ヒミツノミヤコ-出発進航!ぽっぽっぽ!〜ごきげんな未来行き〜
最初に書くのはnoteを始めるきっかけとなったこたにゃんさんが所属するヒミツノミヤコから、2020年12月発売のアルバム。
CDのジャケットを開けるとまずニクい演出。
ミヤコが好きな人ほど感慨深いデザインと同時に、デザイナーもまたちゃんとミヤコを愛してる事が伝わります。
サブスクにはサブスクの良さがある一方で、CDにもまたちゃんと良さがあるとしっかり伝わるデザインです。
ミヤコファンは既に手に取ってる…とは思いますが、この詳細を書くと魅力が減ると思うのでまずは買った人がそれぞれに感想を持って欲しいと思います。
1、ロマンチックゆく春
まず何より言いたいのは
音が良い!
過去のミヤコのマスタリングに関しては時に物申したい時がありましたが(それもまた味がありますが)、今回はよりボーカルがクリアに、楽器陣はボーカルの邪魔にならないのにちゃんと際立つバランス。
曲としてはポップさの輝く、白馬の王子はいらないに近いイメージ。
新しい春の到来を感じます。
「季節を迎えに行く」という歌詞と、C→D→E♭→Emの細かなコード進行で1歩ずつ踏み出していくような表現が好きです。
跳ねるようなシンセがスキップで歩くような煌めきワクワク感を演出する部分もあり、2番Bメロのスネアが春に対する逸る気持ちが加速して行く様を感じます。
1曲目からアルバムとして始まる物語とミヤコらしさの演出にピッタリ。
2、ミヤコヲドリ2〜威風堂々☆新たな挑戦〜
ボーカルはもちろんですが、セリフやラップ、コーラス、各楽器陣、打ち込み、ライブでは振り付けもありと、情報量の多い曲。
このとっちらかった1曲にこそミヤコの宴としてのコミカルな魅力が全部詰まってます。
ポップさが前面にある1曲目とはまた違うコミカルなミヤコらしさを感じます。
特筆したいのは悪茄子のラップ。
悪茄子は2018年の12月に1度脱退するも2020年6月に再加入。
他メンバーの脱退もあり当時は大きな再編がありました。もちろんいなかった時期に作られた曲には悪茄子のパートはありません。
再加入後はコーラスやツインボーカルとしてもパートの再振り分けはありましたが、この曲は悪茄子の見せ場としてラップがあります。
ここで改めて悪茄子がちゃんとヒミツノミヤコに戻ってきたんだなと、
それはきちんと作品に落とし込むことによって確かになるものだと感じました。
3、メンヘラポップコーン
文字通りメンヘラポップをテーマにした曲なんですが、メンヘラポップとはヒミツノミヤコの代名詞。
挫けても折れない、前向きな決意。
誰しも感じる悩みや苦しみをテーマでありながら、
「だけど信じたい私を!」
という信念の強さ。
先の2曲とはまた違う、ミヤコらしさの真骨頂です。
やり返せ!とすら過激な所も清々しい。
ここで言いたいのはベースのジャパ二ーズ田中さん。
フレーズとしては他の曲のほうが難しいものがありますが、この曲のオクターブ奏法が心境の焦りや感情の起伏を感じます。
そして各所のスライド奏法。
時に楽器は女性になぞらえる事がありますが、ジャパさんのそれはまるで愛撫。
この1曲に込められた繊細さと大胆さ、是非ライブでジャパさんの色気を感じて欲しいです。
4、トーキョーディスコ
この曲もジャパさんのベースプレイが目立つ1曲。
ミヤコ流ディスコナンバー。
MVでは小梅ちゃんが主役でファンと一緒に撮影する新しい試みも。
小梅ちゃんを筆頭にそれぞれが個性的に踊り出す様子が脳裏に浮かびます。
5、乙女の祈り
パイプオルガン(シンセ)で始まるこの曲は教会でのお祈りを彷彿するゴシック色の強い1曲。
ただしお祈りは誰かの幸せではない。
黒い感情、嫉妬と憎しみの渦巻く祈り。
夜中悲痛に叫ぶ少女の祈りは一体誰が救えようか。
ギターのフレーズは、まるで少女の祈りに応えるかのような派手でかっこいいフレーズ。
ライブではレイ君の派手な動きや感情的にナットの上を掻き鳴らすのも印象的(歪みでキィーン!って鳴るやつ)。
ライブの度に重厚になる打ち込みが一層世界観を後押ししています。
6、心海水族館
この曲はトーキョーディスコと同じくヒミツノミヤコ初期の頃から復活させた曲。
当時の編曲は知りませんが今のセットリストに入れても違和感なく、だけど打ち込みの独特な雰囲気もあり表現力の流石の一言。
ボーカルぼけちゃんの呼吸の仕方1つでこの心海の息苦しさの表現の深みを感じます。
7、向日葵のかげおくり
いわゆるぼけちゃんコード(Am→Em→FM7→G)の曲。
ソロになるとぼけちゃんが多用するこのコード進行ですが、今回のアルバムだとこの曲だけ。(過去曲なら花爪草が同じ進行ですね)
だからこそ原点に帰ってきた気がして好きな1曲です。
マイナーコードのノスタルジックさと歌詞の焦燥感、エレアコでの繊細な表現がマッチしています。
8、汽笛
コード進行自体はほとんどがシンプルな循環コードですが、ドラム、ベースが鼓動のような足音のような希望と期待を胸に歩を進める歌。
ラスサビになって感情が爆発するような各パートに拍車がかかります。
それぞれが違うからこそ、人生を交わったり違えたりする奇跡。
シンプルさ故に心に直接響きます。
9、月の船のジュリエット
ねぇ、魔法がとけてしまったら…
ねぇ…?
まるで自分に語りかけられてるような歌詞。
タイトルも幻想的で、今までぼけちゃんが書いてきた夜とは違う、夢の中にいるような心地です。
10、虹の歌
こんな熱い展開があるだろうか。
序盤はシンプルな構成、少しずつ仲間が増えていくようにギターやベースの音が順番に入っていく。
過去の曲の歌詞やギターフレーズを各所に散りばめられた演出が今までヒミツノミヤコが歩いてきた道として走馬燈のように蘇ります。
苦難も挫折も、1度はバンド自体崩壊しかけた事もたくさん乗り越えてきたからこそ今の輝きがある。
そう感じる1曲。
走れ!走れ!
11、お花のブーケ
最後にこの曲の再アレンジが入ったことに最初は戸惑ってましたが、よく考えたら悪茄子がかつて書いたこの曲で締めるのは納得します。
ヒミツノミヤコは最後ちゃんと笑顔で締める。
でも、なんだか涙でぐしゃぐしゃになりながら笑ってるメンバーが見える…ような気がします。
最後に
前回はファーストフルアルバムとして、今までのヒミツノミヤコの総集編、
また新しい第二期ミヤコの名刺としての側面が強かったです。
それに対し今回のアルバムはそこから更に1歩2歩、それ以上に進んで行くヒミツノミヤコ。
それはここで終わりじゃなくこれからもどんどん予測不可能なバンドとして進んでいく可能性を秘めたアルバムでした。
そして、今いるメンバーは楽器歴の長い技術の確かなメンバー。
それ故に元○○のジャパさん、元○○のこたにゃんさんという昔のバンドの肩書きがついて回っていたと感じていました。
だけど今回のアルバムでよりヒミツノミヤコのジャパ様、ヒミツノミヤコのこたにゃんとして結束力が強くなったのではないかと思います。
そしてそれ以上にまだ見ぬ期待を感じます。
来年、再来年は今よりもっとたくさんの人を巻き込んで行って下さい。
何度傷だらけになってもしっかり足を踏み鳴らしながら歩いていくヒミツノミヤコが見えます。
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