西部警察Part.Ⅰ104話 栄光への爆走
宝石店を襲った犯人の車は、パトカーの追跡を驚くべきテクニックで振り切って逃走。やがて、前科四犯の溝口が浮かび逮捕され、さらにバーを経営する佐伯君子という女が浮上。君子の息子の秋元昇は日本を代表するトップレーサーだった……。
(男たちよ永遠に…「西部警察」写真集より)
「飛ばせ!飛ばすんだぁ!」
特徴ある溝口の声から、逃走車フェアレディZとパトカーのカーアクションが始まる。
パトカーの後期330型グロリアが、コーリングでクラッシュ。
このグロリアはタクシー上がりのようで、デコボコになった車体からオレンジっぽい色が微かに見える。
それにしてもスタント前提の車は再塗装が雑。このグロリアも、ボンネットのエンブレムが塗りつぶされているのが可哀そうだ。
佐伯君子役は高峰三枝子さん。言わずと知れた大女優。
鳴り物入りで出演された今回の話だが、脚本のせいか、セリフに違和感を持つ箇所がある。西部警察の話の中でも伏線が多数ある場合、得てしてこのパターンがあるのは仕方ない。
佐伯君子の息子の秋元昇役は、矢吹二朗さん(放映当時のクレジットは二郎)
アクション俳優で名を馳せた方だが、この話ではカーアクションをする役柄。犯罪人の実母を疎ましく思い、時折見せる冷ややかな表情が印象的だ。ちなみに矢吹さんといえば、高倉健さん主演の映画「新幹線大爆破」で救援新幹線の運転士での姿が今でも忘れられない。
秋元昇の日常シーンでは、レース仕様のガゼールが登場する。
ガゼールといえば小暮課長のオープンカーだが、この話が放映された当時、石原裕次郎さんは病気療養中だったため、課長のガゼールは姿を見せない日々が続いた。休車中の課長ガゼールの代演を果たしたともいえる。
佐伯君子が元締め犯人グループに殺されそうになった頃、秋元は最後の逃走に挑む。
何といっても幅28ⅿの運河を飛び越えるシーンが見ものだが、見ているだけで恐ろしい。
放送ではうまく飛び越えたように編集しているが、実際は着地に失敗して車が1回転している。とても成功とは言えないシーンであり、一歩間違えれば確実にスタントマンの命に関わっていた筈だ。こんなに大変な技を使って逃走しようと思っているのに、あっけなく大門団長のマシンXに追いつかれるのは滑稽であった。
犯人グループとの格闘の際、大門は命を守るため、秋元をいったんは逃がす。しかし、佐伯君子が死んでしまい、犯罪行為を見逃すわけにはいかない大門軍団は秋元の逮捕に向かうのだった。
秋元が名残り惜しそうにヘルメットを置くシーンがせつない。
親が犯罪者だったため、息子も巻き込まれてしまう無常さ。秋元が佐伯君子を理解しようとすることはなかったが、見えないところ繫がっている親子の情が垣間見えて良い話だった。
伝説のカーアクションも含め、私の中では「栄光への爆走」は、西部警察の中でも神回の一つ呼べる作品である。
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