見出し画像

【閲覧録20230516-20230615】

【閲覧録20230516-20230615】修論ゼミ発表1回目を終え、この26・27日は東京。さらにこのクール(フランス語「cours」が語源なのか?)が終わったら、真駒内で個展。それなり忙しい。かな。

20230516
高松宮宣仁親王『高松宮日記 第四巻』(中央公論社 1996)。1942年3月・4月上旬分。p144、3月1日(日)曇「満洲国建国十年祝宴(帝国ホテル)。」この頃はまだそんな余裕もあったのか。p180-181、3月15日(日)雨朝止ム、占守(しゅむしゅ、千島列島最北端の島)島から「ホーン」島(オーストラリア北東端の島)までが戦域になっていることがわかる。勝てないわけだよね。633p、阿川弘之の後記で疑問が一つ氷塊。宮の記述は「作戦関係機密電報の書写を主体として」いるとのこと。そういう物を自由に取り扱える立場にいたわけだ。にしても何が宮をしてここまで詳細な記述に至らせたものなのか。さらに阿川「脚注の中に、1,2,3の数字でなく*印を付したものが、本巻以降随時出て来る。読者の御日記読解の一助に、戦況推移の概略を説明する全般的な注釈である。作戦電報の書写がつづく昭和十九年六月まで、必要に応じ、適宜これを入れて行く予定になっている。」とのこと。その一例を。p214、4月10日(金)曇 驟雨 荒嵐「*第一航空艦隊飛行機隊は、四月五日コロンボを、同九日トリンコマリーを空襲。この作戦で、英重巡「コーンウォール」「ドーセットシャー」と軽空母「ハーミス」を撃沈した。その際、しかし、第一航空艦隊の作戦電報は英国側に解読されていた。二か月後のミッドウェー作戦にあたって参考とすべき点が、他にも多々あったにかかわらず、緒戦時の勝利に心驕っていた艦隊上層部はそれを見過ごした。」。「戦況推移の概略を説明する全般的な注釈」に留まらない、注釈者の心情吐露ではないかと思うが、その後のことを考えればご尤もとしか言えない。全く以て。

20230517
『網野善彦著作集 第四巻 荘園・公領の地域展開』(岩波書店 2009)。「美濃国」一ー4「鎌倉幕府成立と荘園・公領の分野」。自分の能力ではとても理解したとは言えず、目を通したレベルでの読書(泣)。p131「鎌倉幕府成立の及ぼした影響をはっきりと読み取っておかなくてはならない。」そうなんだよ。

20230518
『開高健全集 第9巻』(新潮社,1992)始。全集全22巻中の小説最終巻。1989年12月58歳没の開高の、最後のディケイド近辺に世に出た作品。1990年初出の『珠玉』を、司馬遼太郎が開高の葬儀の弔辞で激賞していたはず。今回は『ロマネ・コンティ・一九三五年』所収作品を中心に読み終え、次回『珠玉』を。

20230519
山本義隆『磁力と重力の発見 1 古代・中世』(みすず書房,2003)。中世キリスト教世界に生きる人々のサイエンスリテラシーを、21世紀の我々が鼻で笑えるかというとそうでもなくて、今、磁石の性質を正しく記述せよと言われて、自分にそれができるとも思えない。高校の教科書レベルの理科の知識、大事。

20230520
橋本治『デビッド100コラム』(河出文庫,1991 原本:冬樹社,1985)了。「71=『本居宣長』ー書評」、213p「「暇になったら、もう一遍純粋に学問やってみようかなァ」と思い直したほどに、この本はエキサイティングである。面白い。」、その後の快進撃の原点か。後に『小林秀雄の恵み』(新潮社,2007)。

20230521
『内村鑑三全集 3 1894‐1896』(岩波書店,1982)。「JAPAN AND THE JAPANESE」(1894)。「NINOMIYA SONTOK.-A Peasant-Saint」から「NAKAE TOJU-A VILLAGE TEACHER」。いわゆる「代表的日本人」、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮、この並び順に何か意味意図はあるのか?書いてたっけ?

20230522
前田愛『都市空間のなかの文学』(ちくま学芸文庫,1992 原本:筑摩書房,1982)。樋口一葉「たけくらべ」を主題にした「子どもたちの時間」(初出「展望」1975.6)が特に面白かった。「たけくらべ」昔読んだ気もするが、としても全く読めてないことがよくわかった。今ならジェンダー論の観点から読める?

20230523
『漱石全集 第十一巻』(岩波書店 1994)。「明暗」(1917)。早世した漱石(1867‐1916)でも、樋口一葉(1872-1896)の倍生きてて、一葉の生没年は漱石のその中に収まるんだ。一葉の死から十年近くたってやっと『猫』が出るわけか。漱石が一葉を読んだ形跡ってあるんだっけ?まあ本筋とは関係ないが。

20230524
『柳田國男全集 第五巻』(筑摩書房 1998)始。「日本昔話集」「蝸牛考」「明治大正史 世相篇」所収。エッセンシャルオブ柳田国男巻かも。「蝸牛考」は未読、「明治大正史 世相篇」は再読になろうが、内容を忘れているし、日本近現代史学徒としては初読になるので、楽しみ。何にどう反応できるのか。

20230525
『鉄の時代 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 Ⅰ-11』クッツェー,くぼたのぞみ訳(河出書房新社 2008)了。この全集、全巻これ充実のコンピ。この巻も素晴らしく面白かった。正統的な歴史家の歴史記述から漏れ落ちる歴史もあって、長い目で見ればその漏れを補完の上で再構築するのが文学作品なのかも。

東京行20230526-0527:26日(金)。旅行事情、コロナ禍以前の状況に戻るどころか揺り戻しで、価格高騰気味。新千歳空港朝八時発のエアチケットしか取れず難儀した。午後、神保町・東京古書会館で明治古典会に参加、入札&落札。終了後、ホテルにチェックインしたら窓からの風景が。東京も改造中だ。

東京行20230526-0527:27日(土)。東京都千代田区国立劇場 「初代国立劇場 さよなら公演」文楽「通し狂言 菅原伝授手習鑑」第一部観覧、午後は上野公園・東京都美術館「マティス展」。堪能。1F展示は写真撮影可。20:15羽田空港発の飛行機。23:00、札幌・書庫帰着。年々、体がきつくなる。当たり前か。

20230528
『寺田寅彦全集 第九巻 随筆九 ローマ字の巻』(岩波書店,1997)。1916-1918(大正5-6)年分まで。「初めて正岡さんに会った時」1918、会ったのは1899(明治32)年9月で、子規(1867-1902)31歳、寅彦(1878-1935)20歳か。寅彦39歳時、WWI終結直前、の追想。p95「熊本の話から夏目先生の噂が出た。」

20230529
永井荷風『荷風全集 第七巻 冷笑 紅茶の後』(岩波書店 1992)。「冷笑」。進まない(泣&笑)。

20230530
佐藤信・吉田伸之編『新 体系日本史 6 都市社会史』(山川出版社,2001)。「Ⅱ 日本都市社会の諸相>4章 津・市・宿>2 港町」執筆者:宇佐見隆之。港立地の三条件は「船の出入りの容易さ・風波を避ける・深さ」、影響が大きい自然条件は、潮流・風向・地形。そんな観点と共にに津々浦々を眺めよう。

20230531
『志賀直哉全集 第四巻 暗夜行路』(岩波書店 1999)始。図書館の第三巻本どなたか長期借出のため、飛ばしてこの巻に。十代の後半、一度だけ読んだが内容ほとんど忘れてる。阿川弘之の解説によれば「著者唯一の長編小説で、連載開始から完成までに前後十六年」という志賀のライフワーク。どんなだろ。

(6月16日初日の個展にむけての準備がさすがに忙しくなり、6月1日から12日まで、読書せず)

20230612
『谷崎潤一郎全集 第9巻』(中央公論新社,2017)。関東大震災前の1921~1923年に発表された戯曲集『お国と五平 他二篇』『愛なき人々』了。やはり明日なき暴走的なエログロナンセンス感が漂う。震災後の関西での大変貌が無ければ、本当に本当の才能の浪費で終わっていたのだろうなあ(武林無想庵?)。

20230613
ハンナ・アレント/牧野雅彦訳『人間の条件』(講談社学術文庫,2023)始。新訳本で通読再挑戦してみる。p24「活動的生活〔vita activa〕」の三つの基本的活動「労働〔labor〕・仕事〔work〕・行為〔action〕」、いいなあ。仕事[work]ってミーム(meme)を生み出す活動?って思ったんだがどうだろ。

20230614
『生活学 今和次郎集 第5巻』(ドメス出版 1971)了。「生活病理学」1952。「儀礼病」、p427「近代労働者としてのさっぱりとした心にも、また商人の仁義にも徹底できがたいままに、中世的な心を温存しているのが、今日の農民なのであると批判したくなる。」、興味深い指摘。約70年後の今、どうだろ。

20230615
『柳宗悦全集 第八巻 工藝の道』(筑摩書房 1980)了。本文も凄いがそれに伍して水尾比呂志(1930-2022)の「解説 民藝運動の創始」がまた素晴らしい。1926(大正15‐昭和元)年前後、30代後半の柳(と仲間たち)のジャイアントステップスが余すところなく活写されている。もう直ワード「民藝」も百年。

いいなと思ったら応援しよう!