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姫路で出会ったユニセフ案内人

 4月30日姫路駅の駅前にて。
 この日は半日掛けて世界遺産の姫路城を見て回りへとへとに疲れていた。
 駅に戻って荷物を引き取り、ホテルに向かおうとしていた。

 青いジャンパーを着た女性が駅前で行き来する人に印刷物を配っていた。受け取る人はほとんどいない。みんなGWに入って気分が高揚としているように見える。ジャンパーにunicefと文字が見えたので、私は応援の気持ちで差し出された印刷物を受け取った。
 「ユニセフのマンスリーサポートプログラムの活動はご存じでしょうか」
 受け取るだけで行き過ぎる気でいたのだが、その人は半身になって話しかけてきた。ちょっと面倒だなと思ったが、無下にもできず私は立ち止まった。
 「世界には支援が及ばずワクチンを受けられなかったり、栄養不良となったりする子どもたちがいます」
 言葉には熱意が感じられた。真直ぐな気持ちでこちらに向かってきて、これはいい加減な受け答えはできないぞと思った。

 実を言えば、少し前になるがこの取り組みをインターネットで見て賛同する気持ちになり申し込みをしようとした。が、どうもネット申し込みというのが苦手で挫折していた。
 月に3千円にしろ、5千円にしろ人のために身銭を切るのはそれなりの決心がいる。スマホをポチポチしながらその決心が揺らいだのも確かだ。
 それに比べれば対面で体温を感じられる勧誘は受け入れやすかった。
 
 申し込みはネットになるが「任せていただけるなら私の方で入力します」と、滑らかに指を動かす。
 キーボードを操作しながら、支援した金額は寄付金になるので控除の対象となり、確定申告をすれば40%が戻ってくると説明がある。
 それを聞いて喜ぶのはお人好しだろう。40%が控除されるのならと支援金額を倍にした。支援金額を増やすための話術と思えなくもないが、口にする人の人柄で不快には感じなかった。
 
 私は難病の認定患者で、身体に障害もある。これまでたくさんの公的な補助を受けてきた。本当に助けられたし、感謝の念は常にある。それだけにいつかは社会に恩返ししたいという気持ちが以前からあった。
 献血はどうかと担当医に相談したが止められた。私の病気は原因不明なので、輸血によって相手にどんな影響があるかわからない。
 臓器移植カードを持ち歩いているが、役に立つのはもう少し先だろうか。
 ユニセフならたとえわずかな金額でも子どもの命と未来が守れる。社会貢献として悪くない。

 登録が完了すると、その女性は私が手にしていた印刷物を預かり、空欄を記入した。
 そして写真にあるように書き込んだ。

 この人はすでに何度もお礼の言葉を口にしている。それに加えて自分なりの感謝の気持ちを一言添えて表した。なにかの申し込みをして、御礼を一文にして返された記憶はこれまでにない。温かい心遣いがこちらの胸に刺さった。

 今回は関東から兵庫に出向いての城巡りが旅の目的だったが、この体験が一番の思い出になった。

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