
#141 漫画論13|がんばれ元気
これほど読了後、爽やかな気持ちになる漫画もそうないでしょう。
現在もなお名作を残している小山ゆう先生ですが、この「がんばれ元気」が最も素晴らしい作品と個人的には思っております(あずみとか直角とかも好きですが)
僕が生まれた時にはもう連載は終了していたんですけど、親父が古本屋でこの1巻と2巻を買ってきて、そこから親父が10巻、11巻、12巻、17巻、19巻、21巻とかすげーハンパに買ってくるんです笑
なので行間を予測して読んだりして、確か最終巻も全部読む前に読んだりしたんですけど、そんな感じで読みましたね。
この漫画はあしたのジョーに感銘を受けた小山先生が、意識的にあしたのジョーと逆のことをしたようです。
確かに言われてみれば天涯孤独のジョーと、家族愛に溢れている元気。
誰彼構わず暴力を振るうジョーと、平和主義の元気。
短気なジョーと、バカにされても笑って受け流す元気。
自己中心的なジョーと、他人を慮る元気、まさに対極な主人公像。
あしたのジョーも面白いので別途紹介しますが、とにかくその対比が言われてみると面白いですね。
がんばれ元気 あらすじ
万年6回戦のボクサー・シャーク堀口。そんなシャークはお嬢様の美奈子と駆け落ち当然で結婚し、子供を授かるのですが、元々身体の弱い美奈子は出産に母体が耐えきれず、出産と同時に他界してしまいます。
そんな両親の元に生まれた元気の為に、シャークはボクシングから足を洗って働くのですが、元気はいつも寂しそうで・・・シャークは意を決して、ボクサーとしての生き様を元気に見せようと仕事を辞め、自分が最も輝けるボクシングを再開すると元気は大喜び。
そしてシャークと元気は全国を歩き回りトレーニングをしながらボクシングコーチをしたりするんですが、31歳で階級を下げてプロにカムバックします。元気も元気でとうちゃん(シャーク堀口をこう呼ぶ)の影響でボクシングを始め、周りでは負けなしの天才子供ボクサーとして知られる存在に。
そしてシャークは復帰後、連勝を重ねて17歳の天才ボクサー「関拳児」と対戦することに。関はクソ調子に乗っているクソ野郎ですが、シャークとの試合で大苦戦。怯えながらなんとか勝利するんですが、その時のパンチや過度の減量などの影響で、シャークは他界してしまうのです・・・
そして、そこからの元気の活躍のお話ですね。
まさに「サンデー」と言った、この後続く「俺たちのフィールド」「MAJOR」などのサンデーのスポーツ漫画のプロトタイプになった作品でしょう。
がんばれ元気の魅力
とにかく、小山ゆう先生の最大の魅力はキャラクターの「メチャクチャ喜ぶ顔」と「メチャクチャ泣き崩れる顔」が抜群に上手いところだと思ってます。
本作は色々な悲喜こもごも、多くの栄光と挫折が連鎖するのですが、その人間描写がとにかくうまく、本当に脇役・端役に共感できてしまうところが本当に良い。
「・・・・・」とかの使い方もめっちゃ上手いです。
あとは絵がやっぱり上手いですよね。当時と思えないくらいキャラも立っており、女性キャラクターも魅力的です。
今見ても面白いので是非読んでみてください。
がんばれ元気の魅力的な脇役ランキング
そんな感じで普通のランキングにしてもアレなので、この漫画が素晴らしい所以である「脇役」「端役」に着目した、誰も得しないランキングを紹介します笑
10位 二郎にいちゃんを応援する弟・妹・祖母
元気の親友であり、ライバルの「のぼる」のデビュー戦の相手、苗字は忘れましたが名前は二郎。
そんな二郎を応援する家族が「二郎にいちゃんがんばれ」と書いた垂れ幕を持って応援してるんですが、その描写がメチャクチャリアリティがあって、切ないんですよね。
9位 塚本の嫁・子供
そして元気のデビュー戦の相手は確か塚本というボクサーだったんですけど、この塚本も嫁と子供が観戦に訪れており、圧勝する元気を試合後にリングサイドで睨みつけるというリアリティ溢れる描写。
これもなかなか秀逸です。
8位 永野ボクシングジムの気性の荒いスタッフ
関拳児がシャーク堀口が逝去した際、病室に見舞いに行くんですが、そこで関が元気に対して「しょげてると思ったけどしゃんとしてるじゃないか、小僧!」と挑発する際に、メッチャ怒るスタッフです。こいつもいい味出してるんですよ。
そして怒った元気は関を殴るんですけど、それを見て「子供に殴られて許されるなんて虫がいいなあ!」みたいな関に刺さるコメントをする、そんないい味出してるキャラクターですね。
7位 ともこのマネージャー
元気の中学校時代のクラスメイトの石田ともこはアイドルとしてデビューするんですけど、その時のマネージャーもいい味出してます。
売れる前は「いつもニコニコ挨拶しろって言ったろ!」とか「ここで着替えろ!」とか鬼畜なんですけど、ともこが売れたら手のひらを返したようにチヤホヤ扱い(うろ覚え)、そしてともこがアイドル辞めて逃げ出したら普通にダメ出しして諦めるというあたりがリアルで秀逸。
おそらくこの時代、こんなマネージャーが掃いて捨てるほどいたんでしょう。
6位 ジャッカル斉藤のボクシングジムの会長(義理の父親)
元気が戦う年配のかませ犬扱いのボクサー、ジャッカル斉藤。
その姿にシャーク堀口を投影し、元気もちょっとパンチを食らったりするんですが最後は圧勝で終わります。
で、そのジャッカルのジムの会長が人間臭くていいんですね。かなり心情が共感できるキャラクターでした。
5位 元気が働く寿司屋の先輩
御隠居でも主人でもなく、元気の指導員的なちょっとアフロでもないけど毛量が多い先輩です。
元気に対して無駄に厳しかったりはしないんですけど、しっかりと仕事上の注意をしたりして、最後は元気に寿司を握ってあげたりとかなりいい先輩でしたが、その辺もリアルでしたね。
とにかく本当にリアルです。
4位 みちこ
元気は託児所に預けられているところからスタートするんですが、そこにのぼるという少年と、みちこという少女がいたんです。
のぼるは後に準主役とまでは行かないですがメインキャラクターとして登場するんですが、みちこはその後は忘れられてる、と思いきや!
最後の最後に2コマくらい出てきます。こういう演出はすごい好きですね。
3位 丸山ボクシングジム会長
この人もすごく良い味出してるキャラクターなんです。
容姿とか性格とかは全然違うんですけど、ちょっと丹下段平入ってる感じがしますね。
とにかくボクシングに魅せられたいい人で、元気にとって恩人と言っても過言ではないでしょう。
2位 大杉くん
第1話の狂言回し的な感じで登場したものの、徐々に全く姿を消してしまうんですが、みちこと同じように最後の元気vs関戦でテレビ観戦して登場!
初登場の時点で高校生だったので、しっかりと加齢したナイスミドルで登場しておりました。勝手な想像ですが法律関係とかの仕事についた印象でしたね。
こういう演出もすごい良いですね。
1位 芳則さん
そして「脇役」「端役」の定義が曖昧なので「wikipediaの登場キャラクターに載っていない人」で考えましたが、その中で1位はこの芳則さんですね。
芳則さんは元気が東京で住んでいた寮の大家さんの息子で、三流大学に入学して遊んでばっかいて、仕事とボクシングしか興味がない元気を馬鹿にしたりんですけど、元気がタイトルマッチ前に日本中を旅するために部屋を引き払うとき、「本当お前カッコいいよ、頑張ったもんな」というセリフが自然で、とにかくいい味出しています。
まとめ
とにかく名作なので読んでみてください!
そして僕の上記の名脇役情報を照らし合わせて見たら奥が深く・・・ないと思いますが、まぁ参考まで!