将棋ウォーズ初段になるまでに使う戦法を模索した話 後編

こんにちは、ボス猫丸です。
前回の続きで、今回も自分がどんなふうに考えて戦法を選んでいったかの話を体験記のように書いていこうと思います。

見ていただいた方の、何かの参考になれば幸いです。

ちなみに前編はこちらになります。


1級帯という大きな壁

やばボーズ流と右四間飛車に戦法を変えてから
2級帯を駆け上がった私は、端的に言うと調子に乗ってました。

「なんだ。このまま初段まで上がれそうじゃん」と。

体感になりますが、2級の達成率80%までは8割近くの勝率があったと思います。
その事実が私を天狗にさせてしまったのです。

しかし、1級帯に足を踏み入れたことで私は次第に気付かされていきます。
ただ、自分の調子が上振れていただけ。
ただ、やばボーズ流という戦法が強かっただけ。
私の棋力自体は決して初段に届いていないのだと――。

初めは「なんか思ったより勝てないな?」と首を傾げる程度でした。

今まではキマッていた、やばボーズ流頻出の飛車先逆襲の攻め筋が防がれる。
そもそも飛車先の歩を簡単に交換してくれない。

今まではキマッていた、やばボーズ流お得意の6筋集中攻撃の攻め筋が防がれる。
こちらの攻めを受けるために相手の右金がしっかりと守りに加わってきて、簡単に突破できない。

そして一気に攻められるとなすすべなく詰まされる。
それが何度か続き、私はやがて察していきます。
「あれ、1級帯って強くね??」と。

それもそのはず。
あくまで私の使うやばボーズ流は動画を見て真似しただけの、我流のものでしかありません。

囲いも必ず片美濃囲いまでは囲ってましたし(本家のやばボーズ流は美濃まで囲わずに動くケースが多い)、上記二つの限られた攻め筋しか知らない。
戦法の基礎が全くなっていない状態でした。

なので序中盤で悪くして、そのまま負けるパターンが多くなってしまったのです。
不幸中の幸いなのは、互角の状態で終盤にさえ入れれば競り勝てる場面も多かったこと。

つまり序中盤を克服することこそが、私の次の課題となったのです。

ならばと、私はやばボーズ流の詳細が書かれている本を探すことにしました。
戦法について本格的に勉強するなら、棋書を読むことが王道です。

けれどもやばボーズ流は棋書が出ているような主流戦法ではないので、あるのは電子書籍の『攻める後手番振り飛車 角交換四間飛車やばボーズ流』のみ。
当時の私は棋書は紙の本を買ってこそという意味不明な固定概念があったので、電子書籍を手にするのは大変勇気のいることでした。

※今は電子書籍でも普通に買います。なんならやばボーズ流の本を書いたあくとさんの、相中飛車3三桂戦法4四角型向かい飛車は購入しました。

またやばボーズ流の他に右四間飛車も使っていたので、戦法を二つ同時に勉強しなければなりません。
今まで動画で二つの戦法を軽く勉強していただけの私には、それがとてもハードルの高いものに感じました。

私は次第にこう考え始めます。
やばボーズ流や右四間飛車のようにこちらから攻めれる。
・守りは最低でも片美濃囲いまでは囲える。
・その戦法一つ覚えれば大体の戦法を相手に戦い抜ける。
・棋書がそれなりに揃っており、勉強しやすい。

そんな夢のような戦法はないだろうか…と。

中飛車の時代 中飛車転向編

ある日のこと。
私は気分転換に、近くの将棋道場へと赴きました。
これまで対面しての将棋を経験していなかったので、ある程度将棋を指せるようになったら足を運んでみようかと常々思っていたのです。

最初こそ恐る恐る踏み入れましたが、そこの将棋道場の席主さんはすごく優しい方でした。
色んなことが初めての私を快く迎え入れ、一局指しましょうと指導対局までしてくれました。

その時思い切って、私は自分が使う戦法に迷いがあることや、そもそも「初段まではこれで行く!」という戦法が定まっていないことを相談したのです。

すると席主さんはこう答えてくれました。
「ボス猫丸さんの棋風的におすすめするのは、中飛車ですね」

中飛車。
もちろん存在は知ってました。
そもそも一番最初に戦法を選ぶ時に、初心者におすすめなのは中飛車、角交換四間飛車、石田流三間飛車とサイトに書かれていたのを覚えています。

一時期は指してみようかと図書館で本を借りてみたこともあります。
その時は難しく感じて断念しましたが。

席主さんからアドバイスをもらってから、私はいま一度中飛車について調べ直すことにしてみました。
まず手に取った棋書は、石川泰さんの『中飛車のポイント』。

曰く、中飛車の魅力とは、
①わかりやすい。
ポイントさえ覚えておけば、居飛車側に多少の違いがあっても応用が利きやすく、柔軟性がある。
②合理的。
中央から圧力をかけていくので、居飛車の攻め駒と守り駒を分断することができる。
また、他の振り飛車と違って角頭を攻められにくい。

そして中飛車は中央突破を見せ玉にして、居飛車に中央の対策を強いた後、他のところに生じた隙を狙いに行くとのこと。

ある時はこんなふうに飛車を浮き、7筋に飛車を振ったり。

…なるほど。つまり石田流の要領ですね。


ある時はこんなふうに、桂頭を狙うために7筋に振り直したり。

…なるほど、つまり三間飛車の要領ですね。


またある時はこんなふうに、左金を78に上がって角交換や急戦に備えたり。

…なるほど、つまりやばボーズ流の要領ですね。

――つまり、これまで私が使ってきた振り飛車の経験がめちゃめちゃ活きるということですね!?

また、棒銀などの急戦に対する中飛車の考え方も好みでした。
前編でも触れた通り、私は受けが非常に苦手です。そのせいでノーマル振り飛車を指す上で苦労しました。

しかし中飛車は、受けずに攻めさせる。
なんなら相手側に8筋を明け渡すときもあります。
代わりに5筋を攻めます。

8筋は破られるが、こちらの攻めの方が速い。

「御宅の攻めより、こちらの攻めの方が玉に近いでしょ?」というのが中飛車の主張なのです。
受けずに殴り合いです。
殴り合い大好き。

なにせやばボーズ流を使っていた時、左金なんかを相手に食べさせている隙に攻め倒すことが結構あったので、違和感は全くありませんでした。

そして中飛車といえば、多数の棋書を世に出し、自らも公式戦に使っている戸辺誠先生の十八番戦法。
つまり石田流三間飛車時代に見ていた戸辺チャンネルで中飛車の基本が動画で学べる。

すごい。すごいぞ中飛車!
私は中飛車について知れば知るほど、全身が震えてきました。
今までの勉強のほぼ全てが中飛車に集約していく感覚にさえなりました。

しかも、
・やばボーズ流や右四間飛車のようにこちらから攻めれる。
・守りは最低でも片美濃囲いまでは囲える。
・その戦法一つ覚えれば大体の戦法を相手に戦い抜ける。
・棋書がそれなりに揃っており、勉強しやすい。
これらの条件を見事に満たしている。

これだ。
私が探していた戦法は。
私の運命の相棒は、『お前』だったんだな――。

それから私は狂ったように戸辺チャンネルを視聴しまくり、中飛車の棋書を漁りました。
その勢いたるや凄まじく、電子書籍に懐疑的だった私にKindle Unlimitedを登録させるほどでした。
だって中飛車の棋書がいっぱいあったんだもの。

中でも前述の中飛車のポイントの他、戸辺先生一手ずつ解説する先手中飛車ゴキゲン中飛車kintrainerさんパワー中飛車で勝とう!には大変お世話になりました。

特にパワー中飛車の方は次の一手形式で読みやすく何周もしました。今でも私の56銀型中飛車のベースとなってます。

そして中飛車を使い始めて約2〜3ヶ月ほどが経った頃。
いつも20%以下に押し返されてきた私の達成率が、遂に少しずつ上がり始めていったのです。

中飛車の時代 2手目54歩編

達成率が上がり始めていったとは言えども、さすがにやばボーズ流を覚えて2級帯を駆け上がった時のようにはいきません。

やばボーズ流の場合、私が使っていた当時は相手から対策を取られることが少なかったので、一方的に攻め潰せることが多かったのですが。
中飛車はさすがにメジャーな戦法なので、お相手もしっかり対抗策を用意してきます。
ですので、一方的に攻め潰せるという展開にはあまりなりませんでした。

しかし、お相手の多くが中飛車対策を取ってくるというのは、逆に考えるとメリットになり得ます。

というのも、中飛車対策の戦型は限られるので、覚える必要のあるパターンが少ないのです。

初段前後の将棋ウォーズや将棋クエストで特に当たることが多いのは、

居飛車63銀型
居飛車64銀型(超速含む)
三間飛車
相中飛車


になります。

この他にも、丸山ワクチンや一直線穴熊、四間飛車や向かい飛車、右玉などがそこそこの確率で来ますが、ある程度の形を覚えてしまえば戦えます。

そうした当たる確率の高い戦型が限られてくるので、経験値が非常に溜まりやすいのです。
勉強と対局の反省を繰り返すことで経験値が蓄積されていき、着実に戦いやすくなっていくのを実感しました。

――中飛車は経験値が溜まりやすい。
ある時私は、中飛車のそのメリットを高めるべく、相手の戦型をさらに絞れないかと考え始めました。

中飛車は先手番において基本56歩と指します。
相手が飛車先の歩を突かない限り、こちらは無理に角道を開けず55歩と位を取ることができます。
これによって、76歩と角道を開けても相手からの角交換を避けることができます。

76歩と開けても角交換されない。


しかし後手番の場合、2手目は基本34歩になります。
相手の初手が76歩の場合、相手に角交換の権利を与えることになります。

相手に角交換の選択肢を与える。

もちろんそれで局面が悪くなるということはありません。
しかしそうなると――飛んでくるのです。
角交換振り飛車筋違い角が。
だから相振りはやめてって!

忘れた頃にやってくる。


「先手番なら角交換の変化にならないのに、後手番のためだけに対策を勉強しないといけないのは嫌だなぁ」と。
面倒に感じた私は、これをどうにかできないかと考えました。

結果、私は思い付きます。
相手の初手76歩に対して2手目54歩と指すのはどうだろうか、と。

もちろん目的は、序盤から相手に角交換をさせないというもの。
これにより筋違い角などの角交換を前提とした奇襲戦法や、角交換振り飛車を避けることができるのではないかと思ったのです。
(ここで飛車先を突かれれば、34歩や58飛で普通のゴキゲン中飛車の変化と合流)

…私は知っています。
角交換振り飛車を得意とする級位者は、角交換ができない局面に頭を抱えることに。
なおかつ中飛車ゆえに44歩や66歩から角道を閉じることもしないので、初段までに多い右四間飛車をも避けることができる。
つまり過去の私がこれをされると、封殺されるのです。

効果はありました。
・序盤から角交換する戦法が得意な相手に、不得意を強いることができる。
・それらの対策をしなくてよくなり、他の勉強に時間を回せる。
・当たる戦型がさらに限られたので、必然的に経験値はよく当たる戦型に集中する。

「はいはい。またこの戦型ね」

そうやってどんどんと中飛車の経験値が溜まっていくのを感じる中、気付けば私の達成率は、1級の50%を超えていました。

中飛車の時代 「相振りはクソ」編

1級50%を超えると、お相手もさらに強くなっていきます。

当たり前です。1級の50%を超えているのは、そのほとんどが初段になるために本気で勉強して、かつその成果を発揮している方々なのですから。

調子によっては、初段や二段にも勝つことがある。
いわば初段予備軍です。
そういった人達と戦っていくことになります。

「ここから先、達成率を上げていくためにはもう一段階自分を強くしないといけない」
私はそんなことを考えました。

さて。
自分の棋力をもう一つ上の段階まで引き上げるために、私はこれまで逃げ続けた『あるモノ』と向き合わなければならないと感じ始めてきます。

私の達成率をことごとく下げ続け、常に足を引っ張る忌まわしき存在。

そう。
相振りです。

「お前が振るなら俺も振る!」とか言ったの誰よ…。

というのも、先手番だとこちらが58飛と回った状態で振られると、相振りを回避することができません。

また、以前までなら後手番で右四間飛車などの居飛車を無理やり使って、対抗形にしていたのですが…。
初手76歩に対して2手目54歩とすると決めた以上、それもできなくなりました。

つまり相振りから逃げられなくなったのです。

三間飛車は過去に自分が使っていただけ、まだ戦い方がわかります。(それでも勝てない)
しかし相中飛車は本当に感覚が掴めませんでした。

56歩とすれば、相手から54歩とされる。
58飛とすれば、相手から52飛とされる。

「こ、ここ、こっちの方が先手でしょ!? 相手は私の動きを真似してるだけなんでしょ!? 絶対に、負けないんだからぁ!!」

そう虚勢を張って、相手の不合理を突こうとするも完敗する。
もうわけわかんない。

対抗形なら勝率は6〜7割ほどあるのに、相振りだと2〜3割しか勝てない。
なぜこんなにも自分は相振りに弱いのか。
理由もわからぬまま、しかしこれを乗り越えられなければ初段になれないと、涙を飲んで足掻き始めました。

Kindleにある相振りの絶対手筋105を何周も解きました。
戸辺先生の1手ずつ解説する相振り中飛車を何周も読みました。
先手中飛車とシナジーの高いとされる、あくとさんの電子書籍である相中飛車3三桂戦法4四角型向かい飛車にも手を出しました。
そして私の相振りの勝率は――上がりませんでした。

「相振りはクソ」
いつしかそれが、この時期の私の口癖となっていました。

※注意※
上記の相振りを扱った棋書はどれも素晴らしいものであり、合う人には必ず参考になります。私が相振りで勝てない理由は定跡ではなく別のところにあり、後に発覚します。

中飛車の時代 穴熊覚醒編

あれは夏から秋にかけてのことだったでしょうか。
なかなか勝率の上がらない相振りに頭を悩まされていた頃でした。

気分転換に将棋道場へと赴いた私は、自分よりも遥かに強い有段の方々にお手合わせしてもらっていました。
日頃ネット将棋しか指さない私には、この上なくいい刺激になってましたね。

特にその道場で対局する人のほとんどが、こちら56歩と中飛車宣言をすると居飛車を指してくれるので、伸び伸びと指すことができていました。
たまにくる相振りはボコボコにされます。

そこで私はふと気付きます。
基本は負け越すのですが、とある戦型を指す時においてのみ、異常に高い勝率を誇っていることに。

その戦型とは、中飛車VS一直線穴熊における相穴熊です。

中飛車のポイント 一直線穴熊対策から

対一直線穴熊の相穴熊戦においては、自分よりも遥か格上の有段者の方に一発入ったりしていました。

私は考えます。
なぜ相穴熊の勝率だけが異常に高いのか。

最初は、中飛車と穴熊の相性がいいからだと思いました。
中飛車は5筋の位を取る分、5筋の歩を切りやすいのです。
『53のと金に負けなし』とはよく言ったもので、5筋にと金を作れれば一気に勝ちに近づけます。相穴熊戦においては大きな強みでしょう。

しかしそれだけではなかろうと、私は勝った将棋の棋譜を思い出しながら、ピヨと一緒に検討します。
そして驚くべき真実に辿り着きました

私は相穴熊戦の終盤において、相手の攻めを一切受けていなかったのです。

無視。シカト。オールスルーです。
「相手よりもこっちの攻めの方が速ぇ!!」とばかりに、ノーガードで殴りまくっていたのです。
俗に言う、『穴熊の暴力』です。

局面部分図
あくまで一例

簡単に説明します。
例えば上の局面のように48歩と金取りで歩を垂らされたとします。
中途半端な受けだと攻めが早まりそうと判断した私は、相手と自分のどちらが早く玉に手が届くかと考えます。
手番はこちらなので、私の方が先に王手できますね。

それを確認次第、頭の中から受ける手を全て排除して100%攻めの思考に切り替えました。

自陣を見ない。
例え金を取られようが、と金を作られようが全てをシカト。

寄せの手筋200を解くように。
五手詰めハンドブックを解くように。
ただひたすらに寄せと詰み筋のみを考えます。

この局面で攻めるのが正解かは知りません。
受けた方がいい場面だったかもしれません。

けれども、
・読みの全てを攻めに投入できる
・苦手な受けのことは一切考えない。
これがあまりにも私には大きかったのです。

私は初心者の頃、穴熊という囲いは序盤でガチガチに囲って、その固さをもって相手の攻めを防ぎ切り勝つものだと思っていました。

しかし実際はその逆。
玉の固さではなく遠さを活かして、王手のかからないZの形(絶対に詰まないの略)を作り、終盤で相手の攻めをできる限り手抜く――つまり受けずに殴りまくる囲いだったのです。

上の例のように、王手がかかるまでの単純な速度計算がしやすいのも大きかった。
(美濃囲いの時は、美濃崩しの手筋で自分の読みよりも早く玉に辿り着かれるケースが多く、また無理攻めの王手を受け損なって詰まされることもよくあった)

「つまりこちらの玉に辿り着かれる前に、相手を殴り切れればいいんでしょ?」というわけです。

この戦い方が、私に非常に合っていました。
思えばやばボーズ流を使っていた時から、相手の攻めを無視して殴り勝ちするケースが多かったように思えます。
相手よりも自玉を固めて、終盤で相手の攻めが自玉に辿り着く前に、ひたすら攻めての競り合い勝ち。
それが私の棋風というか、将棋の勝ちパターンとなっていました。

自分の勝ちパターンが見えてくれば、負けパターンも見えてきます。
・相手よりも自玉が固くならず、受けざるを得ない展開になり攻め潰される。
・受け間違えによる自陣の崩壊。
・序中盤に時間を使いすぎて、終盤で相手の詰みと自玉の詰みを読む時間が取れない。
などなど。

私はここで、自分が相穴熊戦に強い理由だけでなく、なぜ相振りに対して弱いかにも至りました。
相振りは相手からの攻めを受けるターンがあり、かつ玉頭からの攻めになるので中盤での受け間違い=自陣の崩壊を意味するからです。

対抗形は、まずお互いの攻め駒をぶつけてさばき合います。
ここで多少の受け間違いをしても、駒損にこそなりますが終盤までは辿り着けます。

しかし相振りでは、顔面に一発もらえば鼻血ブーでノックアウトです。
相手だけ終盤戦に入り、こちらはひたすら受けることになります。
相手が無理攻めをしているとわかっていても、受けが苦手なために受け間違い、状況が悪くなる。
それが私の相振りにおける負けパターンだったのです。

さて、ここで整理させてください。
・私は穴熊に囲えば攻め合い勝ちしやすい。
・相振りは相手の攻め(例え無理攻めでも)を受け間違えると、自玉に直接響くため一気に悪くなる。

私が選ぶべき相振りの戦法。
もうわかりましたね?

中飛車左穴熊です。

36歩から駒をさばき合う狙い。
自玉の方が固いので、どんどん駒をぶつけたい。


そうして私は、
対三間飛車、対向かい飛車、さらには相中飛車でさえも、相振り全てにおいて中飛車左穴熊で対抗するようになりました。

基本的なことは杉本先生対振り革命中飛車左穴熊を購入して学びながら、YouTubeで中飛車左穴熊の動画を探して内容を棋譜並べする。

さすがに相中飛車で左穴熊にする動画はあまりなかったので、SNSや将棋ウォーズで中飛車左穴熊を得意戦法とする高段の方の棋譜を検索しました。

66銀だと穴熊に組みやすい。

結果、66銀の形にしてから角道を開ければ、角交換の乱戦を避けつつ穴熊にしやすいことを知りました。

そうして相振りの全てを左穴熊にして、対抗形の形に持っていくようになり。
私の相振りの勝率は、遂に5割を超えるようになったのです。

もちろん変えたのは相振りだけではありません。
私は居飛車相手にも、できる限り穴熊を目指すことにしました。

例①
例②

中飛車穴熊の棋書は、川島さん中飛車穴熊で勝つを買いました。

しかし載っているのは銀対抗の形がほとんど。
なので中飛車左穴熊と同じくSNSや将棋ウォーズでの検索から、中飛車で穴熊に囲っている方の棋譜も参考にしていました。
(中飛車左穴熊を使っている方の中で、中飛車穴熊党の方が一定数いたのが助かりました)

それだけでなくピヨと一緒にどんな攻め筋が有効かを検討しながら、中飛車穴熊について自ら研究を始めました。

こんな感じで考えや発見をメモに纏めていました。


自分の勝ちパターンを理解すると、指す手にも影響が出ます。
以前よりも勢いのある攻めになっていき、攻め倒せるケースが増えてきました。
この頃になると次の一手形式の手筋問題を解きまくっていた効果もあって、中盤に指し手が見えなくなることも少なくなっていました。

「ほへー。穴熊つんえー」
穴熊を使っていると、一度も王手をされることなく殴り勝つことだって珍しくありません。
ハマった時のあまりの強さにあんぐりと口を開けながら、私は対局ボタンを押していきます。

そうして中飛車穴熊、中飛車左穴熊を使い始めて1〜2ヶ月後。
私の達成率は、いつの間にか80%を超えていました。

中飛車穴熊で勝つ
対振り革命中飛車左穴熊

中飛車の時代 仕上げ編

実は達成率80%を超えたあたりで、私生活が忙しくなり将棋ウォーズの対局に入れなくなりました。
しかし詰将棋と次の一手問題は欠かさず解いていましたし、時間があるときは将棋クエストの方で対局しながら序盤のパターンや戦法の方針を整理する作業をしていました。

例えば44歩を突いて角道を閉じてこない三間飛車が相手だと、穴熊に囲う前に戦いを起こされやすいので天守閣美濃を採用したり。

天守閣美濃
玉が3段目にいるため、終盤は遠さを活かせる。


相中飛車でも、相手の左銀が44にいくか64にいくかで戦い方を変えてみたり。

45歩から金と桂馬での押し上げを研究中。


超速相手に普通の銀対抗の形だと主導権を握れないので、主導権を握れるような面白い指し方はないかと探しては研究してみたり。
(まだサンプル例が少ないので成立するか不明)

そんな感じで自分が指しやすい、または方針がわかりやすいと思う序盤パターンの研究と整理を行っていました。

そして今年の2月に入ると共に、私生活がいったん落ち着いたので将棋ウォーズを再開。

――二週間が経った頃。
遂にこの時がやってきます。

長かった(号泣)

そう。
私は1級帯という魔境を抜け出し、初段の資格を手にするに至ったのです。

まとめ

前編、後編の内容を纏めます。

石田流→やばボーズ流+右四間飛車
『理由』
・石田流に組めるケースが限られる。
・受けが苦手でノーマル三間の勝率が上がらない。
・覚えることが少なく攻めやすい戦型がいい。

やばボーズ流+右四間飛車→中飛車
『理由』
・戦法を一つに纏めたい。(定跡の勉強を減らしたい)
・棋書がそれなりにある戦法がいい。
・自分から攻めれる戦法がいい。
・これまで勉強した振り飛車の知識が無駄にならない。

中飛車→中飛車穴熊+左穴熊
『理由』
・自分の勝ちパターンと負けパターンを分析した結果、穴熊が得意なのではと思った。
(玉が遠いので相手の攻めを無視しやすい)
・できる限り対抗形の形に持っていける。

どうだったでしょうか。
「私はこういった経緯と考えで戦法を変えていった」というのが、皆さんに上手く伝われば幸いです。

個人的な意見になりますが、どの戦法を使っても初段にはなれると思います。
ただもし今使ってる戦法に迷いがあるなら、なぜ自分は戦法を変えたいのかという理由を言語化することをおすすめします。

自玉が薄いのが不安なのか。
相手に先行して攻められるのが嫌なのか。
定跡を覚えるのが苦痛なのか。
そうして言語化してみると、自分がどういう戦法を望んでいるかわかってくるかと思います。

また自分の得意な形や不得意な形勝ちパターンや負けパターンなんかを分析していると、どういった戦法が合ってそうかというものが見えてきたりもします。

例えば、
・相手の攻め筋を読み切るのが好き。
・玉はしっかり囲いたい。
・定跡の勉強は苦にならない。
・乱戦になると負けやすい。
という方には、四間飛車などが合うんじゃないかと思います。

例えば、
・相手の嫌がることをしたい。
・力戦は歓迎。
・定跡の勉強が苦痛。
・終盤は得意だが、序盤定跡の段階でいつも悪くなる。
という方には、アヒル戦法や筋違い角などの奇襲戦法、袖飛車なんかが合うんじゃないかと思います。
私に使うのはやめてね?

自分の特性を理解した上で、それに当てはまる戦法を使えばどんな戦法でも強くなれるはずです。

もちろん、一番はその戦法に興味を持てるか、使っていて楽しいかです。
私の場合、やばボーズ流や中飛車を勉強する際、まるで新しいオモチャを買ってもらった時のようにワクワクしてました。このワクワクが上達の原動力になります。

また、今使ってる戦法の知識は決して無駄になりませんし、戦法を変えてみて合わなかったとしても、その経験はどこかで役に立つはずです。

私の場合は三間飛車ややばボーズ流を使っていたからこそ、中飛車から3筋に振るのに抵抗は全く感じませんでしたし、丸山ワクチンなどの角交換形にも初期からある程度対応できていました。
さらに中飛車穴熊による4筋からの攻め筋は、右四間飛車の経験が活きています。

いろんな戦法に触れれば、将棋の幅が広がるのだとこれらの経験から教えられました。
なので気になる戦法はどんどん試してみていいと思います。

ただし注意点として、初段を目指すのであればしっかり勉強時間が取れる方でも、同じ戦法を3ヶ月以上は使い続ける必要があります。
1〜2ヶ月ではなかなか結果が出ないし、戦法の基礎も身に付きません。
勝てなくても仕方がないと開き直って、根気強く行きましょう。
私は将棋クエストで練習してました。

余談

初段に上がった現在は、美濃崩しの勉強をしています。
中飛車左穴熊(または左玉)を使った際に、相手の美濃囲いを崩すためです。
しかしその副次効果として、私の美濃囲いが少しずつ固くなってきました。
美濃崩しによる相手からの攻め筋を学んだので、攻め筋をしっかりと読んで受けることが増えたからです。

もともと、『穴熊も使える』と『穴熊しか使えない』というのは大きな違いがあると思っていたので、これを機に基本の美濃囲いもしっかりと併用していこうかと考えています。

それをキッカケに受けの技術を鍛えるべく、しのぎの勉強も少しずつ始めています。
もし穴熊に限らず、薄い囲いでも相手の攻めを防げるようになったら、いつか居飛車にも手を出してみようかなと思ってます。
居飛車の中だと早繰り銀に興味がありますね。

また、振り飛車穴熊を使うなら三間飛車穴熊も習得してみたいので、一周回ってノーマル三間の勉強をするかもしれません。

達成率の呪縛から解き放たれたので、しばらくは遠回りでも自分の好きな勉強をしていこうと思います。
数ヶ月後には、「居飛車こそ至高」とか言ってる可能性もある。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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