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#674 アルバム論40|ヒゲとボイン / UNICORN(1991)

1990年にケダモノの嵐で名実ともにNo.1に輝いたユニコーンですが、今考えても本当に凄いと思うんですけど、87年のBOOMから、88年のPANIC ATTACK、89年の服部と、毎年1枚アルバムをリリースしており、90年に至っては3枚リリースし、そしてこの年1991年にも7枚目のオリジナルアルバム「ヒゲとボイン」をリリースしました。

一度聴いたら忘れないこのアルバム名は、元々小島功先生の漫画「ヒゲとボイン」から拝借した感じですね。


「ヒゲとボイン」リリース時のユニコーン

2009年の再始動前までの解散前にオリジナルメンバーで提供する最後のアルバムとなったのが今作です。

メンバーから「暗い」「パッとしない」と後に述懐され、あまり評価されていないアルバムだったりもするんですが、一報では「最高傑作」とも呼ばれていたり、賛否両論あるアルバムですね。
服部やケダモノの嵐は賛が多かったなか、ちょっと否が増えてきた感じではありますが、それでもかなりバラエティに富んでおり、僕は結構好きなアルバムだったりします。

このアルバムもどっかに行ってしまいましたが、この辺から歌詞カードで強調とかして遊び始めた記憶もありますね。


「ヒゲとボイン」 魂の全曲解説

1. ターボ意味無し

1曲目はこれまでにない重くて暗い曲で始まります笑
けして勇気を与える歌詞では無いであろう「ターボ意味なし」というタイトルはどうかと思いますが・・・笑

後の民生のソロの雰囲気に近い感じの曲で、実際に民生のソロアルバムでもリテイクされて収録されております。
トリビュートアルバムでドーピングパンダが何故かこの曲を英語でカヴァーしておりますが、なんでこの曲を笑


2. 黒い炎

このアルバムで唯一のEBIが作った曲ですね。
阿部のキーボードがかなりいい感じでして、EBIのベースもかなりブリブリ動いていて、ロック調でライブでも盛り上がる感じの曲ですね。
ちなみにドラムを叩いているのは民生です。


3. ニッポンへ行くの巻

民生の天才さが爆発している曲ですね。
この曲といい、14曲目の「車も電話も~」もですが、この時期民生の中で「海外から見た日本」の感じが流行っていたのでしょうが・・・とにかく名曲です。
この頃26歳とかだと思いますが、よくそんな若さでこんな抒情的でメロウで、者に構えた愛国ソングを作れたものです。
ギターも美しく、サンプリングも秀逸、歌い方もかなり素晴らしい。後期を代表する名曲です。


4. 開店休業

これまた名曲ですね。
このアルバムでは阿部の才能がかなり爆発していますが、本当にこの曲はメロウで泣けて素晴らしい。恐らく歌詞的には働かない旦那の曲なんですが・・・とにかくメロディが素晴らしすぎるんです。
阿部が誤って消しちゃったみたいですが、ドラムがはいるタイミングが2回目のサビの絶妙な位置からで、それがそれでよかったりします。


5. 幸福

テッシーが初めてユニコーンでメインボーカルで歌う曲です。
インド風なメロディに乗せた、パパがママを殴るというドメスティック・バイオレンスな曲で、全然幸福でもなんでもないんですけど・・・笑
ひょっとしたら開店休業の世界に続く、子供目線の曲かもしれないですね。
とにかく重い曲です。


6. 看護婦ロック

阿部が歌う、60~70年代の洋楽を彷彿させるロックな曲ですが、元々がプレスリーの「監獄ロック」をパロって監獄を「看護婦」にしたというふざけた曲ですね笑
阿部のハーモニカといい演奏力はかなり高く、やはり流石です。


7. 立秋

これも阿部の曲ですが、かなりカッコいいです。
冒頭はギター一本で民生が歌うんですが、途中からの楽器隊の入りがカッコいいですし、全体を通してこの曲は演奏が最高にカッコいいです。
EBIのベースと阿部のピアノがかなり映えるんですが、途中でのドラムソロ~ピアノソロ~ギターソロあたりも凄く好きです。
玄人が好む感じの曲だと思いますが、すげー好きですね。


8. ザ・マン・アイ・ラブ

西川くんが作詞作曲したロックンロールです。
歌詞は相変わらず独特の世界観の自分を「アタイ」とよぶ強い女性目線の曲です。
民生もこういう曲は歌いやすそうですね。


9. フリージャズ

同棲を解消するカップルの切ない曲です。
エフェクトの掛かったヴォーカルと管楽器のみというシンプルな構成で、唱歌というか何というかのテイストでこのアルバムの中では異色ですが、このアルバム自体が何でもありなので、別にそんな違和感でも無かったりですね。


10. 風

民生が恐らく数十分で軽いノリで作った曲と推察されます。
誰にでもあるような日常を、民生のアコギと、阿部のアコーディオン&ハモリで表現する気持ちいい曲ですね。


11. 家

のちの民生のソロに通じる曲ですね。
とにかくサビでも何度も繰り返しているように「僕等の家が新しくなる」という、ただそれだけの曲です笑


12. Oh,What a Beautiful Morning

この時期のユニコーンに珍しい英語のタイトルの曲で、民生の作った曲に西川くんの歌詞が乗るという黄金パターンの曲なんですが、この曲はそこまで有名で無かったりします笑
なんせテーマが「老人ホームで過ごす老人」という、恐らくこの曲以外でそう存在していないと思われるテーマの曲なんです笑
アウトロがディズニーっぽくてカッコいいです。

13. 風II

先程紹介した風の続編ですね。
風Ⅰの主人公は良い事言ってるんですけど、結局何もしないというダメな主人公だったという話ですね笑


14. 車も電話もないけれど

そしてこの曲です。
僕がこのアルバムで一番好きなのは、次曲の「ヒゲとボイン」かこの曲ですね。とにかく全体的に地味なこのアルバムの中で、ブッチギリでサビのメロディがポップで素晴らしい。この曲が最後にリリースされた「THE VERY BEST OF UNICORN」に収録されなかったことを憤ったファンは多かったでしょう。

歌詞は開国したての日本について歌っていると推察されますが、そんなことはどうでもいいんですね。
とにかくサビのメロディが最高すぎて、それ以外の言葉で形容できない名曲です。「僕に君の話を聞かせてくれよ」「2人が歩けば誰もが振り返る」という歌詞もいいですね。
僕の元同僚は「ユニコーンでこの曲が一番好き」と言ってました。


15. ヒゲとボイン

後期ユニコーンの最高傑作ですね。
もうこの曲を26歳位で作れるのは天才以外の何物でもないです。
確かに歌詞の主人公は26歳位だと思うんですけど、その辺の心情とかは35歳とかそれ位にならないと書けない気がするんですが・・・そんな歌詞を書いてしまうのが凄い。

「出世」を取るか、「女」を取るか、という社会人には避けられない二者択一の岐路を、出世=ヒゲ、女=ボインに比喩した感じの歌詞なんですが、とにかく深い。本当に深いんです。

歌詞だけで本当に凄いんですけど、もちろんメロディも最高。
ユニコーン史に残るくらいのポップで美しいメロディは歌詞も相まって素晴らしいです。

あとは演奏に関しては阿部のキーボードが完璧で、全体的にギターとベースはシンプルでカッコいいです。ドラムはサビがクソ大変です。
とにかく歌詞、メロディ、演奏全てが最高峰。ユニコーンの集大成的な曲ですし、永遠に愛され続ける曲でしょうね。


まとめ

そんな感じで何曲かは思い出しながらですが懐かしいアルバムを振り返ってみました。
ただ、やはりグルーヴ感と言うか勢いはちょっと落ちてきている気もしますね・・・
次に紹介するのが解散前最後のアルバム「SPRINGMAN」で、これでユニコーンは一旦おしまいです。

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