ABRACADABRA

初投稿。

昨年行きたくても行けなかったBUCK-TICKのフィルムコンサート「BUCK-TICK TOUR2020 ABRACADABRA ON SCREEN」の配信チケットを購入し視聴。

年末にあったTHE DAY IN QUESTIONは見ていたので、何となくそれとセトリが似ていることは把握済みでしたが、改めて見ると気づくというか感じる部分があったため筆をとった次第。

配信開始とともにSE、「PEACE」が始まる。

物静かなんだけど、シンプルにワクワクするSE。綺麗で宇宙的で神秘的。巻き起こる複雑な感情を通り抜けて辿り着く期待感。これも今井マジックというとこでしょうか。この期待感は購入したCDを手に取ってプレイヤーにCDを入れて曲が流れ始めるとき、本屋さんで読みたい本を買って一ページ目を開くその瞬間のそれとすごく似ています。

そして…これは年末公演で初めて知ったとき驚いた「月の砂漠」による幕開け。

これによって一気に"物語の幕開け"感がアップ。厳密に言えばこれから始める物語のプロローグ的な印象。

また「ABRACADABRA」という言葉と曲のタイトル「月の砂漠」の親和性の高さからもこの幕開けの仕方はライブという一つの物語のストーリーの組み立て方として絶妙だと感じました。何となくですがアブラカダブラって言葉って暑くて乾燥してる、まさに砂漠地帯で聞けそうな言葉ってイメージが強くて。

「ケセラセラエレジー」で物語のスタート

プロローグ明けて、この物語の始まり感。心の底から一気に湧き上がってくるものがあります。”進め未来へ”という歌詞は今の世の中に向けてだったり、物語としてもまさしく始まり感があります。

続く「獣たちの夜」

これはもうYOW-ROW様の仕事っぷり。もともと獰猛な牙を持っていた獣たちがアップデートされ、より獰猛に、鋭利になった印象。

スタートした物語もここいらで主人公以外の主要キャストがここで出てくるような印象ですね。

次に「SOPHIA DREAM」が来るあたり、その選曲の緩急も抜群。この曲何気にアルバムで一番気になる曲。メロが2種類しかないのも斬新。

その後進んで行く物語もバラエティに富んだ楽曲たちがしっかり彩ってくれてます。

「MOONLIGHT ESCAPE」あたりから物語も佳境。そして「ユリイカ」！

ここまでくるともう物語は大団円へと向かっていきます。アルバム制作時にも「ユリイカ」をラストに持ってくる案が出るのも納得の爽快感。物語もクライマックスでこちらの気持ちもかなりいい感じで浄化されているところです。

ただ、ここで最後のどんでん返し。一筋縄ではいかないのがBUCK-TICK

「ユリイカ」のあとにやってくる「忘却」

僕は今回この「月の砂漠」から始まるセットリストを通して改めて「忘却」という曲の意味合いの大きさに気付かされたような気がしてます。

先程から続いていた物語の流れ

「月の砂漠」→プロローグ～「ケセラセラエレジー」→物語が動き出す～「ユリイカ」→大団円

ここに来て「ユリイカ」の次に位置する「忘却」。ここで立てた仮説はこう。

”もしも「ケセラセラエレジー」から「ユリイカ」までで進んでいた物語の時間軸が現在ではなく過去なのだとしたら”

本当の物語の時間軸における"現在"はこの「忘却」なんじゃないかって。

インタビューでも櫻井さんは

”いろんな出会い別れがあり、それは喜びであり悲しみなんだろう、それも自然の流れ”

”この世に生まれていろんなことがありましたね、疲れましたね、じゃあ帰りましょう”

”そういうストーリーができればいいな”

というような旨のことをおっしゃっていて。

つまり「ABRACADABRA」という物語を最後の「忘却」で俯瞰しながら眺めつつ、その物語の主人公は“最期”を迎えようとしてるんじゃないかなって。ここでもバンドに共通してずっと根付いている”生と死”というのを感じずにはいられません。

この一連の物語を見ていくとアルバムの最後に位置するこの「忘却」という曲の深みをより一層感じるのではないでしょうか。

そしてアルバムのラストとしては「忘却」でしたが、

今回このON SCREENの本編ラストは「堕天使」のカップリングとして収録されている「Luna Park」。

これは差し詰め、この物語のエンディング曲というところでしょうか。でもこれもぴったりだと思います。物語(時間軸としては過去)のクライマックスに来る「ユリイカ」のイメージからも伝わりますが、この物語、多分相当なファンタジーのはずなんです。その物語をそっと優しく包んでくれるこの曲がここに位置するのもまた必然かつ当然なのかもしれません。最後に「おやすみ」という言葉が続くのも、物語の締めとしても、最後に「忘却」で過去を俯瞰で見つめている現在の主人公が迎えようとしているその最期にも優しく響いている印象を受けます。

今この文章を書いている現在がAM2:33…明日も仕事なのでアンコール部分は今回割愛…あくまでも「ABRACADABRA」が見せてくれた世界観について書きたくなったところだったので、今回はここまで。

ただ本当に一つのステージをここまで思いを巡らせながら見たことがなかったので、非常に印象的で、これからも大事に聴き続けていきたいアルバムに出会えたことを嬉しく思います。あとこれが初投稿で書けたのも良かったかな。

ということで今回はここまでです。

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