王将にいたジジイ
大学の近くにある王将に初めて行った。
どうやら満席みたいで、大学生3人と爺さんが並んでる。
しばらく待ってから受付票がおいてあることに気づき、慌てて名前を書いた。
爺さんもまだ記入していなかったらしい。書いてから気がついた。
後ろを見ると、爺さんが「ごめんごめん」みたいなジェスチャーをして何か声を発していたけど、声が震えていて聞き取れなかったから「先いいですよ、消すので」と言って、さっき書いた名前を二重線で消し、受付票を手渡した。
再び記入する時に爺さんの文字が見えたけど、全然読めない。ミミズが這ったみたいだ。カタカナ4文字なこと以外何も分からない。
ほどなくして3人組が2階テーブル席に呼ばれ、爺さんの番になったけど、店員も読めなかったらしく、「1名様でお待ちの…」という感じで困った様子だ。爺さんは「ごめんな、手が震えて…」みたいなことを言って申し訳なさそうにしてた。
その後すぐ俺も呼ばれて、爺さんの隣のカウンター席に座った。
爺さんは悩む様子もなく、回鍋肉とチャーハンを両方ともレギュラーサイズ、それと餃子を1人前頼んだ(うろ覚え)。結構食うんだなぁと思った。
俺は餃子2人前の定食を頼んだけどこれが案外多くて、7割ぐらい食い終わった時に爺さんはもう小銭入れをまさぐってた。
手がめちゃくちゃ震えてて小銭がうまく取れてない。
もどかしくて「取りましょうか?」と言ったけど、もう会計に必要な分を揃え終わっていたらしく、聞き取れなかったけど多分「ありがとう、大丈夫」みたいなことを言ってた。
席を立つ時に小銭を落としてたから拾って手渡してあげた。爪が汚かった。もう自分で切れないのかもしれない。
爺さんは「あかんなぁ、あかんなぁ」って言いながら、丸まった背中をさらに丸めて縮こまってた。
去り際に結構喋ってたけどほぼ聞き取れなかった。でも「思い出が…」という部分だけ分かった。
店を出る爺さんの背中は寂しげだった。
爺さんの席を見ると、チャーハンを半分以上残してる。歳の割にはだいぶ食った方だと思うけど、昔は余裕で完食出来てたんだろうなと思うと、なんか死にたくなって、数日頭から離れなかった。