わたしの夏2024
北海道に行ってきた。
暑さにめっぽう弱いわたしが、北の果てを夏の旅に選ぶようになったのはここ数年のことだ。
本州と比較すると涼しいのはもちろん、雄大で豊かな自然は美しいし、澄んだ空気と水は心を浄化してくれる。動物もたくさん居るし、なにを食べてもご飯は美味しいし、人が少ない。最高じゃないか。
わたしは漫画やアニメがだいすきで、中でも数年の間毎話たのしみにしていた”ゴールデンカムイ”の聖地だ。
そう。冒険・歴史・文化・狩猟グルメ・ギャグ&ラブ 和風闇鍋ウエスタンである。
今回は新千歳から苫小牧(ドッグスレッドの聖地でもある)の王子製紙の工場と曇天の津軽海峡を横目に、白老、洞爺湖、有珠山、伊達市、支笏湖に行ってきた。
旅に行っても、普段とすることはあまり変わらないので、ごはんをしっかり食べて、ぼーっとしたり、散歩したり、ゆっくりと本を読んだり、北海道の植物観察や植物採集して押花にしたり、のんびりと過ごした。
夕暮れ時の洞爺湖は、見渡す限り深いブルー一色で本当に美しかった。
そしてここでは珍しくわたしがこれは絶対したい!と言い張り、朝からホーストレッキングをしてきた。
数年前にクロエ・ジャオの”ザ・ライダー”を観て、馬と人間の関係性について興味を持ち、馬の美しさとしなやかさに心惹かれ、原風景の美しさに涙し、いつか雄大な自然の中を馬で走ってみたいと思っていたからだ。
クロエ・ジャオは日本の漫画オタクで、幽☆遊☆白書(というか冨樫先生の作品)に大きな影響を受けているらしく、高校時代のあだ名が蔵馬だったらしい。
冨樫義博展にも、他の漫画家からのコメントに紛れてひっそりと彼女が長文のコメントを寄せていて、わたしはここでひとりテンションが爆上がりしてしまった。
早口でこのコメント述べたんだろうな…と思うと親近感しかなかった。
話が大きく反れたが、とりあえずそんなこんなで念願のホーストレッキングをしてきたのだ。
間近で見る馬の大きさと たくさんの馬たちにかなりビビりながらも、馬の観察をしてみると顔立ちも骨格も性格も一頭ずつ全く違うじゃないか!と思った。
なんとなくあの子やさしそう~あの子がいいな~と思っていた、黒い馬ローラがわたしの相棒だった。
実際に馬に乗ってみてわかったのだが、馬は賢い。
23歳というおばあちゃん馬のローラは、ビビり散らかしていたわたしに合わせて山の中をかなり慎重にゆっくり歩いてくれていた。
そして、わたしの「ローラ、goだよ~」「ローラ、そっちダメだよ~」という曖昧な指示にも、耳をピーンと後ろに傾けてくれ、きちんと理解していたのだ。
馬は、乗せる人のことを乗せる前にじっくり観察しているらしい。
たぶん「こいつ相当ビビってるな~あまり揺れないようにゆっくり歩いてやるか~」なんて思っていたのだろう。なんて賢い動物なんだ。
すこし困り顔の、しなやかで美しい馬ローラに見せてもらった、山から見下ろす洞爺湖の景色は最高だった。洞爺湖の美しさと、ここまで連れてきてくれてありがとう~の気持ちで涙が出そうだった。
ローラの背中にすこし慣れてきて余裕の出てきたタイミングで、ホーストレッキングは終わり。
「ローラ、長い時間乗せてくれてありがとうありがとう~」と伝えるわたしに見向きもせず、すごい勢いで草をドカ食いしていた。食いしん坊馬。
馬に乗って自然の中を駆け抜けるなんてことはもちろんできなかったけれど、なんだか胸がいっぱいになったホーストレッキングだった。
旅の最後に訪れた支笏湖にはとてもびっくりした。
視界に広がった瞬間 神秘的な美しさと空気の神聖さに「これぜったいカムイいるね?」と息を呑んだ。
支笏湖はウイルクが金塊を沈めた場所であり、房太郎が潜っていたところ…なぜだかそわそわしてしまう。
人生で初めてスワンボートに乗った。普段こういった類のものはぜったいにしたくない派(こわいので)なのだが、水質確認したい!という夫のひとことにより
「まぁ確かに...本当に金塊見れるかもしれないしね?房太郎潜ったところだしな...」と同乗に渋々承諾。
日本でも2番目に深く、水質1位と言われている支笏湖の透明度はすさまじく、このまま湖底に吸い込まれてしまうのではないかと恐怖を感じるほどだった。
支笏湖の持つパワーや支笏湖周辺のあの清澄感、気温が一気に下がる感じ、山間から差す光、カムイが居るとしか思えない場所であった。
金塊はもちろん見つけられなかったが、素晴らしい景色を目に焼き付けることができたので満足だ。
旅はやっぱり良い。暑さで鈍った五感を取り戻すことができたように思う。
来年の夏は釧路にでも行きたいなと思っている。