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海外のような環境で自分と向き合い、学生は自分の道を歩みだす|BH CAMPを大学のプログラムに導入して起きた変化
大学生を対象にした、短期国内留学プログラム「BH CAMP」。
国内のボーダレスハウスに滞在しながら、ボーダレスハウス株式会社のインターンシップに参加し、英語での実践的なコミュニケーションと異文化理解を体験する実践型プログラムです。
熊本県にある九州ルーテル学院大学は、このBH CAMPを大学の単位認定プログラムとして導入しました。今回は、同大学准教授のシルックさんに、BH CAMPを導入した経緯や参加した学生に起きた変化について、お話を聞きました。
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坂根 シルックさん
九州ルーテル学院大学 人文学部 キャリア・イングリッシュ専攻 准教授
3歳の時に両親とともに来日、以来13歳まで日本で育つ。社会人になり、再び日本に戻り、在日フィンランド企業やグローバル企業、フィンランド政府関連機関で勤務。その後フィンランド語通訳翻訳者を経て、2012年から「博士課程教育リーディングプログラム」に携わる。グローバル企業での実務経験を生かし、2019年より九州ルーテル学院大学にてグローバル教育や異文化理解について学生主体の実践的教育を行っている。
国内でも学生が異文化体験できる場所を探していた
——本日はよろしくお願いいたします。はじめに、シルックさんのご経歴を伺っても良いですか。
私はフィンランド人の両親のもと、フィンランドで生まれました。3歳の時に両親と共に来日し、日本の幼稚園、小学校に通い、友人も日本人ばかり。そんな環境だったので、日本語も自然と身についていきました。
13歳の時に家族でフィンランドに帰ることになりました。当時、フィンランドは外国からの旅行者もそれほど多くない時代で、帰国子女として戻った私は、見た目はフィンランド人でも、あいづちやボディランゲージがすっかり日本のスタイルになっていて、居場所のなさを感じたり、私は何人なんだろうとアイディンティティについて考えることもありました。
——シルックさんのお話を聞きながら、これまで様々な葛藤と向き合ってこられた方なんだなと感じていました。ご自身の実体験がベースにあるのかもしれませんが、BH CAMPを大学の単位認定のプログラムとして導入いただいたのは、どういったきっかけからですか。
最初のきっかけは、ボーダレス・ジャパンという会社を知ったことでした。社会課題の解決とビジネスを両立させるソーシャルビジネスというものがあることを知って、私もこういうことをやりたかったなと深く感銘を受けたんです。
ボーダレスグループのいくつかある事業の中でもボーダレスハウスに魅かれました。
私のいる九州ルーテル学院大学は、少人数教育を大切にしていて、多様性を尊重して地域と世界に貢献できる人材の育成を理念に掲げています。多様性理解のために、どの学科の学生でも参加できる異文化体験プログラムがあり、4か月間の海外留学のほか、異文化圏体験学修として4週間、2週間、2週間未満のコースに分かれていて、期間によって取得できる単位数が定められています。
海外留学にはまとまったお金が必要ですし、そもそもお子さんを海外に行かせることを不安に感じる親御さんもいらっしゃいます。海外に行きたいと願っても叶わない状況が気になって、それなら国内で異文化と出会う体験ができたらと、九州内の大学と連携したプログラムができればと思っていたころにコロナが始まり、形にできずにいました。
そんな中で、ボーダレスハウスを知り、国際交流ができるシェアハウスへの滞在は学生にとって意味のある異文化体験になると思って、代表のりーさんに連絡を取りました。2022年に一人の学生にBH CAMPを紹介したことがきっかけとなり、2023年度から異文化圏体験学修の一つとして、年2回導入しています。
自分の新たな一面を発見し、変わっていく学生たち
——プログラム導入にあたり、BH CAMPのどんな点を魅力に感じていただいたのでしょうか。
海外留学の場合は、どうしてもその国の人との出会いが中心になってしまいますが、ボーダレスハウスは色々な国籍の人が暮らしていますし、社会人、学生といった多様な方と出会えるのがいいなと思いました。
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ボーダレスハウスに入居されているのは日本に関心のある海外の方や、海外に関心のある日本の方たちなので、自分の英語力を不安に感じる学生にとって心理的なハードルが下がるのではないかという期待もありました。
また、本学のような地方の大学に通う学生にとって東京に住むこと自体、貴重な機会だと思います。例えば就職活動の時に、東京は知らない街ではないと思えるのは大きなことですよね。「海外は心配だけど、東京なら良い」という親御さんもいらっしゃるので、学生も挑戦しやすいようです。イベント企画やマーケティングといったインターンシップも体験できることも魅力に感じました。
——参加した学生の方の反応はいかがですか。
プログラムの前後に、参加学生による英語での発表の場を用意していますが、海外に行った学生と同じように、BH CAMPに参加した学生も生き生きした様子で戻ってきます。
実際にボーダレスハウスで、流暢な英語じゃなくても気にせず話している方や、片言の日本語でも堂々と議論している海外の方と接するうちに、英語を完璧に話さなくてはいけないといった思い込みがはずれていくみたいで。私からは、英語を話すことや海外に行くことに少し抵抗感のある学生に、ファーストステップとして「東京で海外の方と一緒に生活してみない?」と薦めています。
また実際にBH CAMPに参加した学生たちが、体験をまとめたスクラップブックを作ってくれるので、ハウス内でのパーティの様子や一緒にご飯を作ったりする日常を知れたり、何より彼らが楽しそうに話す様子を見て、興味を持つ学生もいます。
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——そんな風に参加者から次の参加者へつながっていくのが良いですね。プログラムに参加した学生の変化を詳しく教えていただけますか。
特に印象に残っている学生がいます。もともと英語教師を目指していた男子学生で、オーストラリアに行く予定をしていたけどお金が大変と話していたので、東京でこんなプログラムがあるよと紹介しました。
参加前は、授業でもほとんど発言しない子でしたが、参加後は別人のように変わりましたね。色々な場面で自分を押さえていたんだろうなと今は思います。
ボーダレスハウスでは、自分の何気ない行動やこうじゃなきゃいけないと考えていることに、「どうしてそう思うの?」ってまっすぐに疑問を投げかけられるそうなんですね。日本という慣れ親しんだ土地だけど、海外にいるかのような環境で、日本語と英語を折り混ぜて、人生観や価値観について話をする。自分自身を見つめて、自分の中の新たな一面を発見していく。
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彼はボーダレスハウスでの滞在をきっかけに、「英語を話している自分が好き」と気づき、海外に行くと決めて、その夢に向かってずっと行動していました。卒業後の今はワーキングホリデーを利用してオーストラリアにいます。卒業式の日にご両親が挨拶にこられたのですが、息子さんの姿を見ながらずっと嬉しそうにされていたお二人の姿が印象に残っています。
彼のように、もともとその人に備わっていた一面が花開いて、別人のように変化していく姿を見ると嬉しく思います。
——昨年BH CAMPに参加してくださった学生の方が、今年プログラムとは関係なくボーダレスハウスに滞在しに来てくれました。彼女も「来年、イギリスに行く」と話していましたよ。
BH CAMPに参加して、次は海外へ。そういう流れが生まれていくのがいいですよね。親御さんを説得したり、自分の思いを行動に移す姿を見ると頼もしく感じます。
もちろん、参加してみてやっぱり熊本が好きだと分かったと話す学生もいます。それも良い。一度外に出たから分かったという経験が大事だと思います。
——BH CAMPの体験が、次の行動につながっていると聞いて、私たちも嬉しく思います。
海外の大学との交換留学のプログラムがなかったり、留学生の受け入れがない大学も少なくないと思うんですね。本学のように地方にある少人数の大学で、学生が海外と関わる機会をそれほど多く用意できない大学にとっては、すごく良いプログラムだと思います。
周りの目を気にしていたり、こうじゃなきゃいけないって考えにとらわれている学生が多いのは、熊本に限らず、地方都市の特徴かもしれないと思うことがあるんです。そういった学生たちにとって、自分を見つめ人生を変えていくきっかけとなる場所が開かれていると良いなと思っています。
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日本で体験できる短期海外留学×インターン 「BH CAMP」
海外留学に挑戦したいのに経済的な事情で海外に行くことが難しい、英語などの外国語を実践的に使う機会があまりないと悩む学生のために開発したプログラム「BH CAMP」。国際交流シェアハウスでの短期滞在しながら、英語を学び、英語で働き、異文化コミュニケーション力の習得に特化した国内のインターンシップ留学プログラムです。
「BH CAMPについて詳しく知りたい!」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
問い合わせ先はこちら:https://borderlesshouse-corp.com/contact/
「ちがう」を越えて、人と社会をつなぐ。ボーダレスハウス株式会社
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私たちボーダレスハウス株式会社は、国籍やルーツ、生まれた場所、性別などのさまざまな「ちがい」に関係なく、一人ひとりの多様なアイデンティティが尊重され、つながっていく体験とコミュニティをつくりたいと強く思っています。
「“ちがう” を越えて、人と社会をつなぐ」というビジョンの下、出会いやつながりが多文化共生社会への一歩になると信じて、差別や偏見の社会課題と向き合うソーシャルビジネスを社会に広げていきます。
STAFF
INTERVIE&EDIT:Mami Shimura
TEXT:Naomi Ogawa