『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』の高尾山愛の重さを語ってみる
Re:ステージ! ドリームデイズ♪(リステ)は2019年7月に放送されたアニメです。アイドルへの夢に破れた少女たちが再起(リステージ)する物語で、高尾山が聖地になっています。現地に行ってみると、ただ舞台がそこであるだけではない、スタッフの並々ならぬ高尾愛を感じたので文章にしてみました。
未見の方は、1話と2話は公式がYoutubeで無料公開していますので、少しでも興味を持ったら是非見てください。↓から飛べます
2話はこちら
※2020/3/7 一時的に追記
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はじめに
リステの原作では高尾山はあくまでただの舞台であり、アプリのリステップでも最初はぞんざいに扱われていました。恐らく稀星学園のモデルと思われるのが、芸能コースで有名な堀越学園とその姉妹校で高尾にある進学校の頴明館というだけで、これが同じく芸能人が多い明大中野と明大中野八王子だったら、聖地は東京サマーランドだったと思います。
アプリのリステップで、高尾の扱いが変わりました。詳しくは以下を読んでください。
アニメでは高尾の扱いが原作から大幅に変わり、上のサムネにもある高尾駅前のグルメシティは恐らく前述の穎明館へのバスが高尾発だったからで、高尾山口のファミマ(PonyMarket)に変更されました。高尾にメイド喫茶があるといった秋葉原のように栄えている第二部室の設定も消え、今の現実的な八王子が反映されました。象徴的なものとして、この自販機は「地元の良い感じのスポット」ではなく、かなり昔につぶれた大資本ではない地元スーパーの跡の道端です。
この地区を走るバスが昼に運行して無いのもOPに反映されています。(八王子電気通信大のモデルの拓殖大学近くのバス停です)
行けば分かりますが、店もオフィスもなく、抜け道でもなく、昼はバスもなく地元の人以外行かない場所をロケハンしています。
アニメになってすっかり重くなったスタッフの高尾愛を、私なりに読み取っていこうと思います。前触れなく最終回のネタバレがあるので未見の方は気を付けてください。
リステにとっての高尾山
高尾山は戦国時代、近くで合戦があると民がにげこんだ場所だったといいます。八王子は八王子城、滝山城と激戦のあった城があり、高尾駅のすぐ近くにも古戦場があります
リステDDでも高尾は心に傷を負った少女たちが落ち延びる場となっています。1話の冒頭、逃げるように高尾校に転校した舞菜が高尾山口駅の改札から出てきます。
改札を出て即目にするのは、真っ暗な空と月を隠す姉の碧音です。この作品は自ら星の海を名乗るライバルユニットのステラマリスと、一人ひとりの輝きが集まり星座になる主人公ユニットのKiRaReや、主題歌で「同じ空を見つめてる」と歌っているように、空やそこに見える星は夢を意味する作品のキーとなっています。
実際はあそこにあるのは観光地図で、モニターではありません。高尾に土地勘無い登山、観光客が迷わぬよう駅出てすぐにあるわけですね。(写真が夜なのは先行上映に感動してその足で聖地巡礼したからです。)
高尾に来た舞菜の心を最速で折るためにこれをモニターに変更し、超クオリティのステラマリスのPVを流す場となったのです。初見の時はこのカロリー配分に、1話Aパートが最高潮で3〜4話で失速しないか気が気じゃありませんでした。
舞菜はアニメ1話あるあるの「私、式宮舞菜」と自己紹介する事も地図すら見る事を許されず、姉からも、その先にある夢(真っ暗な空)からも目を背け、早々に逃げだすわけです。
一人きりで周りに誰もいないバスの中で、空を見ない舞菜にはガラスに映る自分しか見えません。そこにある物が見えてきます。
高尾山です。
校門でも後ろで高尾山が見守っています。
舞菜が校門に入る=高尾山に踏み込むと同時に「夢」の象徴の空にパンして…
「ドリームデイズ」という、夢そのまんまのタイトルロゴが出てきます。高尾山はKiRaReの影のメンバーと言わんばかりに扱いが上がっています。
最終回でも1話と似たカットが流れます。ぶっちゃけ、舞菜は本校に余裕で戻れる実績があるわけですが、改札を出ると姉のかわりに紗由がおり、戻る理由はなくなっています。
実はこの立ち位置だけでもスタッフの高尾愛がわかります。高尾山を知らないスタッフが作っていたら、待っているのはモニターの前だったはずです。私は高尾山は何度も行っているので、スタンプハイクの台でもない限りモニター側に行く事はありません。これは高尾山リピーターの導線です。アニメの聖地巡礼すると「この登下校ルートは無い」とガッカリする事がよくありますが、これは高尾を知らない人が2回目に行った時に凄さがわかると思います。
二人は高尾山に背を向け空を見ます。それはもう叶うことのない破れた夢です。この後、叶わなかった夢に背を向け再び前を向いて進む先にあるのもまた高尾山です。空を見上げて一言つぶやくだけでも、テーマと高尾山を絡めています。
リステと高尾山信仰と天狗伝承
アイドルアニメでオカルトめいた話は無理があると思いますが、1話で柳田(国男)が出てくるのと、スタッフの高尾愛から偏った視点で見てみようと思います。
高尾山薬王院のご本尊、飯綱大権現はざっくり言うとお不動さまで、過去、現在、未来を見渡し悟りに導くスーパー仏の大日如来です。(私の仏教知識は2019年春アニメの「なむあみだ仏っ」程度なのでガチ勢はちゃんと考察してみてください。)
アイドルを諦めた舞菜を仏(高尾山)は受け入れ許し、部活紹介の場面でアイドルの道以外の未来(悟り)への道を示します。
高尾校は進学校ですし、この時点では体育会系、文化系とアイドル以外のあらゆる可能性も舞菜にはあるわけです。
さて、高尾山と言えば天狗が有名です。先述の大日如来の眷属でもあります。1話の冒頭から天狗が見ている場面が出ています。
これは薬王院に伝わる天狗の絵です。広く知られる高い鼻なのが大天狗で、お寺でいうと大僧正のような存在で、周りの修業の身のカラス天狗たちを悟りへ導きます。
10話でもKiRaReは大天狗に教えを受けているとされています。さしずめ高尾校の生徒はカラス天狗というわけですね。(誤解が解ける前のトロワアンジュには)
実は地元の古い方には薬王院の天狗=カラス天狗のイメージが強く、御朱印でもらえる御姿(御本尊の分身のお札)もカラス天狗だったのですが、道に迷うKiRaReが教えを乞う高尾の天狗は大天狗である必要があるわけです。
校内を案内される時に出てくるのはみいと香澄です。ここでも舞菜の進む道の指針として、アイドルをあきらめ別の道を進み修行中のカラス天狗である二人を遣わせたわけです。
あくまで天狗の遣いですので、未来の選択肢の中にはマリリン・モンローのように映画で世界的なスターになるも、悲劇的な結末を迎える物も混ざっています。選ぶかも舞菜次第です。
沢山の未来の道を示されながら決断しない舞菜は人気の無い所に迷い込みます。これは民俗学でよく言われる「天狗の神隠し」です。ここには、舞菜が逃げてきた「アイドルへの未練」を残した瑞葉は、見えないように隠されています。舞菜もすぐ引き返せば戻れるのですが、逃げた道に戻る事をさとすため、天狗によって部室の方においでおいでされています。
また、舞菜は他人への興味が病的に薄く描かれていますが、この時点では進む道と関係ない隣の席のドルヲタのかえや、同じクラスのアイドルの卵の紗由を忘れていたり認識できないのも天狗の神隠しという事です。
神隠しにあっていた瑞葉と紗由との出会いは、舞菜に夢にもういちど向き合うきっかけを与えます。
ですが舞菜はそこからも逃げ出します。天狗は誤った行いをすると火をつけて戒めると言われます。舞菜は心に火をつけられ、バスを降りると高尾山を振り返ります。そこには迷わず進める真っ直ぐな一本の道と、遥か遠くには太陽(大日如来)が示す天の光が見えます。たどり着くため越えねばならぬ山も、姉の碧音でなく高尾山に変わっています。
1話だけでこれです。世のアニメの聖地とちがい、高尾山のバックボーンまで含めて聖地とする理由が盛られたのがわかります。冗談のつもりでしたが、最近たまたま高尾山が出てたから見たNHKの番組でスタッフは割とガチではないかと思うようになりました。テキストがありますので一読するのも良いかと思います。
KiRaReにとっての高尾山
アニメでは、原作を大幅改変して高尾山が盛りに盛られています。4話では高尾山1号路(薬王院の参道)で、瑞葉とみいがどう見ても山伏の荒行なトレーニングを行い、和解を果たします。お百度参りをしてご利益があった感じです。ちなみに高尾山1号路は片道3.8kmでトレイルランをやる方か天狗の足でもなければ何度も往復できません。(低難度の山ですが、トレイルラン中に亡くなった方もいるので巡礼時に10往復など無理はしないでください)
高尾とは逸れますが、みいと引き合わせたのが秋葉原なのも、秋葉信仰(高尾と同じく天狗にまつわるが観音さまの化身)が関連していると思われ、この回も考察すると長くなります。
11話でも紗夢と舞菜が高尾山に登り、高尾校(夢を諦めてから今までの自分)を見おろす事で「勝率0%」を打ち破るきっかけを掴みます。原作だとこのへんで高尾じゃなさそうな所で合宿するのですが、こうして見返すと改変やむ無しだと思います。
そして、彼女たちを見守り、道を示してきた高尾山にお礼参りをするのがEDのこの場面です。すぐ右側が薬王院の本殿です。秋である事がわかりますので、戦国武将にならってプリズムステージの必勝祈願でもしているはずです。
最終回ではその先も描かれ、1話でバスを降りたときは「乗り越えるべき試練」だった高尾山の山頂に6人で到達します。ここで歌詞は「キミと新しいステージを見てる」、彼女たちが見ている新しいステージとは何か…
それは「KiRaReと輝く未来へさあ行くよ」という歌詞ととも現れる、日本最高峰の富士山です。山岳信仰でも高尾山と富士山は縁の深い存在です。
高尾山から見える富士山の頂きは、そのままプリズムステージ本戦会場のまばゆいライトに切り替わります。ここの流れ、歌詞のリンク具合が他の場面とレベルが違います。正直、高尾山や八王子をこんなに舞台装置として活かした作品見た事ありません。
プリズムステージ=富士山に上り詰めようとした寸前で物語は終わるわけですが、歌詞は「あの日夢見たstart line」。その先の風景も高尾山で授かるはずで、12月中旬に見られるダイヤモンド富士や初日の出の頃に彼女たちは高尾山に登る事でしょう。
アイドルの終わりと高尾山
アイドルにはいつか終わりが訪れます。リステは完結はしてませんし言及はされていませんが終わりの時を思わせるシーンは描かれています。ラブライブだと汗と涙が染み込んだ校舎にお礼を言う場面や、脱いだ衣装を映す場面で終わりを描いていました。KiRaReならば同様に象徴的な場所は部室や6人全員が初めて邂逅した高尾校のステージになりそうな物ですが、それはなぜか高尾山です。
ED冒頭のこのシーン、高尾山頂の展望台に満開の桜が咲いています。4話で瑞葉とみいが夕方の部室で抱き合う場面では「最後まで残っていた遅咲きの桜が散る」演出があったので、これは翌年3月の桜の季節だとわかります。ラブライブのように自分視点ではないところから、最初は自分本位だった彼女たちは自分たちを引き合わせて見守ってくれた高尾山に感謝できるだけの徳を詰んだわけですね。
片貝監督がこのEDは「大人になった彼女たちが振り返って」というイメージで発注したと語っていましたが、青春の終わりの地に高尾山を選び「Dream Days」と書く女子中学生…どれだけ高尾山推してるのよこのアニメ。
終わりに
高尾山の「天狗の仕業」と思わしき物は物語を通して何度か現れます。1話のCM明けに空(夢の象徴)を横切る飛行機が出てきます。ダンスなどと比べると手がかかるシーンには見えませんが、PV第二弾にはもうあったので早めに作る必要がある意味があったのだとおもいます。
その後も7話で姿を消した舞菜を紗由が見つけた所など、夢を諦める瀬戸際になると予兆のように現れます。「夢に向かって飛ぶ飛行機」にしてはタイミングが不自然です。洋画のコメンタリーだとこういうのが「守護天使」と言われたりしますが、今となってはこれは天狗だと思っています。
最終回でもKiRaReが再起をはかった直後に飛行機が出てきて、その後「アニメ2期があったらこうなっただろう」という映像が惜しげもなく流れます。
夢を諦める瀬戸際でもないのに出てくるのは何故か。アプリだとこのタイミングで新キャラが加入します。プレイヤーの先生(私たち)です。今、瀬戸際なのは私たちで、天狗の神隠しのターゲットにもされたという事です。神崎先生が気絶して以降の「2期の内容っぽい映像」は天狗が見せた幻です。また、アプリでのプレイヤーの存在は正直邪魔でいらないと思ってる方は少なく無い思いますが、これから進む未来では舞菜たちから見えない存在になれるという事です。
今後の展開で「舞菜たちを見守りつつも見えない存在」となれるよう、高尾とリステを愛していきましょう
おわり
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