SCOM Ultra 49/67(Rim brake)使用レビュー
SCOMWHEELS JAPAN様より、「SCOM Ultra 49/67(Rim brake)」のテストレビューをご依頼いただいた。
【SCOMWHEELS JAPAN】
https://x.com/scomwheelsjapan?s=20
【SCOM 公式HP】
SCOM Ultra – SCOM (scomsports.com)
SCOMとは?
scom(SHARP COMPETITION)とは、2022年に誕生したカーボンホイールを専門とするホイールブランド、だそうである(Xより)。
商品ラインナップ
ラインナップは、
・カーボンスポークを使用した「Ultra」シリーズ
・ステンレススポークを使用した「Aerolite」シリーズ
に分かれる。
2024年1月現在、ホームページでは「Ultra」シリーズのみ詳細に紹介があり、「Aerolite」シリーズには個別の商品ページがまだない。
ただ、概要に「A race wheelset designed to be more budget friendly. Steel spokes laced to the same rims as their ULTRA bigger brothers.」とあることからして、リムは「Ultra」と同じ物が使われており、スポークのみステンレスとしたコスパ追求型だと思われる。
「Ultra」シリーズは、3つのリムハイトの選択肢が用意されている。即ち、
①フロント45mm/リア45mm
②フロント49mm/リア67mm
③フロント67mm/リア67mm
の3つから選ぶことができる。
また、「Ultra」シリーズは、ディスクブレーキ用とリムブレーキ用の両方のモデルが存在する。
リムブレーキ用の最新モデルはほとんど存在しない中、このラインナップはありがたい。
私が依頼を受けたのは、
Ultraシリーズの、②フロント49mm/リア67mmのリムブレーキ用
だ。
スペック
このあたりは、ホームページを参照されたい。
リムブレーキ用に共通するスペックは、下記のとおりである。
ハブは、高剛性のアルミ製、ということくらいしか英語力弱小の私にはわからない(笑)
KEIMASAさんの動画で説明があったが、セラミックベアリングではないらしい。
また、今回自分がレビューするモデル(F49/R67のリムブレーキ用のUltra)のスペックは、下記のとおりである。
注目すべき点としては、
・チューブレス対応のリムであること
・リムブレーキ用であっても、外幅28mmと限界近くワイドリムな設計になっていること
・カーボンスポークを使用することにより、チューブレス対応リム、かつ49mm/67mmという高リムハイトであっても、1440gという軽量ホイールに仕上がっていること
であろう。
ホイール写真
取り付け前
バイク取り付け後写真
(参考)F50mm/R50mmとの比較写真
使用レビュー
使用者スペック
FTP300wちょい、体重70kgの重量級ライダーである。(富士ヒル:63分)
トライアスロン競技がメインだが、3種目の中では自転車競技に一番力を入れている。
以下、シチュエーション別に感想を述べる。
全体感
全体的な感想としては、
「シチュエーション次第で最良のホイールであるが、シチュエーションを選ぶ。」
という感想であった。
もう少し具体的に言うと、
<40km/h以上での巡航の楽さ>と<高速度域でのスプリント>は、まさにこのホイールの特性が活きる場面と感じた。
その点で、リムハイト50mm以上の高リムハイトのホイールが欲しいユーザーにとっては、最も良い選択肢となり得るものである。
一方で、漕ぎ出しにおける加速場面、また低速での登りでは、中リムハイトと比べるとやはり<もったり感>を感じることがある。
フロントが49mmであったとしても、高リムハイトゆえのデメリットが打ち消されているわけではなく、中リムハイトのホイール用途をカバーしきれているわけではない。
というような印象であった。
平坦
①漕ぎ出し(加速場面)
漕ぎ出し(0-25km/h)の場面は、高リムハイトでは仕方がないことであるが、やや「もったり感」が否めない。
ただ、これは剛性不足が原因ではなく、単にリム自体の重量が影響しているように思われた。
というのも、加速の場面では、ホイール全体の重量というよりは、リアホイールのリム重量が与える影響が大きいと考えている。
私の手持ちのホイールの選択肢は、
フロント:30mm、50mm
リア:35mm、50mm
というものであるが、基本的にはフロント50mm/リア35mmという組み合わせを多用し、加減速が少ない平坦ライドではリアを50mmに、登りで差が付くライドではフロントを30mmにしている。
リアも50mmにしてしまうと、どうしても加速時の「もったり感」を感じてしまうのだ。
逆に言うと、
「フロント50mm/リア35mm」
との比較では、ややもったり感は否めないものの、
「フロント50mm/リア50mm」
との比較では、特段このホイールのもったり感は感じなかった。
②巡航場面
平坦で巡航しているときには、まさにこのホイールの良さが活きる場面である。
とはいっても、30km/h前後程度では、前後50mmと比べて、高リムハイトならではの良さは感じられない。
他方、40km/hを超えてくると、リアホイールに67mmが入っていることによるパワーセーブが明らかに感じられる。
詳細にはパワーテストを行っていないものの、感覚的には、220-230wでも楽に40km/h以上で巡航できるような感覚であった。
登り
もとより、高リムハイトのホイールに登りの性能を期待して購入する人は少ないと思うが、ユーザーが気になるのは、「高リムハイトでもどれだけ中リムハイトと同じ速さで走れるか」ということであろう。
その観点では、私的な感想は「思ったよりは登れる」という印象であった。
登りにおいては、全体重量とリム単体での重量がより登坂タイムに影響するものと考えられる。
全体重量は単純に登坂における重量の影響、リム単体での重量は、登りでは平坦と比べて加減速が繰り返されるため、加速時にリム重量が影響するものと推察している。
Ultra49/67は、フロントが49mmということもあり、1440gと高リムハイトにしては驚異的な軽量ホイールに仕上がっているおかげで、高リムハイトにしても全体重量の増加は抑えられる。
参考までに、私の常用の「フロント50mm/リア35mm」の組み合わせは、1300gちょっと(と思われる)だが、これと比べると100gちょいの重量増に収まっている。
そのため、見た目から想像される登りの重さとは裏腹に、思ったよりもサクサク登れる印象であった。
特に、3%程度までの勾配であれば、エアロ効果と相まって不利になることはないように感じた。
他方で、全体重量としては軽いものの、リアのリムはおそらくそれなりの重量であるがゆえに、低速になればなるほど、もったり感が強くなる印象であった。
中リムハイトと比較した際に当ホイールのメリットが上回る分水嶺は、勾配5%あたりであろうか。
それを超えると、中リムハイト(そして言わずもがな低リムハイト)に分がある印象である。
下り
下り性能は、リムのエアロとハブの性能に影響するものと思われるが、
率直に、めちゃくちゃ速い、という感想に尽きる。
KEIMASAさんの動画
こちらでも、ハブの性能について言及されているが、
セラミックでなくともよく回り、スピードが頭打ちになることはないと断言できるレベルでスピードの伸びを感じた。
もう一点、ブレーキ性能でいうと、
可もなく不可もない、というところであった。
特にブレーキ面に加工はされていないように見えるため、まあ予想どおりかなという印象。
個人的には、ここはBORAやOROMEのように、ブレーキ面に波の加工があると良いかなと思った。
スプリント
主に試したのは、緩い登りでの比較的高速域でのスプリントである。
結論としては、このホイールならではの強みは、スプリント場面にあると感じた。
スプリントは、
①エアロ性能
②掛かりの良さ(横剛性)
この2つの要素が、スプリントの伸びに影響を与えるものと思われる。
①のエアロ性能は、平坦巡航で述べたとおりであるが、
②掛かりの良さは、高リムハイトのホイールの中でもピカイチに思われた。
これは、リム自体の剛性の高さと、カーボンスポークを使用していることによるものであろう。
シモジマンさんの動画でも言及があるのだが、リムブレーキのホイールは、どうしてもディスクフレームと比べると、横への力が逃げてしまうような傾向にある。
特に、高リムハイトでは、その傾向が顕著に思われる。
私は以前、「フロント55mm/リア55mm」のホイールを所有していたことがあるが(リムはcarbonbeam)
リムの剛性の低さか、リムの剛性を支えるスポーク(cx-rayだったように記憶している)の剛性が足りないためか、
Ultraより重量は重かったのに、スプリントをすると「ホイールが撓む」感覚が強かった。
そのため、高リムハイトのリムブレーキホイールには、なんとなく剛性不足の印象が強かったのだが、このホイールに関しては剛性不足は全く感じず、パワーを100%受け止めているように感じた。
これは、リムブレーキ用のホイールにおける、このホイールならではの強みと言えるだろう。
データとしても、関東のサイクリストであれば誰もが知っている「尾根幹」復路の最後のセグメント「杜の一番街北」において、
富士ヒル直前で一番仕上がっていた頃のPRと同タイムで走ることができた。
掛かりの良さと剛性の高さゆえに、スプリントの最後まで踏み切れることができ、スプリントでのゴール場面においては、他の選手と比べても「強み」を有していると言えるであろう。
その他
・ラチェット音
ラチェット音は、特段大きくもなく小さくもない。
・横風に関して
爆風のシチュエーションでは使用できていないのだが、少なくとも暴風出ない限りは横風で持っていかれる感じはしなかった。
これは、フロントが49mmに抑えられている恩恵であろう。
・取り付けに関して
リムフック部分は、めちゃくちゃしっかりしている。Continental GP5000(クリンチャー)で使用したが、タイヤを取り外そうとしたら全然ビードが外れなくて困った笑
おそらく、チューブレスで使用する場合には、ビードはかなり上がりやすく、空気の漏れも少ないであろう。
このホイールが活きる場面は?
以上を簡単にまとめると、
【強み】
①35km/h以上での巡航場面でのパワーセーブ
②比較的高速域でのスプリント
【弱み】
①0-25km/hまでの加速場面
②6%を超える登坂場面
であろう。
加減速が繰り返されるクリテリウムでは、中リムハイトに軍配が上がるかもしれない。
他方、比較的ヘアピンが少なく、高速域でのレース展開が長く、スプリント決着になりがちなエンデューロは、このホイールの良さが最も活きる場面ではないかと思われる。
ラインナップには、フロントも67mmのラインナップが存在するが、フロントもそこまでリムハイトが高いと、よりユーザー及びシチュエーションを選ぶかもしれない。
そのうち、SCOM Ultra 45/45(Rim brake)も試させていただけるようなので、
「Ultra」シリーズ内でのシーンの使い分け等も追記できたらと思う。
おわり