりと行うべきという持論は共感できます。

現職の国会議員も、爪の垢でも煎じて飲んで欲しい所ですね・・・
小西議員とか、大石議員とか、有田議員とか、石破総理とかetc…


2. 難しい政治がスッと理解できる

政治に関して学ぶのは少し難しいし、敷居が高かったりするんですが、漫画であるのでサクッと理解できます。
例えば選挙運動で、農村で農家の方に分かりやすいように政策を伝えたり、自分の息子に関して政治のルールを伝えたりと、キャラクターの感情を入れることで、教科書などで読むと分かりにくい政治もストーリー仕立てで非常に入ってきやすい。
この辺はゴーマニズム宣言にも通じるものがありますね。


3.物語として面白い

そしてなんといってもこれですね。話が面白いんです。
最初は妻子がいながら不倫し、「政治家の親父を信用していない」と言ったり、父親の葬儀の帰りの飛行機を愛人と一緒に帰ったり、愛人を妊娠させたり・・・と、本当にダメな加治さんでしたが、政治の道を志してからは更生します。政治はダメ人間の厚生にも大事なんですね

初回の選挙で落選するも復活当選したり、派閥の中で戦ったり、官房長官になったり、外務政務次官になったり、防衛庁長官になったり、外務大臣になったり・・・という政治に対する議員辞職したり、サクセスストーリーも見ごたえがありますが、それ以外のサイドストーリーも面白い。
父親を暗殺した黒幕と戦ったり、カンボジアでポルポトに拉致されたり、ヤクザと揉めたり、アメリカ人記者とSEXしたり、北朝鮮軍に拉致されたり…と、物語としても引き込まれて面白いですね。
島耕作にも通じる面白さがあります。


加治隆介に登場する愛すべきキャラクターランキング


10位 鳩村総理

こいつはろくでもない男でした。
物語開始時の総理大臣であり、裏金を貰って私腹を肥やし、それを加治隆介の父親にその罪をなすりつけて、挙句の果てには殺すという究極のクズです笑
名前にがつく総理大臣にはロクなのいないですね笑


9位 鈴鹿幹事長

鈴鹿幹事長は、作中で最大派閥だった民主政和党(モデルは自民党)の幹事長で、派閥のトップでした。
中々の策略家であり、裏工作とか、スキャンダルを握って絶妙なタイミングで公開したり、まぁ裏でコソコソコソコソ兵庫県議会のような事ばっかしてますね笑
政権交代が起きて下野してからは陰が薄くなって可愛そうになります笑


8位 大森

大日新聞の記者であり、政治部の部長とかですね。
1話目で料亭の女将に酔っぱらってタックルするようなマジモンとしてスタートしたんですが、以降はまともで有能な新聞記者になります笑
そして探偵としての能力も高く、新聞記者だけにしておくには勿体ない男だったりします。
あと、加治さんの愛人を「娼婦」としてスパイ行為をさせるという鬼畜のような発想も持っていたりします笑


7位 田名網 敬子

この方は「島耕作」にも出ていたすっぽん屋の女将ですね。
前作では島耕作とSEXして貧乏エピソードをカミングアウトしてフェードアウトしてしまうんですが、今作では渦上総理の愛人として登場し、熱海の資産家の愛人になり、とにかく元県民局長張りにSEXばっかりしている淫獣です笑


6位 一ノ関 鮎美

加治さんの商社の部下にして、不倫相手なんですが、この方も女将よろしく、なかなか元県民局長張りのSEXモンスターだったりします。
加治さんの父と兄が亡くなったタイミングで、葬儀中に加治さんを追っかけて鹿児島まで来たのもなかなかサイコパスでしたが、カンボジアで行方不明になってボロボロの加治さんを逆レイプしたのもなかなか狂ってました笑
そして、島耕作漫画特有の「あっさり死ぬ」形でフェードアウトします笑


5位 青杉総理

青杉総理は元々社会平和党という、モデルは社会党ですかね?
そんな政党の左寄りの党の中でも右の考え方ができる人で、ポジション的には村山富市みたいな感じですかね?
そして総理になるんですが、サミットなどでフランスと揉めたりして支持率が下がり、シージャックの切っ掛けを作ってしまったりと、何かとお騒がせな男です。
で、政権維持をするために、自社さ連合みたいな感じで民政党と合流し、裏切り野郎とレッテルを貼られて小選挙区で敗れる、哀れな末路でした。


4位 三樹 海上保安官

前述の通り、青杉のアホが外務大臣としての功績をアピールするために、プルトニウム運搬船「ひので丸」が航海してまっせとアピールしたんですが、加治防衛長官が万一「シージャックされたら困る」という意向で、この三樹さんをひので丸に登場させ、案の定シージャックされたんですが、大活躍!
日本人乗船員を守るため敵のテロリストを殺すんですけど、それを国会で左寄りの方々に咎められたら一蹴!カッコよかったですね!


3位 渦上総理

元々は民政党で鳩村派だったんですが、見切りをつけて新党を結成し、連立与党で内閣総理大臣になりました。
保守のスタンスで若くして総理になったので安倍晋三首相の姿を重ねますが、前述の女将との逢瀬がバレてしまい、玉木雄一郎張りの不倫スキャンダルで、これが切っ掛けで辞任し、その後は正義を貫いて議員辞職もして隠居生活に入ります。加治さんの先輩的存在でしたね。


2位 浅海総理

写真が無いのですが・・・なかなかの人格者でした。
亡くなった加治さんの父親に心酔し、その忘れ形見である加治隆介が新人の頃から残りの政治生命をかけて親身になってサポートし、これまで中選挙区制だった衆議院制度を小選挙区比例制度に政治改革を行い、癌で急逝してしまいますが、そのマインドはしっかりと加治さんに継承されました。


1位 加治隆介

そして加治さんですね。
今回初めて知りましたが、加治さんのモデルの一人は中川昭一だったとのことです。中川昭一は良い政治家でした。
確かに谷垣けんごとの争いは、まさに宗男と争った「骨肉の争い」でした。
もう色々紹介しつくしてますが、スタンスとしては「公的貢献」を理想とし、自分や地元ではなく、国民の利益を追求するスタイルで、スタンスとしては中道右派と言う感じですね。
で、かなりサバイバル力も強く、カンボジアでポルポト派に拉致されてもジャングルから生還したり、北朝鮮軍に拉致されても自力で脱出したり、とにかく危機管理能力にも長けたナイス・ガイ。
ダメなのは異性関係くらいですね笑


論外 西

こいつは加治さんの秘書なんですが、仕事中に「いいからこっちこいよ」と同僚とSEXしようとしたりする元県民局長張りのベースケで、更には島さんと一緒に韓国に行った際に、秘書の分際でハニートラップに引っ掛かり、加治さんが拉致される切っ掛けになった(ホテルのカギを盗まれた)という、どうしょうもないクズ秘書です笑
加治さんは更迭するべきでした笑


まとめ

そんな感じで、最後は加治隆介が総理大臣になったところで終わるんですがすが、「社長 島耕作」で、加治隆介の息子の一明が政治家として登場します。後を継いだようで嬉しいですね。

結局、作中で問題視した「憲法改正」「集団的自衛権」「領土問題」など、物語が終わって25年経って令和になっても何も解決していないので、是非「加治一明の議」を連載して欲しいですね。
弘兼先生の先見の明で、予言の様に日本をいい方向に導いて欲しい限りですね!

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