#912 読書論38|フォルトゥナの瞳(百田尚樹)
ここ最近紹介した「モンスター」「海賊とよばれた男」に続く、百田尚樹先生の小説ですが、なかなか切ない恋愛小説です。
フォルトゥナの瞳とは?
フォルトゥナの瞳は2014年に発売された小説ですね。
フォルトゥナとはローマ神話に伝えられる人の運命が見えるという女神のことです。
百田先生の小説の中では「永遠のゼロ」「海賊とよばれた男」などに比べたらそこまでメジャーではないんですが、非常に良い小説です。
そしてこれ実写化されていたんですね・・・全然知らなったです。
しかも神木隆之介と有村架純というイケてるチャンニーとチャンネーがダブル主演ということで、結構注目を集めたのではないでしょうか?
僕は知りませんでしたが・・・
フォルトゥナの瞳 あらすじ
主人公の木山慎一郎は、車の整備工場(コーティング)を行う会社で働く極々平凡な青年です。
人付き合いがあまり上手ではなく内向的な所があり、友達もいなくて、趣味もこれと言ってないのですが、とにかく仕事に関しては一生懸命で、勤め先の会社の社長にも技術はさることながら仕事に向かう姿勢などを評価されてます。
そんな慎一郎ですが、いつものように仕事を終えて電車に乗って家に帰る途中、手が透明になって透けている人を見つけました。
「あ、俺仕事しすぎて疲れているんだな・・・」とその時は気にも留めてなかったんですが、ちょくちょくその手の透明の人を見るようになり、どうしても気になってある日、透明な人の後をつけたのですが、その人が事故に巻き込まれて死んでしまったんです。
そして、そうしたタイミングが続き、知ってしまうんです。
「俺は、もうすぐ死ぬ人が、分かる!」
そんな地獄のような能力を持ってしまうんですね・・・
フォルトゥナの瞳 魅力
1. 人の死期が見えると、人はどうするか?
これがメチャクチャ重いテーマなんですね。
例えば道を歩いていて、「この人近いうちに死ぬんだな…」というのが分かったら、人はどう考えるか?非常に難しいですね。
加えて、このような消えそうになっている人に声を掛けたりして、未来の行動を変える事で、その人の死を回避することができるんですが、その代償として、自身にダメージを受けるんです。
そのような自己犠牲を伴い、人を助ける事ができるのか?
ましてや愛する人の存在が消えそうになっている際に、どう動くか?
非常に難しいテーマですね。
2. そのような状況下で愛する人ができた時、人はどうするか?
そうなんです。
それが葵という映画で有村架純が演じるヒロインなんですが、徐々に仲良くなっていき、交際し、SEXし・・・と感じて深まっていく中で、ある電車を使っている人が大量に死ぬと推察される状況に直面します。
それを知ってしまい、そうした人たちを守るべきか?
それを見て見ぬフリをして、彼女と楽しく過ごすべきか?
この辺に苦悩してしまうんですね・・・
3. そしてなかなか劇的なオチ
このオチはなかなか衝撃でした。
確かにそういう伏線もあったな・・・と思いつつ、なかなか悲しいエンディングでしたね。
まぁこの辺を言うのは野暮なので、実際に読んでみてください!
まとめ
とにかくシンプルで分かりやすい小説です。
多分2時間くらいで読めてしまうと思われます。
高校時代に三浦綾子の「石狩峠」という小説を読んだときに感じたのと同じカタルシスを感じる、そんな作品ですね。
そんな感じで百田先生の作品をここ最近連続で紹介してきましたが、ちょっと趣向を変えて次回は別の著者の作品を紹介しましょう。