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2024.10 香川県の城と言えば

 もし掲題の質問があれば、現存天守を構える丸亀城が正答だろう。六〇mの高石垣が有名だ。では穴場はと問われれば高松城を推したい。
 九月後半の三連休に四国三県の城巡りをした。大洲城、宇和島城、松山城、湯築城、今治城、丸亀城、高松城、徳島城。うち宇和島城、松山城、丸亀城には現存天守があり、天守推しの自分としては欲を満たしたが、今回の旅では天守のない高松城が心に残った。

 主な遺構としては艮(うしとら)櫓、旭門、天守台、石垣や堀、披雲閣などがあり、見所は多い。
 なかでも見学コースの一番奥にある月見櫓は一見に値する。庭園裏の角を曲がると左側に水手御門がある。門戸が開かれた外側には水堀があり、潮の香りがする。これは珍しい。要は船着き場であり、すぐ目の前の瀬戸内海とは舟で出入りできる構造になっている。


高松城 水手御門

 門の奥に進むと月見櫓。築かれたのは延宝四年(一六七六年)というから凡そ三百五十年前の建造物だという。外観に汚れや傷みはなく、白壁の美しさに一歩引いてしまうような神々しさがある。本瓦葺の三重三階で、見た目こそ小ぶりだが三階に入母屋、二階に唐、一階には千鳥と三つの破風が重なり、変化に富んでいて華やかな印象だ。「やはり城を引き立てるのは破風だな」と悦に入る。引き合いに出して申し訳ないが、会津若松城の外観を見たときは扁平な印象があって物足りなかった(個人の感想です)。


高松城 月見櫓

 屋内に入ると無垢の木材で太い柱や梁が組まれて時代を感じさせる。柱の表面は人の手に触れられてつるつるとして黒光りしている。朝早い時間で見学者は自分ひとり。侍たちの息吹が聞こえてきそうだ。急な階段を昇り、三階の狭間から瀬戸内海が間近に見える。殿さまの舟が着くのを見るから「着き見(月見)」がそもそもの由来だという。


高松城 内観


高松城からの瀬戸内海

 いい気分に水をさしたのは、漆喰の白い壁に固いもので線を引いた落書きを見つけたときだ。傘の絵や女性の名前、日にち。この輩は重文指定の意味を学ぶ機会がなかったのかもしれないが、許せない行為だ。
 前日に見学した松山城には落書きが城内に展示されていた。平成の改修で下見板に描かれているのが見つかった。天守が再建された嘉永年間(一八四八~五四)のものと推測される。裃を着ていることから作事奉行ではないかと説明書きにある。面長できりりとした眉が特徴的だ。高松城の輩はまさかこれを見て触発されたなら余りに稚拙な行為だ。


松山城の改修で見つかった落書き

 高松城の近くには「源平屋島合戦古戦場」があり、那須与一が扇の的を射落とす際に馬を立たせたと伝えられる駒立岩を見るのも一興だろう。


那須与一 案内板

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